10-2 費用・収益の見越しと整理後残高
見越しは当期分を費用・収益へ追加する処理
見越しは、当期分の費用または収益がすでに発生しているのに、現金の支払・受取がまだ行われておらず、帳簿へ記録されていない場合に行います。
- 費用を追加する:費用の見越し、未払費用
- 収益を追加する:収益の見越し、未収収益
繰延べは記録済み金額から次期分を除き、見越しは未記帳の当期分を追加します。
見越しを判断する4つの質問
- 当期中にサービスを受けた、または提供したか
- 代金や利息の支払・受取はまだか
- 当期分は何か月か
- 将来の支払義務か、受取権利か
| 内容 | P/Lへ追加 | B/Sへ追加 |
|---|---|---|
| 当期分の費用が未払い | 費用 | 未払費用・負債 |
| 当期分の収益が未収 | 収益 | 未収収益・資産 |
費用の見越し:未払利息
連続ケースの条件
青葉サポート株式会社はX7年12月1日に1,200,000円を借り入れました。
- 年利率:3%
- 利息支払日:X8年5月31日
- 支払方法:後払い
- 決算日:X8年3月31日
- 決算まで利息は未記帳
当期の使用期間
借入日から決算日までの当期分は、X7年12月からX8年3月までの4か月です。
年間利息を求める
1,200,000円 × 3% = 36,000円
当期4か月分を求める
36,000円 × 4÷12 = 12,000円
現金はまだ支払っていませんが、当期中に資金を利用した4か月分の利息は当期の費用です。
決算整理仕訳
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 支払利息 | 12,000 | 未払利息 | 12,000 |
- 支払利息:当期費用を追加するため借方
- 未払利息:後で支払う義務であるため貸方
整理後残高
- P/Lの支払利息:12,000円増加
- B/Sの未払利息:12,000円
収益の見越し:未収利息
連続ケースの条件
青葉サポート株式会社はX8年1月1日に900,000円を貸し付けました。
- 年利率:4%
- 利息受取日:X8年12月31日
- 受取方法:後受け
- 決算日:X8年3月31日
- 決算まで利息は未記帳
当期の貸付期間
X8年1月から3月までの3か月です。
年間利息を求める
900,000円 × 4% = 36,000円
当期3か月分を求める
36,000円 × 3÷12 = 9,000円
現金はまだ受け取っていませんが、当期中に資金を貸し付けた3か月分の利息は当期の収益です。
決算整理仕訳
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 未収利息 | 9,000 | 受取利息 | 9,000 |
- 未収利息:後で受け取る権利であるため借方
- 受取利息:当期収益を追加するため貸方
整理後残高
- P/Lの受取利息:9,000円増加
- B/Sの未収利息:9,000円
未払金・未収入金との違い
未払費用・未収収益は、時間の経過によって当期分が発生する費用・収益に使います。未払金・未収入金は、商品以外の売買などで代金を後日決済する場合に使います。
| 科目 | 主な場面 |
|---|---|
| 未払費用 | 当期分の利息、家賃、給料などが未払い |
| 未収収益 | 当期分の利息、家賃などが未収 |
| 未払金 | 備品など商品以外を後払いで購入 |
| 未収入金 | 固定資産など商品以外を後日受取で売却 |
問題文の勘定科目候補に未払利息、未収利息など具体的科目がある場合は、その科目を使用します。
給料の未払いも費用の見越し
2026年の公式第3問サンプルでは、決算日に給料の未払いが判明し、適切に処理する事項が含まれています。
例:決算日に当期分給料30,000円が未払いである。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 給料 | 30,000 | 未払給料 | 30,000 |
当期の労働に対応する給料を費用へ追加し、将来の支払義務を負債へ計上します。
4つの決算整理をまとめる
青葉サポート株式会社の4取引を一覧にします。
| 処理 | 決算整理仕訳 | P/Lへの影響 | B/Sへの影響 |
|---|---|---|---|
| 費用の繰延べ | 前払保険料80,000/保険料80,000 | 費用を80,000減額 | 資産80,000 |
| 収益の繰延べ | 受取家賃400,000/前受家賃400,000 | 収益を400,000減額 | 負債400,000 |
| 費用の見越し | 支払利息12,000/未払利息12,000 | 費用を12,000追加 | 負債12,000 |
| 収益の見越し | 未収利息9,000/受取利息9,000 | 収益を9,000追加 | 資産9,000 |
整理前と整理後の比較
| 科目 | 整理前 | 増減 | 整理後 |
|---|---|---|---|
| 保険料 | 240,000 | −80,000 | 160,000 |
| 受取家賃 | 600,000 | −400,000 | 200,000 |
| 支払利息 | 0 | +12,000 | 12,000 |
| 受取利息 | 0 | +9,000 | 9,000 |
| 前払保険料 | 0 | +80,000 | 80,000 |
| 前受家賃 | 0 | +400,000 | 400,000 |
| 未払利息 | 0 | +12,000 | 12,000 |
| 未収利息 | 0 | +9,000 | 9,000 |
当期純利益への影響
決算整理による純利益への影響を確認します。
- 保険料減少80,000円:純利益を80,000円増加
- 受取家賃減少400,000円:純利益を400,000円減少
- 支払利息増加12,000円:純利益を12,000円減少
- 受取利息増加9,000円:純利益を9,000円増加
合計影響は次のとおりです。
+80,000円 − 400,000円 − 12,000円 + 9,000円 = −323,000円
決算整理前と比べ、当期純利益は323,000円減少します。
見越しを解く5ステップ
- 費用か収益かを判断する
- 支払・受取がまだであることを確認する
- 当期にサービスが発生した月数を数える
- 当期分の金額を計算する
- 費用・収益と未払・未収を同額で追加する
よくある誤り
誤り1:未払いだから当期費用にしない
現金の支払日ではなく、当期にサービスを受けたかで判断します。
誤り2:未払利息を借方へ書く
未払利息は将来の支払義務である負債なので、増加は貸方です。
誤り3:未収利息を収益と分類する
未収利息は受取権利である資産です。収益は受取利息です。
誤り4:契約全期間の利息を当期に計上する
決算日までの当期分だけを月割計算します。
誤り5:未払金と未払費用を混同する
固定資産購入などの代金債務と、時間の経過により発生した費用の未払いを区別します。
見越しの検算
- 元金×年利率で年間利息を求めたか
- 年間額×当期月数÷12になっているか
- 支払・受取がまだであることを確認したか
- 費用の見越しは費用と負債を同額追加したか
- 収益の見越しは資産と収益を同額追加したか
- 整理前残高+追加額=整理後残高か
- 借方合計と貸方合計は一致するか
次の10-3「再振替と翌期の処理」では、期末の調整を翌期へつなげ、最終的な支払・受取まで確認します。
適用年度: 2026年度
最終確認日: 2026年7月18日
主な確認資料: 日本商工会議所「簿記検定試験出題区分表(2022年度適用、2026年度も適用)」「商業簿記標準・許容勘定科目表」「簿記3級サンプル問題」