12-4 証ひょうと伝票会計

最終更新 2026-07-20内容の作り方 →

この節の目標

この節では、証ひょうから取引を読み取り、三伝票制の伝票を使って仕訳へ復元する流れを学びます。

学習後にできるようになることは次の6つです。

  1. 領収書、請求書、納品書、通帳、当座勘定照合表などが何を証明し、何を単独では証明できないかを区別できる。
  2. 証ひょうの受取・発行、日付、取引先、内容、税込・税抜、金額、支払方法から取引を判断できる。
  3. 入金伝票、出金伝票、振替伝票を使い分け、伝票から仕訳を復元できる。
  4. 一部現金取引を「取引分解法」と「全額掛取引とみなす方法」の2通りで処理できる。
  5. 問題が処理方法を指定している場合だけ、伝票の組み合わせを一意に決められる理由を説明できる。
  6. 証ひょう、伝票、仕訳、試算表の金額を照合し、誤りを発見できる。

前節の帳簿締切とのつながりを確認する場合は12-3「決算の流れ」、演習で確認する場合は第12章の練習問題を使ってください。復習には知識カード「証ひょう」知識カード「入金伝票」知識カード「出金伝票」知識カード「振替伝票」知識カード「一部現金取引」が対応します。

対応範囲:日商簿記3級・2026年度出題区分表 最終確認日:2026年7月20日

証ひょうとは

証ひょうとは、取引が実際に行われたことを示す証拠資料です。ただし、証ひょうはそれ自体が仕訳ではありません。簿記では、証ひょうを見てすぐに勘定科目を書くのではなく、受取・発行の立場、日付、取引先、内容、金額条件、支払方法を順に読み取り、取引を識別してから伝票と仕訳へつなげます。

順序 見る項目 判断すること
1 受け取った証ひょうか、発行した証ひょうか 当社が買った側か、売った側か。現金を受け取った側か、支払った側か
2 日付 いつの取引として記帳するか。締切日や会計期間に入るか
3 取引先 得意先、仕入先、銀行、従業員など、相手の性質
4 内容 商品売買、備品購入、費用支払、売掛金回収、買掛金支払など
5 税込・税抜などの条件 問題文が示す金額をそのまま使うか、税額を別に考えるか
6 金額 総額、内訳、差額、残額を確認する
7 支払方法 現金、掛け、普通預金、当座預金、小切手、手形など
8 必要な伝票 現金の増加なら入金伝票、現金の減少なら出金伝票、現金の増減がなければ振替伝票

試験で重要なのは、「証ひょうに書かれている事実」と「そこから推定してよいこと」を分けることです。たとえば、納品書だけで商品が届いたことは確認できますが、代金を現金で払ったことまでは確認できません。支払済みかどうかは、領収書、通帳、当座勘定照合表、支払条件など別の証拠が必要です。

証ひょうから仕訳までの流れは、次の証拠連鎖として考えます。

段階 確認する資料 確定できること まだ確定できないこと
1 納品書、受領書 商品・物品の引渡し、品名、数量、納品日 支払済みか、掛けか、預金決済か
2 請求書 請求金額、支払期日、請求先、代金債権・債務の発生可能性 実際の支払、入金、現金の増減
3 領収書 代金授受があったこと、現金または現金同等物で決済した可能性 何の代金か、掛代金の回収・支払か新規取引か
4 通帳、当座勘定照合表 預金口座で入出金または小切手決済があったこと 相手勘定の最終確定、商品取引か費用か
5 伝票 社内で入金・出金・振替のどれとして記録したか 証ひょうと矛盾しないか、方法指定に合うか
6 仕訳 借方・貸方の科目と金額 原資料に戻って説明できるか

この連鎖を逆から確認することも重要です。仕訳だけが正しく見えても、証ひょう上は預金入金なのに現金入金として処理していれば、伝票選択は誤りです。反対に、証ひょうの名称だけを見て仕訳を決めると、納品済み、請求済み、支払済み、入金済みを混同します。

受取と発行の向きは、特に領収書で誤りやすいところです。当社が領収書を受け取った場合、通常は当社が代金を支払った側です。反対に、当社が領収書を発行した場合、通常は当社が代金を受け取った側です。証ひょうの名称だけでなく、「誰が誰に対して発行したか」まで確認します。

