12-3 決算の流れ

最終更新 2026-07-20内容の作り方 →

この節の目標

この節では、12-2「精算表」で完成した青空商事株式会社の精算表を出発点に、帳簿の締め切りを最後まで行います。

学習後にできるようになることは次の6つです。

  1. 精算表で確定した収益・費用を、損益勘定へ振り替えられる。
  2. 損益勘定の貸方残高が当期純利益を表す理由を説明できる。
  3. 当期純利益を繰越利益剰余金へ振り替える仕訳を書ける。
  4. 収益・費用がゼロになり、資産・負債・純資産が翌期へ続く理由を区別できる。
  5. 次期繰越と翌期首の前期繰越を、元帳上の動きとして読める。
  6. 締め切り後に起きやすい誤りを、金額と方向から診断できる。

このページは、決算日を2026年3月31日、金額単位を円として説明します。次の学習へ進む場合は12-4「証ひょうと伝票会計」、演習で確認する場合は第12章の練習問題を使ってください。復習には知識カード「損益勘定」知識カード「繰越利益剰余金」知識カード「次期繰越」が対応します。

対応範囲:日商簿記3級・2026年度出題区分表 最終確認日:2026年7月20日

精算表完成後にすること

精算表は、決算整理後のP/L科目とB/S科目を整理する作業表です。精算表が完成しただけでは、総勘定元帳の収益・費用勘定はまだ締め切られていません。

青空商事株式会社の精算表では、次の金額が確認済みです。

区分 科目 金額
収益 売上 1,600,000
費用 仕入 690,000
費用 給料 325,000
費用 支払家賃 150,000
費用 水道光熱費 60,000
費用 減価償却費 120,000
費用 貸倒引当金繰入 4,800
費用 消耗品費 42,000
費用合計 1,391,800
当期純利益 売上1,600,000-費用1,391,800 208,200

帳簿の締め切りは、精算表の結果を元帳に反映する作業です。大きく分けると、次の順序で進みます。

順序 作業 目的
1 収益を損益勘定へ振り替える 収益勘定をゼロにし、当期の成果を損益へ集める
2 費用を損益勘定へ振り替える 費用勘定をゼロにし、当期の費用を損益へ集める
3 損益勘定の差額を計算する 当期純利益または当期純損失を確定する
4 当期純利益を繰越利益剰余金へ振り替える 利益を純資産へ移す
5 資産・負債・純資産を次期繰越にする 期末残高を翌期へ引き継ぐ
6 翌期首に前期繰越を記入する 翌期の元帳を前期末残高から始める

なぜ収益・費用はゼロにするのか

収益と費用は、一定期間の経営成績を測るための勘定です。青空商事株式会社の場合、2026年3月31日に締め切る収益・費用は、当期の売上や当期の費用だけを表します。翌期に同じ売上勘定や給料勘定を使うとしても、翌期の金額は翌期だけで集計しなければなりません。

そのため、決算では収益・費用の残高を損益勘定へ移し、各収益・費用勘定の残高をゼロにします。これにより、翌期の売上や費用はゼロから記録を始められます。

一方、資産・負債・純資産は決算日で消えるものではありません。2026年3月31日に残っている現金、売掛金、買掛金、借入金、資本金、繰越利益剰余金などは、2026年4月1日以後も会社に残る権利・義務・持分です。したがって、これらはゼロにせず、次期繰越として翌期へ引き継ぎます。

勘定の種類 決算での扱い 理由
収益 損益へ振り替えてゼロにする 当期の成果だけを測る期間勘定だから
費用 損益へ振り替えてゼロにする 当期の費用だけを測る期間勘定だから
資産 次期繰越として翌期へ続ける 決算日に残る会社の財産だから
負債 次期繰越として翌期へ続ける 決算日に残る支払義務だから
純資産 次期繰越として翌期へ続ける 出資と蓄積利益が翌期にも残るから

収益の決算振替仕訳

売上は収益なので、通常は貸方残高を持ちます。収益勘定をゼロにするには、反対側である借方に売上を記入し、同額を損益勘定の貸方へ振り替えます。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
売上 1,600,000 損益 1,600,000

この仕訳により、売上勘定は次のように締め切られます。

売上勘定 借方 貸方
決算振替 1,600,000
決算整理後残高 1,600,000
締切後残高 0 0

売上そのものが消えるのではなく、当期の売上を損益勘定へ集約した結果、売上勘定の翌期開始残高がゼロになるという意味です。

費用の決算振替仕訳

費用は通常、借方残高を持ちます。費用勘定をゼロにするには、各費用を貸方に記入し、合計額を損益勘定の借方へ振り替えます。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
損益 1,391,800 仕入 690,000
給料 325,000
支払家賃 150,000
水道光熱費 60,000
減価償却費 120,000
貸倒引当金繰入 4,800
消耗品費 42,000

この多行の複合仕訳は、借方の損益1,391,800円と、貸方の各費用合計1,391,800円が一致します。

費用 貸方へ振り替える金額
仕入 690,000
給料 325,000
支払家賃 150,000
水道光熱費 60,000
減価償却費 120,000
貸倒引当金繰入 4,800
消耗品費 42,000
合計 1,391,800

