10-3 再振替と翌期の支払・受取

再振替仕訳は期末調整を翌期の帳簿へつなげる

決算整理で計上した前払・前受・未払・未収を、翌期首に決算整理仕訳と反対の仕訳で振り戻すことを再振替仕訳といいます。

再振替を行うと、翌期中に実際の支払・受取を通常どおり費用・収益として記録しながら、前期分を自動的に除くことができます。

試験問題で再振替仕訳を求められた場合は、指定された前期末決算整理仕訳の借方・貸方を逆にします。決算整理仕訳だけを求める問題に、指示のない期首仕訳を追加しないようにします。

再振替の基本ルール

前期末の決算整理 翌期首の再振替
前払費用/費用 費用/前払費用
収益/前受収益 前受収益/収益
費用/未払費用 未払費用/費用
未収収益/収益 収益/未収収益

再振替額は、前期末に調整した金額と同額です。翌期分を新しく再計算して金額を変えるものではありません。

青葉サポート株式会社の再振替

前期末X8年3月31日の決算整理仕訳は次の4件でした。

処理 前期末決算整理仕訳
費用の繰延べ 前払保険料80,000/保険料80,000
収益の繰延べ 受取家賃400,000/前受家賃400,000
費用の見越し 支払利息12,000/未払利息12,000
収益の見越し 未収利息9,000/受取利息9,000

X8年4月1日に再振替を行う場合は、すべて貸借を逆にします。

前払保険料の再振替

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
保険料 80,000 前払保険料 80,000

前期末の資産80,000円を取り崩し、X8年度の4月〜7月分の保険料として費用へ戻します。

前受家賃の再振替

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
前受家賃 400,000 受取家賃 400,000

前期末の負債400,000円を取り崩し、X8年度の4月〜7月分の受取家賃へ戻します。

未払利息の再振替

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
未払利息 12,000 支払利息 12,000

前期に費用計上済みの12,000円を翌期の支払利息から一度差し引く形にします。

未収利息の再振替

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
受取利息 9,000 未収利息 9,000

前期に収益計上済みの9,000円を翌期の受取利息から一度差し引く形にします。

翌期の実際支払までつなげる

借入金利息をX8年5月31日に支払う

借入期間はX7年12月1日からX8年5月31日までの6か月です。

年間利息は36,000円なので、実際支払額は次のとおりです。

36,000円 × 6÷12 = 18,000円

支払時は通常どおり、全額を支払利息として記録します。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
支払利息 18,000 普通預金 18,000

翌期の支払利息残高

  • 期首再振替:支払利息を貸方へ12,000円
  • 支払時:支払利息を借方へ18,000円

18,000円 − 12,000円 = 6,000円

X8年度に属する4月・5月の2か月分だけが、翌期の支払利息6,000円として残ります。

再振替をしないまま全額費用にするとどうなるか

前期に12,000円をすでに費用計上したのに、翌期も18,000円全額を費用にすると、前期分を二重計上します。再振替によって、翌期には当期分6,000円だけが残ります。

翌期の実際受取までつなげる

貸付金利息をX8年12月31日に受け取る

年間の受取利息は次のとおりです。

900,000円 × 4% = 36,000円

受取時は通常どおり、全額を受取利息として記録します。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
普通預金 36,000 受取利息 36,000

翌期の受取利息残高

  • 期首再振替:受取利息を借方へ9,000円
  • 受取時:受取利息を貸方へ36,000円

36,000円 − 9,000円 = 27,000円

X8年度に属する4月〜12月の9か月分だけが、翌期の受取利息27,000円として残ります。

繰延べ項目の翌期残高

保険料

期首再振替により、前払保険料80,000円が保険料へ戻ります。この80,000円はX8年4月〜7月の4か月分です。

20,000円 × 4か月 = 80,000円

受取家賃

期首再振替により、前受家賃400,000円が受取家賃へ戻ります。この400,000円はX8年4月〜7月の4か月分です。

100,000円 × 4か月 = 400,000円

繰延べ項目では、前期に現金の支払・受取が完了しているため、翌期に同じ契約について現金をもう一度動かしません。

決算から翌期までの完全な流れ

段階 費用の繰延べ 収益の繰延べ 費用の見越し 収益の見越し
期中 費用を全額記帳 収益を全額記帳 未記帳 未記帳
決算 次期分を費用から除く 次期分を収益から除く 当期分を費用へ追加 当期分を収益へ追加
B/S 前払費用 前受収益 未払費用 未収収益
翌期首 費用へ再振替 収益へ再振替 費用から再振替 収益から再振替
翌期中 次期分が費用に残る 次期分が収益に残る 実際支払から前期分を除く 実際受取から前期分を除く

精算表・財務諸表へのつながり

決算整理仕訳は、第11章「決算整理」の処理順序に従って整理し、第12章「試算表と精算表」へ反映します。

科目 財務諸表 分類
保険料、支払利息 P/L 費用
受取家賃、受取利息 P/L 収益
前払保険料、未収利息 B/S 資産
前受家賃、未払利息 B/S 負債

2026年の公式第3問サンプルでは、半年分を前払いした保険料の月割処理と、給料の未払い処理が決算整理事項に含まれています。単一の仕訳だけでなく、整理後のP/L・B/S金額までつなげる必要があります。

誤った再振替を診断する

誤り1:前期末と同じ仕訳をもう一度行う

再振替は借方・貸方を逆にします。同じ仕訳を行うと、前払・前受・未払・未収がさらに増えます。

誤り2:再振替額を翌期分で再計算する

再振替額は前期末の決算整理額と同額です。

誤り3:再振替時に現金や普通預金を使う

再振替は前期末の調整科目と費用・収益を逆にする仕訳です。現金は動きません。

誤り4:実際支払時に未払利息だけを借方にする

本章の再振替方式では、期首に未払利息を取り崩しています。実際支払時は支払利息全額を記録し、再振替との純額で翌期分を残します。

誤り5:決算整理だけを求める問題に再振替を追加する

問題が求める日付と処理を確認します。期末決算整理と翌期首再振替は別の仕訳です。

最終チェックリスト

  1. 費用か収益かを判断したか
  2. 現金が先か後かを確認したか
  3. 契約期間と決算日を確認したか
  4. 当期月数と次期月数を区別したか
  5. 繰延べは次期分を除いたか
  6. 見越しは当期分を追加したか
  7. 前払・未収は資産、前受・未払は負債か
  8. 整理後P/LとB/Sの金額を確認したか
  9. 再振替は前期末仕訳と同額で貸借を逆にしたか
  10. 翌期の実際支払・受取と組み合わせた純額は正しいか
  11. 借方合計と貸方合計は一致するか

第10章の練習問題では、4分類、月割計算、整理後残高、純利益への影響、再振替、翌期支払まで確認してください。


適用年度: 2026年度

最終確認日: 2026年7月18日

主な確認資料: 日本商工会議所「簿記検定試験出題区分表(2022年度適用、2026年度も適用)」「商業簿記標準・許容勘定科目表」「簿記3級サンプル問題」

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