証ひょう別に証明できること

代表的な証ひょうは、それぞれ証明できる範囲が異なります。証ひょう問題では、足りない情報を勝手に補わないことが大切です。

証ひょう 主に証明できること 単独では証明できないこと
領収書 代金の授受があったこと。当社が受け取った領収書なら当社の支払、当社が発行した領収書なら当社の入金 その授受が商品代金か、備品代金か、過去の掛代金かは、但し書き、請求書、納品書との照合が必要
請求書 相手が代金を請求していること。当社発行なら売上代金の請求、当社受取なら仕入・費用などの請求 代金がすでに支払われたこと。商品が実際に納品済みであること
納品書 商品や物品が引き渡されたこと。数量、品名、納品日 代金を支払ったこと。掛けか現金か。税込・税抜や消費税の会計処理
通帳 普通預金の入出金日、入出金額、摘要欄に記載された相手や内容 売上・仕入・費用の具体的内訳。現金取引であること。相手勘定の確定
当座勘定照合表 銀行側が記録した当座預金の入出金、小切手の取立て・決済など 当社帳簿に未記帳の原因が何か。商品取引か費用支払かの詳細。当社側の記帳漏れか銀行未処理かの最終判断
小切手控え 小切手を振り出した日、金額、支払先 相手が実際に取り立てた日。銀行残高からすでに引き落とされたか
売上票・クレジット関係資料 クレジット売上の発生、カード会社を通じた回収予定 現金を受け取ったこと。カード会社からの入金日と手数料の確定

特に、領収書、請求書、納品書、通帳、当座勘定照合表は、次のように役割を分けて判断します。

証ひょう 判断の中心 仕訳に直すときの注意
領収書 決済の事実 当社が発行した領収書は入金側、当社が受け取った領収書は支払側。ただし、但し書きがなければ売上代金か売掛金回収かを単独では決めない
請求書 債権・債務の請求 当社発行なら売掛金発生、当社受取なら買掛金・未払金発生を考える。ただし、請求書だけで現金決済済みとはしない
納品書 物品の引渡し 商品売買か消耗品・備品購入かを内容で分ける。ただし、支払方法は別資料で確認する
通帳 普通預金の入出金 現金ではなく普通預金の増減として見る。摘要欄だけで相手勘定が不明なら、請求書や領収書と照合する
当座勘定照合表 当座預金の銀行記録 小切手振出し済みでも銀行未取立てなら当社帳簿と差が出る。銀行側記録だけで当社の未処理理由を断定しない

この流れをたどると、「何が起きたか」「いつ記帳するか」「どの勘定科目を使うか」「金額はいくらか」「現金を含むか」を順に説明できます。

伝票は証ひょうそのものではなく、証ひょうから読み取った取引を社内で記帳しやすい形に整理したものです。そのため、伝票から仕訳を復元した後も、日付、取引先、金額、支払方法が元の証ひょうと矛盾しないかを確認します。

証ひょうから仕訳までの判断手順

証ひょう問題では、次の型で処理すると安定します。

手順 質問 判断例
1 当社は証ひょうを受け取ったか、発行したか 領収書を受け取ったなら当社は支払側、領収書を発行したなら当社は入金側
2 取引の内容は何か 商品販売なら売上、商品仕入なら仕入、備品なら備品、家賃なら支払家賃
3 金額は税込か税抜か 問題文が税込金額を指定すればその金額を使う。税抜金額と税額が示されれば指定条件に従う
4 代金の決済方法は何か 現金、掛け、普通預金、当座預金などを区別する
5 現金の増減があるか 増加なら入金伝票、減少なら出金伝票、増減なしなら振替伝票
6 一部現金取引か 現金部分と掛け部分をどう伝票化するか、問題文の指定を確認する
7 伝票から仕訳へ戻すと左右が一致するか 借方合計と貸方合計を照合する

税込・税抜の扱いは、問題文の指示に従います。この節の例では、消費税の処理を指定しない限り、与えられた金額を仕訳金額として扱います。試験問題で「税込」「税抜」「消費税は仮受消費税・仮払消費税で処理する」などの条件がある場合は、その条件が金額決定の根拠になります。

三伝票制の基本

三伝票制では、取引を入金伝票、出金伝票、振替伝票の3種類に分けて記録します。

伝票 使う場面 伝票上の考え方 復元される仕訳
入金伝票 現金が増える取引 借方の現金は伝票名で分かるため、相手科目と金額を書く 借方 現金、貸方 相手科目
出金伝票 現金が減る取引 貸方の現金は伝票名で分かるため、相手科目と金額を書く 借方 相手科目、貸方 現金
振替伝票 現金の増減がない取引 借方科目、貸方科目、金額を両方書く 伝票の借方・貸方どおり

たとえば、売掛金10,000円を現金で回収した場合、入金伝票には相手科目として売掛金10,000円を記入します。復元仕訳は次のとおりです。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現金 10,000 売掛金 10,000

