12-2 精算表

最終更新 2026-07-20内容の作り方 →

この節の目標

この節では、12-1「試算表」で作成した青空商事株式会社の整理前残高試算表から、8桁精算表を完成させます。

学習後にできるようになることは次の5つです。

  1. 8桁精算表の4区分を説明できる。
  2. 決算整理仕訳を整理記入欄へ正しく入れられる。
  3. 同じ科目の同側加算・異側控除を使って調整後残高を出せる。
  4. 各科目をP/L欄またはB/S欄へ分類できる。
  5. 当期純利益を計算し、横方向・縦方向・P/LとB/Sのつながりで検算できる。

前提となる決算整理の考え方は11-1「決算整理とは」、売上原価は11-2「売上原価の計算」、貸倒引当金は11-3「貸倒引当金」、消耗品の処理は11-4「消耗品の処理」で復習できます。減価償却は9-2「減価償却と固定資産台帳」、未払・前払は10-2「費用・収益の見越しと整理後残高」にもつながります。整理前残高試算表の作り方に戻る場合は12-1「試算表」、精算表後の締め切りへ進む場合は12-3「決算の流れ」を確認してください。

対応範囲:日商簿記3級・2026年度出題区分表 最終確認日:2026年7月20日

精算表は決算整理からP/L・B/Sへつなぐ作業表

精算表(せいさんひょう:Work Sheet / W/S)は、整理前残高試算表に決算整理を加え、損益計算書(P/L)と貸借対照表(B/S)へ載せる金額を整理する下書きです。

簿記3級でよく使う8桁精算表は、次の4ブロックで構成されます。各ブロックに借方・貸方があるため、合計8列になります。

ブロック 役割 何を入れるか
残高試算表欄 決算整理前の出発点 12-1で作った整理前残高
整理記入欄 決算整理の入力欄 決算整理仕訳の借方・貸方
損益計算書欄 経営成績の欄 収益・費用の整理後残高
貸借対照表欄 財政状態の欄 資産・負債・純資産の整理後残高

精算表では、最初からP/LとB/Sを作ろうとせず、まず整理仕訳を整理記入欄に置きます。その後、科目ごとに整理後残高を計算し、収益・費用ならP/L、資産・負債・純資産ならB/Sへ送ります。

青空商事株式会社の前提

会社名:青空商事株式会社

決算日:2026年3月31日

金額単位:円

12-1「試算表」で作成した整理前残高試算表は次のとおりです。借方合計、貸方合計はいずれも2,860,000円です。

勘定科目 借方残高 貸方残高
現金 580,000
売掛金 240,000
貯蔵品 60,000
繰越商品 120,000
備品 600,000
仕入 720,000
給料 300,000
支払家賃 180,000
水道光熱費 60,000
備品減価償却累計額 120,000
買掛金 180,000
借入金 300,000
資本金 560,000
繰越利益剰余金 100,000
売上 1,600,000
合計 2,860,000 2,860,000

この節では、次の7つの決算整理事項を反映します。

  1. 期首商品120,000円を仕入へ振り替える。
  2. 期末商品150,000円を繰越商品へ振り替える。
  3. 備品の減価償却費120,000円を計上する。
  4. 売掛金240,000円に対して2%の貸倒引当金4,800円を設定する。
  5. 貯蔵品60,000円のうち、期末未使用高は18,000円である。
  6. 給料25,000円が未払いである。
  7. 支払家賃180,000円のうち、翌期分30,000円が含まれている。家賃は月額15,000円で、2026年4月分と5月分である。

この問題では、購入時に全額を資産科目の「貯蔵品」で処理している前提です。そのため、使用済み42,000円を「消耗品費」へ振り替えます。購入時に費用処理した場合との違いは11-4「消耗品の処理」で比較してください。

決算整理仕訳を整理記入欄へ入れる

整理記入欄には、決算整理仕訳をそのまま入れます。借方科目は整理借方、貸方科目は整理貸方です。

No. 決算整理仕訳 整理記入欄への入れ方
1 借:仕入 120,000/貸:繰越商品 120,000 仕入の整理借方120,000、繰越商品の整理貸方120,000
2 借:繰越商品 150,000/貸:仕入 150,000 繰越商品の整理借方150,000、仕入の整理貸方150,000
3 借:減価償却費 120,000/貸:備品減価償却累計額 120,000 減価償却費の整理借方120,000、累計額の整理貸方120,000
4 借:貸倒引当金繰入 4,800/貸:貸倒引当金 4,800 貸倒引当金繰入の整理借方4,800、貸倒引当金の整理貸方4,800
5 借:消耗品費 42,000/貸:貯蔵品 42,000 消耗品費の整理借方42,000、貯蔵品の整理貸方42,000
6 借:給料 25,000/貸:未払給料 25,000 給料の整理借方25,000、未払給料の整理貸方25,000
7 借:前払家賃 30,000/貸:支払家賃 30,000 前払家賃の整理借方30,000、支払家賃の整理貸方30,000
合計 整理借方491,800、整理貸方491,800

