4-3 プロジェクトマネジメント
プロジェクトマネジメント
プロジェクトは、決められた目的を達成するために、期限と予算を定めて行う一時的な活動です。毎月同じ請求処理を繰り返す定常業務とは異なり、新システムの導入や店舗移転のように、開始と終了があり、成果物が明確な仕事が該当します。
この節の目標は、題意から「何を管理すべきか」を見抜き、WBS、ガントチャート、アローダイアグラム、リスク対応策を使い分けられるようになることです。
1. 最初に押さえる制約
プロジェクトでは、スコープ(作業範囲)、品質、費用、納期、要員などが互いに影響します。納期だけを短縮すると、追加要員による費用増加や、確認不足による品質低下が起こる可能性があります。
| 観点 | 確認する内容 | 変更時の代表的な影響 |
|---|---|---|
| スコープ | 何を作り、何を作らないか | 機能追加で工数と費用が増える |
| 品質 | 満たすべき性能や正確性 | テスト削減で不具合リスクが上がる |
| 費用 | 使える予算 | 要員追加や外注で増える |
| 納期 | 完了期限と中間期限 | 遅延すると後続作業に影響する |
| 資源 | 人員、設備、技術 | 特定担当者への集中がリスクになる |
試験では「何かを変更しても他の条件は変わらない」とは限りません。変更による連鎖を考えることが重要です。
2. 計画を作る判断手順
- 目的と成果物を明確にする:何をもって完了とするかを決めます。
- ステークホルダを整理する:利用者、経営者、開発者、運用担当、委託先など、影響を受ける人を洗い出します。
- WBSで作業を分解する:成果物を作るための作業を、担当と見積りができる粒度まで分けます。
- 依存関係を確認する:先に終わらなければ開始できない作業を特定します。
- 日程と担当を決める:ガントチャートなどで期間、担当、進捗を見える化します。
- リスクを登録する:発生確率と影響度を評価し、対応方針と責任者を決めます。
- 実績との差を監視する:進捗、費用、品質を定期的に確認し、必要なら計画を更新します。
3. WBS・ガントチャート・アローダイアグラム
| 手法 | 主な目的 | 読み取るポイント |
|---|---|---|
| WBS | 必要な作業を漏れなく分解する | 「何を行うか」と作業の粒度 |
| ガントチャート | 作業期間と進捗を時間軸で示す | 開始日、終了日、重なり、遅れ |
| アローダイアグラム | 作業の順序と依存関係を示す | どの経路が全体日程を決めるか |
| クリティカルパス | 遅延余裕がなく、全体納期を左右する経路 | その経路上の遅れは原則として完了日を遅らせる |
完全ケース:申請システムの公開計画
作業A「要件確認」は2日です。Aの完了後、作業B「画面作成」3日と作業C「データ連携」4日を並行して開始できます。BとCの両方が終わった後、作業D「総合テスト」2日を行います。
- A→B→D:2+3+2=7日
- A→C→D:2+4+2=8日
長い方の A→C→Dがクリティカルパス です。Cが1日遅れれば、他の対策をしない限り公開日も1日遅れます。一方、Bには1日の余裕があるため、Bの1日以内の遅れだけでは全体日程に影響しません。
このような問題は、各経路の日数を合計し、最も長い経路を選ぶと判断できます。
4. リスク対応を選ぶ
| 対応 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 回避 | リスクの原因となる計画をやめる | 未検証技術の採用を中止する |
| 軽減 | 発生確率または影響を小さくする | 早期に試作し、技術上の問題を確認する |
| 転嫁 | 損失負担などを第三者へ移す | 保険契約や専門会社への委託を行う |
| 受容 | 対策費との比較で、発生時対応を選ぶ | 予備費を確保して監視する |
「リスクを記録した」だけでは管理したことになりません。対応策、責任者、期限、監視方法まで決めます。
5. よくある誤りと理由
- WBSを日程表と考える:WBSの中心は作業分解です。期間の表示はガントチャートの役割です。
- 最短経路をクリティカルパスとする:全体完了を決めるのは最も長い経路です。
- 問題が起きてからリスク登録する:リスクは将来起こり得る不確実な事象であり、事前に管理します。
- すべての要望を無条件に追加する:スコープ変更は費用、納期、品質への影響を評価してから承認します。
6. セルフチェック
問題文を読んだら、次の順に確認してください。
- 一時的な活動か、繰り返す定常業務か。
- 問われているのは作業分解、期間表示、依存関係、リスク対応のどれか。
- 日程問題では全経路を比較したか。
- 変更がスコープ、品質、費用、納期、要員に与える影響を考えたか。
理解を確認したら、第4章の練習問題で条件を変えた問題に取り組み、第4章の知識カードで用語の役割を復習してください。開発工程との違いは、システム開発技術で確認できます。
公式範囲との対応
本節は、IPA「ITパスポート試験シラバス Ver.6.5」のプロジェクトマネジメント分野(プロジェクトの特徴、管理プロセス、WBS、ガントチャート、アローダイアグラム、リスク対応など)を学習対象としています。