消耗品3,000円を現金で購入した場合、出金伝票には相手科目として消耗品費3,000円を記入します。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
消耗品費 3,000 現金 3,000

商品50,000円を掛けで仕入れた場合、現金の増減がないため振替伝票を使います。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
仕入 50,000 買掛金 50,000

伝票を選ぶ判断マトリックス

伝票選択は、取引名ではなく現金の増減で決めます。

取引 現金の動き 使う伝票 注意点
売上代金を現金で受け取った 現金が増える 入金伝票 相手科目は売上
売掛金を現金で回収した 現金が増える 入金伝票 相手科目は売掛金。売上ではない
商品を現金で仕入れた 現金が減る 出金伝票 相手科目は仕入
買掛金を現金で支払った 現金が減る 出金伝票 相手科目は買掛金。仕入ではない
商品を掛けで売り上げた 現金の増減なし 振替伝票 借方は売掛金、貸方は売上
商品を掛けで仕入れた 現金の増減なし 振替伝票 借方は仕入、貸方は買掛金
一部を現金、残額を掛けにした売上 現金増加と掛けが混在 入金伝票と振替伝票 処理方法の指定を必ず確認する
一部を現金、残額を掛けにした仕入 現金減少と掛けが混在 出金伝票と振替伝票 処理方法の指定を必ず確認する

一部現金取引が最高重点になる理由

一部現金取引とは、1つの取引の一部を現金で決済し、残額を掛けにする取引です。ここで重要なのは、同じ完全仕訳を、伝票上は2通りの方法で表せることです。

したがって、問題が「取引分解法による」「全額掛取引とみなす方法による」と指定している場合だけ、伝票の記入は一意に決まります。指定がない場合、どちらの方法でも最終的な完全仕訳は同じになるため、伝票だけを一意に決めることはできません。

2つの方法を同時に使ってはいけません。同時に使うと、同じ売上または仕入を二重に記録したり、売掛金・買掛金を余分に発生させたりするためです。復元時は、伝票を合算した結果が完全仕訳と一致するかを必ず確認します。

問題文に方法指定がないときは、「どちらか一方を仮定すれば作れる」という状態であり、伝票記入の唯一解は決まりません。したがって、出題で伝票を記入させる場合は、通常「取引分解法による」または「全額掛取引とみなす方法による」という条件が必要です。

一部現金取引の復元では、次の3点を固定します。

  1. まず完全仕訳を頭の中で作る。
  2. 次に、問題文が指定した方法だけで伝票へ分ける。
  3. 最後に、伝票から仕訳へ戻して完全仕訳と一致するかを検算する。

方法指定があるときは、伝票の相手科目が変わります。売上の現金部分は、取引分解法なら入金伝票の相手科目が売上です。全額掛取引とみなす方法なら、入金伝票の相手科目は売掛金です。この違いは、最終仕訳の違いではなく、途中でどのように伝票化するかの違いです。

売上の一部現金取引

次の取引を使って、2つの方法を比較します。

商品80,000円を売り上げ、現金30,000円を受け取り、残額は掛けとした。

完全仕訳は次のとおりです。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現金 30,000 売上 80,000
売掛金 50,000

方法1:取引分解法

取引分解法では、現金で受け取った部分と、掛けになった部分を分けて考えます。

伝票 記入内容 復元仕訳
入金伝票 相手科目 売上 30,000 借方 現金30,000、貸方 売上30,000
振替伝票 借方 売掛金50,000、貸方 売上50,000 借方 売掛金50,000、貸方 売上50,000

合算すると、借方は現金30,000円と売掛金50,000円、貸方は売上80,000円です。完全仕訳と一致します。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現金 30,000 売上 30,000
売掛金 50,000 売上 50,000
借方合計 80,000 貸方合計 80,000

方法2:全額掛取引とみなす方法

全額掛取引とみなす方法では、まず80,000円すべてを掛売上として処理し、そのうち30,000円をすぐに現金回収したと考えます。

伝票 記入内容 復元仕訳
振替伝票 借方 売掛金80,000、貸方 売上80,000 借方 売掛金80,000、貸方 売上80,000
入金伝票 相手科目 売掛金30,000 借方 現金30,000、貸方 売掛金30,000

合算すると、売掛金は借方80,000円、貸方30,000円で差引借方50,000円です。現金30,000円と売掛金50,000円、売上80,000円が残るため、完全仕訳と一致します。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
売掛金 80,000 売上 80,000
現金 30,000 売掛金 30,000
借方合計 110,000 貸方合計 110,000
売掛金相殺後 現金30,000・売掛金50,000 売上 80,000