整理欄の借方合計は、120,000+150,000+120,000+4,800+42,000+25,000+30,000=491,800円です。整理欄の貸方合計も、120,000+150,000+120,000+4,800+42,000+25,000+30,000=491,800円です。

ここでの注意点は、整理記入欄には「整理後の残高」ではなく「決算整理仕訳そのもの」を入れることです。たとえば仕入欄には売上原価690,000円を直接書かず、期首商品分120,000円を整理借方、期末商品分150,000円を整理貸方に分けて記入します。売掛金も235,200円へ直接減らさず、貸倒引当金4,800円を別科目の整理貸方へ置きます。

同じ科目は同側なら足し、異側なら引く

整理後残高は、残高試算表欄と整理記入欄を科目ごとに合わせて求めます。

位置関係 計算方法
借方残高に整理借方が入る 同側なので加算 給料300,000+25,000=325,000
借方残高に整理貸方が入る 異側なので控除 支払家賃180,000-30,000=150,000
貸方残高に整理貸方が入る 同側なので加算 備品減価償却累計額120,000+120,000=240,000
整理だけで新しい科目が出る その整理額が残高 前払家賃30,000、未払給料25,000
借方と貸方の両方に整理が入る 借方側合計と貸方側合計の差額 繰越商品120,000+150,000-120,000=150,000

このルールを使うと、仕入は720,000+120,000-150,000=690,000円になります。三分法では、この整理後の仕入が売上原価です。つまり、売上原価は720,000+120,000-150,000=690,000円です。

各科目をP/LかB/Sへ分ける

整理後残高が出たら、科目の性質でP/L欄またはB/S欄へ送ります。

科目 整理後残高 行き先 理由
現金 借方580,000 B/S借方 資産。決算日に持っている現金。
売掛金 借方240,000 B/S借方 資産。将来回収する権利。
貸倒引当金 貸方4,800 B/S貸方 売掛金の控除科目。売掛金から直接引かず別行で示す。
貯蔵品 借方18,000 B/S借方 資産。期末に未使用で残る部分。
繰越商品 借方150,000 B/S借方 資産。期末商品として翌期へ繰り越す。
備品 借方600,000 B/S借方 資産。取得原価を残す。
備品減価償却累計額 貸方240,000 B/S貸方 備品の控除科目。旧残高120,000に当期分120,000を加える。
前払家賃 借方30,000 B/S借方 資産。翌期にサービスを受ける権利。
買掛金 貸方180,000 B/S貸方 負債。将来支払う義務。
借入金 貸方300,000 B/S貸方 負債。将来返済する義務。
未払給料 貸方25,000 B/S貸方 負債。当期分だが未払いの給料。
資本金 貸方560,000 B/S貸方 純資産。株主からの出資。
繰越利益剰余金 貸方100,000 B/S貸方 純資産。期首までの蓄積利益。
売上 貸方1,600,000 P/L貸方 収益。当期の商品販売成果。
仕入 借方690,000 P/L借方 費用。整理後は売上原価を表す。
給料 借方325,000 P/L借方 費用。当期分給料。
支払家賃 借方150,000 P/L借方 費用。当期分家賃だけを残す。
水道光熱費 借方60,000 P/L借方 費用。当期に発生した水道光熱費。
減価償却費 借方120,000 P/L借方 費用。備品の当期使用分。
貸倒引当金繰入 借方4,800 P/L借方 費用。将来の貸倒見積額。
消耗品費 借方42,000 P/L借方 費用。当期に使用した消耗品。

減価償却累計額や貸倒引当金は、名前に「金」が入っていても負債ではありません。どちらも資産の控除科目です。ただし、8桁精算表ではB/S貸方欄に置いて貸借を合わせます。

