4-4 サービスマネジメント

最終更新 2026-07-22内容の作り方 →

サービスマネジメント

サービスマネジメントは、完成した情報システムを安定して提供し、利用者が継続的に価値を得られるように運用と改善を管理する考え方です。プロジェクトが「期限までに成果物を完成させる活動」であるのに対し、サービスマネジメントは稼働開始後の品質を継続して守る活動です。

この節の目標は、SLA、サービスデスク、インシデント管理、問題管理、変更管理の役割を、具体的な障害対応の流れから判断できるようになることです。

1. サービス品質を合意する

用語 役割
SLA 提供者と顧客が合意するサービス水準 月間稼働率99.9%以上
SLI 実際の状態を測る指標 稼働率、応答時間、復旧時間
SLO 指標に対して設定する目標値 平均応答時間2秒以内
サービスデスク 利用者からの問い合わせを受ける単一窓口 障害受付、質問、利用申請

SLAは提供者が一方的に掲げる宣伝文句ではありません。対象サービス、測定方法、目標値、報告方法、未達時の対応などを顧客と合意した文書です。

2. 障害発生時の判断手順

  1. サービスデスクが受付・記録する:発生時刻、利用者、症状、影響範囲を記録します。
  2. 分類し、優先度を決める:影響の大きさと緊急度を基に対応順を決めます。
  3. インシデント管理で早期復旧する:暫定対応を含め、利用可能な状態へ戻します。
  4. 問題管理で根本原因を調べる:再発する障害の原因を分析し、恒久対策を検討します。
  5. 変更管理で対策の影響を評価する:本番設定やプログラムの変更を承認し、失敗時の戻し方も決めます。
  6. リリース管理で本番へ反映する:承認済みの変更を計画的に展開します。
  7. 構成管理を更新する:機器、ソフトウェア、設定、関係情報を最新に保ちます。

試験では、目的の違いを読み取ります。「まず使える状態に戻す」はインシデント管理、「再発原因を除去する」は問題管理です。

3. 完全ケース:勤怠システムが利用できない

月曜9時、全社員が勤怠システムにログインできなくなりました。サービスデスクは問い合わせを一つの障害として記録し、全社業務へ影響するため優先度を最高に設定しました。

運用担当は、直前に変更された認証設定を一時的に元へ戻し、9時30分にサービスを復旧しました。ここまでが主に インシデント管理 です。その後、設定変更のレビュー漏れが原因だったと判明し、変更時の二重確認と自動テストを追加しました。これは 問題管理と変更管理 による再発防止です。

次のような誤った判断に注意します。

  • 復旧前に原因調査だけを続ける:影響が大きい場合は、まずサービスを戻す判断が必要です。
  • 修正を承認なしで本番へ適用する:別の障害を発生させる可能性があります。
  • 問い合わせ記録を残さない:同じ障害の傾向や対応実績を分析できません。

4. 稼働率を計算する

月間の総時間が43,200分、停止時間が120分だった場合、稼働時間は43,080分です。

稼働率=稼働時間÷総時間×100

43,080÷43,200×100=約99.72%です。SLAが99.9%以上なら未達です。停止回数ではなく、問題文で指定された測定期間と停止時間を使って計算します。

5. 可用性・容量・継続性・設備

管理観点 目的 対策例
可用性管理 必要なときに利用できる状態を保つ 冗長化、監視、障害切替え
容量・性能管理 利用増加でも性能を維持する CPU・メモリ・通信量の監視
ITサービス継続管理 災害や重大障害から復旧する バックアップ、復旧手順、訓練
ファシリティマネジメント 設備面から安定稼働を支える UPS、空調、入退室管理、消火設備

バックアップを取得するだけでは不十分です。復元できるかを定期的に試験し、目標復旧時間に間に合うか確認します。

6. よくある誤りと理由

  • インシデント管理と問題管理を同じと考える:前者は早期復旧、後者は根本原因と再発防止が中心です。
  • SLAを社内目標だけで決める:SLAは提供者と顧客の合意です。
  • サービスデスクを技術担当者だけの窓口と考える:利用者に対する単一窓口として受付、分類、記録、進捗連絡を行います。
  • 変更を早く実施すればよいと考える:影響評価、承認、テスト、切戻し計画が必要です。

7. セルフチェック

  • 問題は「復旧」「原因除去」「変更承認」「本番反映」のどれを求めているか。
  • SLAと実測値を混同していないか。
  • 稼働率では総時間から停止時間を引いたか。
  • 設備、バックアップ、復旧訓練まで含めて継続性を考えたか。

理解を確認したら、第4章の練習問題第4章の知識カードで役割の違いを復習してください。期限のある一時的な活動との違いは、プロジェクトマネジメントで確認できます。

公式範囲との対応

本節は、IPA「ITパスポート試験シラバス Ver.6.5」のサービスマネジメント、サービスマネジメントシステム、ファシリティマネジメント分野に対応し、ITIL、SLA・SLI・SLO、サービスデスク、インシデント管理などを扱います。

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