借方合計・貸方合計は伝票を並べた段階では110,000円ですが、売掛金30,000円が借方と貸方に同時に出ているため、復元した完全仕訳では借方80,000円、貸方80,000円になります。

ここで、方法1の入金伝票と方法2の振替伝票を同時に採用してはいけません。方法1は「現金売上30,000円と掛売上50,000円に分ける」考え方であり、方法2は「いったん掛売上80,000円を立て、30,000円を回収する」考え方です。両方を混ぜると、売上30,000円または売掛金30,000円が余分に入り、証ひょうから読み取れる1回の売上80,000円を超えてしまいます。

仕入の一部現金取引

次の取引も、売上と同じ考え方で2通りに処理できます。

商品80,000円を仕入れ、現金30,000円を支払い、残額は掛けとした。

完全仕訳は次のとおりです。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
仕入 80,000 現金 30,000
買掛金 50,000

方法1:取引分解法

伝票 記入内容 復元仕訳
出金伝票 相手科目 仕入 30,000 借方 仕入30,000、貸方 現金30,000
振替伝票 借方 仕入50,000、貸方 買掛金50,000 借方 仕入50,000、貸方 買掛金50,000

合算すると、借方は仕入80,000円、貸方は現金30,000円と買掛金50,000円です。完全仕訳と一致します。

方法2:全額掛取引とみなす方法

伝票 記入内容 復元仕訳
振替伝票 借方 仕入80,000、貸方 買掛金80,000 借方 仕入80,000、貸方 買掛金80,000
出金伝票 相手科目 買掛金30,000 借方 買掛金30,000、貸方 現金30,000

合算すると、買掛金は貸方80,000円、借方30,000円で差引貸方50,000円です。仕入80,000円、現金30,000円、買掛金50,000円が残るため、完全仕訳と一致します。

方法 伝票から復元した最終結果 借方合計 貸方合計
売上・取引分解法 現金30,000、売掛金50,000/売上80,000 80,000 80,000
売上・全額掛取引とみなす方法 現金30,000、売掛金50,000/売上80,000 80,000 80,000
仕入・取引分解法 仕入80,000/現金30,000、買掛金50,000 80,000 80,000
仕入・全額掛取引とみなす方法 仕入80,000/現金30,000、買掛金50,000 80,000 80,000

この表のとおり、4つの復元結果はいずれも最終的な完全仕訳では借方80,000円、貸方80,000円になります。

ただし、伝票を単純に並べた段階の合計額は、全額掛取引とみなす方法では110,000円になります。売上では売掛金30,000円、仕入では買掛金30,000円が借方・貸方の両方に出るためです。復元検算では、同じ勘定の借方と貸方を相殺した後に、最終的な完全仕訳が80,000円対80,000円になるかを確認します。

証ひょう判断の総合ケース

次の証ひょうを受け取ったとします。目的は、証ひょうから「何を証明できるか」と「どの伝票・仕訳に進めるか」を分けて判断することです。

証ひょう 内容
納品書 2026年7月8日、さくら文具株式会社からコピー用紙を納品。金額12,000円
請求書 同日付で、コピー用紙代12,000円を月末払いとして請求
領収書 なし
通帳 2026年7月8日に同額の出金記録なし
当座勘定照合表 2026年7月8日に同額の当座預金支払記録なし

判断は次のとおりです。

項目 判断
受取・発行 当社が納品書と請求書を受け取っているため、当社は購入側
日付 2026年7月8日の取引
取引先 さくら文具株式会社
内容 コピー用紙の購入。通常は消耗品費
金額 12,000円。税込・税抜の追加条件がないため、問題文金額をそのまま使う
支払方法 月末払い。領収書、通帳出金、当座預金支払記録がないため、支払済みとは判断しない
伝票 現金の増減がないため振替伝票

仕訳は次のように復元します。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
消耗品費 12,000 未払金 12,000

ここで、納品書だけを見て現金支払と判断するのは誤りです。領収書があれば支払済みであることは確認できますが、現金払いか、預金・小切手などによる支払いかは、支払方法の記載、現金出納帳、通帳、当座勘定照合表、または問題文の条件で確認します。通帳または当座勘定照合表に支払記録がある場合は、現金ではなく普通預金または当座預金の減少として処理します。

