6-2 コンプライアンスと標準化

最終更新 2026-07-22内容の作り方 →

コンプライアンスと標準化

コンプライアンスは、法令だけでなく、契約、社内規程、社会規範、倫理を守り、説明責任を果たすことです。標準化は、製品、サービス、データ、手順などの取決めを共通化し、互換性、品質、安全性、効率を高める活動です。

この節の目標は、組織が違反や不正を予防・発見・是正する仕組みを説明し、JIS、ISO、IEC、デファクトスタンダードなどの標準を目的に応じて区別できるようになることです。

1. コンプライアンスを組織活動として捉える

概念 主な目的 具体例
コンプライアンス 法令、契約、規程、倫理を守る 個人情報、労務、取引、知的財産のルールを守る
コーポレートガバナンス 経営を監督し、健全な意思決定を確保する 取締役会、監査、権限・責任の明確化
内部統制 業務を適正かつ効率的に実施する仕組み 職務分掌、承認、アクセス制御、照合
CSR 企業が社会や環境へ果たす責任 人権、安全、環境、地域社会への配慮
情報倫理 情報を扱う際の望ましい行動規範 誤情報を拡散しない、権利やプライバシーを尊重する

「法律に違反しなければ何をしてもよい」という考え方では、社会的信用や取引先との信頼を失う可能性があります。社内規程や倫理基準が法令より厳しい場合もあります。

2. 内部統制は目的と対策を対応させる

リスク 統制活動の例 期待する効果
一人で発注・検収・支払を行う 職務分掌、相互確認 架空発注や不正支払を防ぐ
権限のない社員が顧客情報を見る 最小権限、定期的な権限棚卸し 不正閲覧や漏えいを防ぐ
金額を誤入力する 入力チェック、承認、元資料との照合 誤処理を早期に発見する
操作の経緯を追えない ログ取得、時刻同期、保存、監視 事後調査と抑止に役立てる
退職者のアカウントが残る 退職手続とアカウント停止を連携する 不要なアクセスを防ぐ

統制は強ければ強いほどよいわけではありません。リスクの大きさと業務効率を比較し、重要な業務へ重点的に配置します。

3. 完全ケース:架空発注を防ぐ

購買担当者Aは、取引先の登録、発注、納品確認、支払申請を一人で行えます。この状態では、実体のない取引先を登録し、架空発注を行うリスクがあります。

改善策は次のとおりです。

  1. 取引先登録を別担当者の承認制にする。
  2. 発注者と検収者を分ける。
  3. 請求書、発注書、検収記録を照合する。
  4. 一定金額以上は管理職の承認を必要とする。
  5. 取引先口座の変更履歴と操作ログを監視する。
  6. 内部監査で例外取引や分割発注を抽出する。

「全社員へ注意メールを送る」だけでは、権限集中という原因を解消できません。教育とシステム・手続上の統制を組み合わせます。

4. 違反を発見したときの対応

  1. 人命・情報・資産への被害拡大を防止する。
  2. 証拠となる記録やログを適切に保全する。
  3. 責任者、法務、情報セキュリティ、内部通報窓口などへ報告する。
  4. 事実、影響範囲、関係法令・契約を調査する。
  5. 必要な報告、通知、是正、懲戒などを適切な手続で行う。
  6. 原因を分析し、権限、手続、教育、監視を改善する。

通報者への不利益取扱いを防ぎ、相談・通報経路を明確にすることも重要です。うわさだけで個人を断定したり、証拠を削除したりしてはいけません。

5. 標準化が必要な理由

標準化は、多様化・複雑化した製品やサービスを一定の取決めによって整理し、次の価値を生み出します。

  • 製品やシステム間の互換性を確保する。
  • 品質と安全性の基準を共有する。
  • 生産、調達、保守を効率化する。
  • 用語、記号、データ形式を統一し、誤解を減らす。
  • 国際取引や技術普及を進める。
  • 利用者が製品・サービスを比較しやすくする。

例えばUSBのように接続規格が共通化されていれば、異なるメーカーの機器を接続しやすくなります。社内でも、商品コード、日付形式、承認手順を標準化すると、データ連携や教育が容易になります。