たとえば給料勘定は、決算整理後に借方325,000円の残高を持っています。決算振替で貸方325,000円を記入するため、給料勘定の残高はゼロになります。仕入、支払家賃、水道光熱費、減価償却費、貸倒引当金繰入、消耗品費も同じ考え方です。

損益勘定で当期純利益を確認する

損益勘定は、収益と費用を一時的に集める集合勘定です。収益の振替では損益の貸方に入り、費用の振替では損益の借方に入ります。

損益勘定 借方 貸方
仕入 690,000
給料 325,000
支払家賃 150,000
水道光熱費 60,000
減価償却費 120,000
貸倒引当金繰入 4,800
消耗品費 42,000
売上 1,600,000
差額 208,200
合計 1,600,000 1,600,000

差額208,200円は、損益勘定を締め切るために借方へ置いています。しかし、差額を置く前の状態を見ると、損益勘定は貸方1,600,000円、借方1,391,800円です。貸方のほうが208,200円多いため、損益勘定は貸方残高208,200円を持っています。

損益勘定の貸方には収益、借方には費用が集まります。したがって、貸方残高は「収益が費用を上回った状態」、つまり当期純利益を意味します。反対に、借方残高になれば費用が収益を上回るため、当期純損失です。

当期純利益を繰越利益剰余金へ振り替える

株式会社では、損益勘定で確定した当期純利益を、純資産の繰越利益剰余金へ振り替えます。青空商事株式会社の当期純利益は208,200円です。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
損益 208,200 繰越利益剰余金 208,200

この仕訳により、損益勘定もゼロになります。

損益勘定 借方 貸方
費用の振替 1,391,800
利益の振替 208,200
収益の振替 1,600,000
合計 1,600,000 1,600,000

繰越利益剰余金は純資産の科目であり、増加は貸方です。この問題では、配当、利益準備金の積立、その他の純資産変動がない前提です。したがって、繰越利益剰余金の期末残高は次のようになります。

期首繰越利益剰余金100,000+当期純利益208,200=期末繰越利益剰余金308,200

締め切り前後の照合

決算振替後は、収益・費用・損益・繰越利益剰余金の状態を確認します。

勘定 締め切り前 決算振替 締め切り後
売上 貸方1,600,000 借方へ1,600,000を振替 0
仕入 借方690,000 貸方へ690,000を振替 0
給料 借方325,000 貸方へ325,000を振替 0
支払家賃 借方150,000 貸方へ150,000を振替 0
水道光熱費 借方60,000 貸方へ60,000を振替 0
減価償却費 借方120,000 貸方へ120,000を振替 0
貸倒引当金繰入 借方4,800 貸方へ4,800を振替 0
消耗品費 借方42,000 貸方へ42,000を振替 0
損益 貸方残高208,200 借方へ208,200を振替 0
繰越利益剰余金 貸方100,000 貸方へ208,200を追加 貸方308,200

ここで確認すべき点は、費用合計が1,391,800円であること、売上1,600,000円との差額が208,200円であること、繰越利益剰余金が308,200円になっていることです。

資産・負債・純資産の次期繰越

収益・費用を締め切った後、資産・負債・純資産の各勘定を締め切ります。これらは翌期へ続く勘定なので、残高を損益へ振り替えません。元帳では、残高と反対側に「次期繰越」と記入して左右を一致させます。

青空商事株式会社の主なB/S科目は次のとおりです。控除科目である貸倒引当金と備品減価償却累計額は、精算表上はB/S貸方に置かれます。

勘定科目 2026年3月31日の残高 締切記入
現金 借方580,000 貸方に次期繰越580,000
売掛金 借方240,000 貸方に次期繰越240,000
貸倒引当金 貸方4,800 借方に次期繰越4,800
貯蔵品 借方18,000 貸方に次期繰越18,000
繰越商品 借方150,000 貸方に次期繰越150,000
備品 借方600,000 貸方に次期繰越600,000
備品減価償却累計額 貸方240,000 借方に次期繰越240,000
前払家賃 借方30,000 貸方に次期繰越30,000
買掛金 貸方180,000 借方に次期繰越180,000
借入金 貸方300,000 借方に次期繰越300,000
未払給料 貸方25,000 借方に次期繰越25,000
資本金 貸方560,000 借方に次期繰越560,000
繰越利益剰余金 貸方308,200 借方に次期繰越308,200

借方残高の資産勘定では、次期繰越は貸方に記入します。貸方残高の負債・純資産・控除科目では、次期繰越は借方に記入します。これは残高を消すためではなく、当期の元帳を締め切るために左右を一致させる記入です。

翌期首の前期繰越

翌期である2026年4月1日には、次期繰越と同じ金額を、残高本来の側に「前期繰越」として記入します。

勘定科目 2026年3月31日の締切 2026年4月1日の開始
現金 貸方に次期繰越580,000 借方に前期繰越580,000
売掛金 貸方に次期繰越240,000 借方に前期繰越240,000
貸倒引当金 借方に次期繰越4,800 貸方に前期繰越4,800
繰越商品 貸方に次期繰越150,000 借方に前期繰越150,000
備品減価償却累計額 借方に次期繰越240,000 貸方に前期繰越240,000
買掛金 借方に次期繰越180,000 貸方に前期繰越180,000
未払給料 借方に次期繰越25,000 貸方に前期繰越25,000
繰越利益剰余金 借方に次期繰越308,200 貸方に前期繰越308,200