同じ12,000円でも、もし領収書を受け取っており、但し書きに「コピー用紙代として」とあれば、コピー用紙代を支払済みであることまで確認できます。ただし、それだけで貸方を現金と断定せず、領収書の支払方法欄や他の資料を照合します。現金払いの記載があれば、借方を消耗品費、貸方を現金として出金伝票にします。通帳に普通預金からの引落しがあれば、貸方を普通預金とする振替伝票で処理します。証ひょう判断では、取引内容と支払方法を分けて確定することが必要です。

このケースを証ひょう別に整理すると、次のとおりです。

資料 このケースで証明できること このケースで単独では証明できないこと
納品書 コピー用紙が納品されたこと 代金を支払ったこと
請求書 12,000円を月末払いで請求されたこと 現金、普通預金、当座預金で支払済みであること
領収書なし 現金支払を裏付ける資料がないこと 支払不能や未納の確定理由
通帳に出金なし 普通預金から同日出金されていないこと 現金支払や当座預金支払の有無
当座勘定照合表に支払記録なし 銀行側の当座支払記録が同日ないこと 小切手を振り出して銀行未取立てである可能性

したがって、問題文が「月末払い」と示している限り、このケースでは現金・預金の支払を記録せず、未払金を貸方に置くのが自然です。商品仕入ではなくコピー用紙購入であるため、買掛金ではなく未払金を使う点も確認します。

よくある誤りと原因

誤り 原因 自己点検方法
領収書を受け取ったのに入金伝票にする 受取・発行の立場を逆にしている 当社が領収書を受け取るのは、原則として当社が支払った側
請求書だけで現金支払済みにする 請求と支払を混同している 領収書、通帳、現金支払の文言があるか確認する
納品書だけで買掛金支払まで処理する 商品の引渡しと代金決済を混同している 納品、請求、支払を別段階として見る
売掛金回収を売上にしてしまう 新しい売上と過去の債権回収を混同している 「以前の掛代金」「売掛金を回収」の文言を探す
買掛金支払を仕入にしてしまう 新しい仕入と過去の債務支払を混同している 「買掛金を支払った」は借方 買掛金
一部現金取引で2つの方法を混ぜる 取引分解法と全額掛取引とみなす方法の目的を区別していない 問題が指定した方法だけで伝票を作る
入金伝票・出金伝票に現金科目を書き忘れる 伝票上の省略と仕訳復元を混同している 入金伝票は必ず借方 現金、出金伝票は必ず貸方 現金として復元する
税込・税抜条件を読み飛ばす 金額条件を確認せず総額だけを使っている 税込、税抜、消費税処理の指示を最初に線引きする
日付を無視して別期間に記帳する 証ひょう日付と会計期間を見ていない 決算日・月末・翌月払いの条件と照合する

記述式の練習

次の取引について、全額掛取引とみなす方法により、売上の振替伝票1枚、入金伝票1枚を記入し、そこから完全仕訳を復元しなさい。

2026年7月15日、商品80,000円を売り上げ、代金のうち30,000円は現金で受け取り、残額は掛けとした。消費税の処理は考えない。

解答

全額掛取引とみなす方法では、まず全額を掛売上にします。

振替伝票 借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
2026年7月15日 売掛金 80,000 売上 80,000

次に、そのうち30,000円を現金で回収したと考えます。入金伝票では借方の現金は伝票名で分かるため、相手科目に売掛金を記入します。

入金伝票 相手科目 金額
2026年7月15日 売掛金 30,000

伝票から復元される仕訳は次の2つです。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
売掛金 80,000 売上 80,000
現金 30,000 売掛金 30,000

売掛金は借方80,000円、貸方30,000円なので、差引借方50,000円です。したがって、完全仕訳は次のように復元されます。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現金 30,000 売上 80,000
売掛金 50,000

確認は、借方30,000円+50,000円=80,000円、貸方80,000円です。借方と貸方が一致し、売上総額も問題文の80,000円と一致しています。

最後の自己点検

証ひょうと伝票会計の問題では、次の順に確認します。

  1. 証ひょうを受け取ったのか、発行したのか。
  2. 取引日はいつか。会計期間や締切条件に合っているか。
  3. 取引先と内容から、売上、仕入、費用、資産、債権、債務のどれかを判断したか。
  4. 税込・税抜、総額、内訳、残額を問題文どおりに扱ったか。
  5. 支払方法を、現金、掛け、預金、当座、小切手などに分けたか。
  6. 入金伝票、出金伝票、振替伝票を現金の増減で選んだか。
  7. 一部現金取引では、問題指定の方法だけを使ったか。
  8. 伝票から復元した仕訳の借方合計と貸方合計が一致するか。
  9. 復元仕訳が、証ひょうから読み取れる事実だけで説明できるか。
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