6. 規格と標準化団体を区別する

名称 位置付け・分野 代表的な対象
JIS 産業標準化法に基づく日本の国家規格 製品、サービス、試験方法、管理など
ISO 電気・電子技術分野を除く幅広い分野の国際標準化機関 品質、環境、情報管理など
IEC 電気・電子技術分野の国際標準化機関 電気機器、電子技術、安全など
ITU 電気通信分野の国際連合の専門機関 通信方式、周波数、通信網など
IEEE 電気・電子・情報分野の専門家組織 LAN、無線LANなどの技術標準
W3C Web技術の標準化を進める団体 HTML、CSSなどのWeb技術

JISは原則として任意の国家規格ですが、法令や契約で引用された場合、その範囲で遵守が必要になることがあります。「JISだから全て強制」「ISO認証がなければ事業できない」と一律に判断しないことが重要です。

7. デジュール・デファクト・フォーラム標準

種類 成立の仕方 例の考え方
デジュールスタンダード 公的・国際的な標準化機関の手続で制定される JIS、ISO、IECなどの規格
デファクトスタンダード 市場競争の結果、事実上広く利用される 特定製品の形式が市場で優勢になる
フォーラムスタンダード 複数企業・団体が協議して定める 業界コンソーシアムの共通仕様

「広く使われている」というだけならデファクト、「正式な標準化手続で制定された」ならデジュールという違いを確認します。

8. マネジメントシステム規格を理解する

規格の例 対象 目的の例
ISO 9001 品質マネジメント 顧客要求を満たす品質管理の仕組み
ISO 14001 環境マネジメント 環境影響を管理・改善する仕組み
ISO/IEC 27001 情報セキュリティマネジメント 情報セキュリティリスクを管理する仕組み
ISO 22301 事業継続マネジメント 重大な中断へ備え、事業を継続・復旧する仕組み

認証は「事故が絶対に起きない」「全製品の品質が最高」と保証するものではありません。組織が規格に沿ったマネジメントシステムを構築・運用しているかを評価します。

9. 標準を採用する判断手順

  1. 標準化する対象と目的を明確にする。
  2. 法令、契約、業界要件で必須か確認する。
  3. JIS、国際規格、業界標準、社内標準を調査する。
  4. 互換性、品質、安全、費用、将来性を比較する。
  5. 適用範囲、例外、移行方法、責任者を決める。
  6. 教育、監査、改訂管理を行う。

標準を導入するだけでなく、規格改訂や業務変化に応じて社内手順も見直します。

10. よくある誤りと理由

  • コンプライアンスは法令遵守だけと考える:契約、規程、倫理、社会規範も含みます。
  • 教育だけで不正を防げると考える:職務分掌、承認、権限、ログなどの統制も必要です。
  • 内部統制と内部監査を同じと考える:統制は業務の仕組み、監査はその有効性を独立して評価します。
  • JISは全て強制規格と考える:原則は任意ですが、法令や契約で引用される場合があります。
  • ISOとIECの分野を逆にする:IECは電気・電子技術、ISOはそれ以外を含む幅広い分野を担当します。
  • 広く使われる規格は全てデジュールと考える:市場で事実上普及したものはデファクトです。
  • 認証取得を最終目的にする:実際のリスク低減と継続的改善が目的です。

11. セルフチェック

  • 法令、契約、社内規程、倫理のどれに関する問題か。
  • リスクの原因と内部統制が対応しているか。
  • 予防、発見、是正のどの段階の対策か。
  • JIS、ISO、IEC、ITU、IEEE、W3Cの役割を区別したか。
  • デジュール、デファクト、フォーラム標準の成立過程を説明できるか。

理解を確認したら、第6章の練習問題第6章の知識カードで組織的な対策と標準を判定してください。個別の法律と契約は、法務で確認できます。

公式範囲・標準化資料との対応

本節は、IPA「ITパスポート試験シラバス Ver.6.5」のその他の法律・ガイドライン・技術者倫理、標準化関連に対応し、コンプライアンス、コーポレートガバナンス、内部統制、CSR、JIS、ISO、IEC、デジュール・デファクト標準などを扱います。

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