前期繰越は、前期末に残っていた資産・負債・純資産を翌期首へ引き継ぐ表示です。収益・費用には前期繰越を記入しません。売上、仕入、給料などは、翌期の新しい取引が発生してから記録を始めます。

自己点検の手順

締め切りまで終えたら、次の順で自分の解答を点検します。

  1. 精算表の売上が1,600,000円、費用合計が1,391,800円になっているか。
  2. 収益の振替が、借方売上1,600,000円、貸方損益1,600,000円になっているか。
  3. 費用の振替が、借方損益1,391,800円、貸方各費用合計1,391,800円になっているか。
  4. 損益勘定の貸方超過が208,200円になっているか。
  5. 利益の振替が、借方損益208,200円、貸方繰越利益剰余金208,200円になっているか。
  6. 繰越利益剰余金が、100,000+208,200=308,200円になっているか。
  7. 収益・費用・損益の締切後残高がすべてゼロになっているか。
  8. 資産・負債・純資産には次期繰越と前期繰越があり、収益・費用には前期繰越がないか。

よくある誤り診断

誤り 症状 原因 修正方法
売上を損益の借方へ入れる 損益勘定で利益と損失の判断が逆になる 収益は損益の貸方へ集めるという対応を忘れている 借方売上、貸方損益に直す
費用を損益の貸方へ入れる 損益勘定の借方と貸方が逆転する 費用勘定をゼロにするための相手側を誤っている 借方損益、貸方各費用に直す
費用合計を1,391,800円にできない 当期純利益が208,200円にならない 仕入690,000、給料325,000、支払家賃150,000などの精算表金額を写し間違えている 費用7科目を個別に再加算する
当期純利益を損益の貸方に振り替える 損益勘定が締め切れず、左右差が残る 貸方残高の利益を同じ貸方へ追加している 借方損益208,200、貸方繰越利益剰余金208,200に直す
繰越利益剰余金を100,000円のままにする B/Sの純資産が208,200円不足する 当期純利益を純資産へ移していない 期首100,000円に当期純利益208,200円を加える
収益・費用に次期繰越を付ける 翌期の売上や費用が前期分を含んで始まる 期間勘定と実在勘定を混同している 収益・費用は損益へ振り替えてゼロにする
資産・負債・純資産を損益へ振り替える 現金や買掛金などが翌期へ引き継がれない P/L科目とB/S科目を分類できていない B/S科目は次期繰越、翌期首は前期繰越にする
次期繰越と前期繰越の側を同じにする 元帳の開始残高が反対側になる 締切記入と翌期首記入の役割を混同している 次期繰越は残高の反対側、前期繰越は残高本来の側に置く

練習問題:決算振替仕訳と繰越利益剰余金

青空商事株式会社の2026年3月31日の精算表から、次の金額が確認された。

区分 科目 金額
収益 売上 1,600,000
費用 仕入 690,000
費用 給料 325,000
費用 支払家賃 150,000
費用 水道光熱費 60,000
費用 減価償却費 120,000
費用 貸倒引当金繰入 4,800
費用 消耗品費 42,000

期首の繰越利益剰余金は100,000円である。配当、利益準備金の積立、その他の純資産変動はない。

次の問いに答えなさい。

  1. 収益を損益勘定へ振り替える仕訳を書きなさい。
  2. 費用を損益勘定へ振り替える多行の複合仕訳を書きなさい。
  3. 損益勘定から繰越利益剰余金へ当期純利益を振り替える仕訳を書きなさい。
  4. 期末の繰越利益剰余金を計算しなさい。

解答

  1. 収益の決算振替仕訳
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
売上 1,600,000 損益 1,600,000
  1. 費用の決算振替仕訳
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
損益 1,391,800 仕入 690,000
給料 325,000
支払家賃 150,000
水道光熱費 60,000
減価償却費 120,000
貸倒引当金繰入 4,800
消耗品費 42,000

費用合計は、690,000+325,000+150,000+60,000+120,000+4,800+42,000=1,391,800円です。

  1. 当期純利益の振替仕訳
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
損益 208,200 繰越利益剰余金 208,200

損益勘定では、貸方の売上1,600,000円が借方の費用1,391,800円を208,200円上回ります。貸方残高なので当期純利益です。

  1. 期末の繰越利益剰余金

期首繰越利益剰余金100,000+当期純利益208,200=期末繰越利益剰余金308,200

したがって、期末の繰越利益剰余金は308,200円です。

次の学習

決算振替仕訳まで理解できたら、12-4「証ひょうと伝票会計」へ進み、取引の証拠資料と伝票会計を確認してください。前の段階へ戻る場合は12-2「精算表」、演習では第12章の練習問題、暗記確認では知識カード「損益勘定」知識カード「繰越利益剰余金」を使ってください。

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