青空商事株式会社の8桁精算表

金額単位:円

勘定科目 試算表 借方 試算表 貸方 整理 借方 整理 貸方 損益 借方 損益 貸方 貸借 借方 貸借 貸方
現金 580,000 580,000
売掛金 240,000 240,000
貸倒引当金 4,800 4,800
貯蔵品 60,000 42,000 18,000
繰越商品 120,000 150,000 120,000 150,000
備品 600,000 600,000
備品減価償却累計額 120,000 120,000 240,000
前払家賃 30,000 30,000
買掛金 180,000 180,000
借入金 300,000 300,000
未払給料 25,000 25,000
資本金 560,000 560,000
繰越利益剰余金 100,000 100,000
売上 1,600,000 1,600,000
仕入 720,000 120,000 150,000 690,000
給料 300,000 25,000 325,000
支払家賃 180,000 30,000 150,000
水道光熱費 60,000 60,000
減価償却費 120,000 120,000
貸倒引当金繰入 4,800 4,800
消耗品費 42,000 42,000
当期純利益 208,200 208,200
合計 2,860,000 2,860,000 491,800 491,800 1,600,000 1,600,000 1,618,000 1,618,000

当期純利益の導出

P/L欄では、売上1,600,000円が収益です。費用は次の合計です。

費用 金額
仕入(売上原価) 690,000
給料 325,000
支払家賃 150,000
水道光熱費 60,000
減価償却費 120,000
貸倒引当金繰入 4,800
消耗品費 42,000
費用合計 1,391,800

したがって、当期純利益は次のとおりです。

収益1,600,000-費用1,391,800=当期純利益208,200

精算表では、当期純利益をP/L借方に記入します。これは費用だからではなく、P/L貸方の収益1,600,000円とP/L借方を一致させる差額だからです。同じ208,200円をB/S貸方にも記入します。利益は純資産を増やすためです。

3方向から検算する

1. 横方向の検算

各科目の行で、整理前残高と整理記入を合わせた整理後残高が、P/LまたはB/Sのどちらかに入っているかを確認します。

  • 仕入:720,000+120,000-150,000=690,000、P/L借方へ入る。
  • 貯蔵品:60,000-42,000=18,000、B/S借方へ入る。
  • 繰越商品:120,000+150,000-120,000=150,000、B/S借方へ入る。
  • 備品減価償却累計額:120,000+120,000=240,000、B/S貸方へ入る。
  • 支払家賃:180,000-30,000=150,000、P/L借方へ入る。
  • 給料:300,000+25,000=325,000、P/L借方へ入る。

1行の中で計算が説明できない科目は、整理仕訳の方向、同側加算・異側控除、P/L/B/S分類のどこかに誤りがあります。

2. 縦方向の検算

各ブロックの借方合計と貸方合計を確認します。

ブロック 借方合計 貸方合計 判定
残高試算表欄 2,860,000 2,860,000 一致
整理記入欄 491,800 491,800 一致
損益計算書欄 1,600,000 1,600,000 当期純利益を入れて一致
貸借対照表欄 1,618,000 1,618,000 当期純利益を入れて一致

整理欄が一致しない場合は、決算整理仕訳の借方または貸方の片側を落としています。P/LまたはB/Sだけが合わない場合は、分類、当期純利益の方向、または整理後残高の計算を疑います。

3. P/LとB/Sの勘定関係

P/Lで求めた当期純利益208,200円は、B/Sでは純資産の増加として貸方に入ります。

この表では、当期純利益を入れる前のB/Sは次の状態です。

  • B/S借方:1,618,000
  • B/S貸方:1,409,800
  • 差額:208,200

この差額がP/Lの収益1,600,000-費用1,391,800=208,200と一致します。P/Lの利益とB/Sの差額が一致しない場合、精算表のどこかでP/L科目とB/S科目を混同しています。

よくある誤りと原因の戻り方

誤り 何が起きるか 原因の確認方法
整理仕訳を漏らす 整理欄は合うこともあるが、P/L・B/Sが整理前のままになる 7つの整理事項にチェックを付け、各事項が整理欄の借方・貸方に1回ずつあるか確認する
同側加算・異側控除を逆にする 仕入、支払家賃、貯蔵品などの整理後残高がずれる 科目ごとに「もともと借方か貸方か」を先に丸で囲み、同じ側は足す、反対側は引く
P/LとB/Sを誤分類する P/LまたはB/Sの片方だけ合わない 収益・費用はP/L、資産・負債・純資産はB/Sという五要素で分類し直す
貸倒引当金を売掛金から直接差し引く 売掛金235,200のように別行の控除科目が消える 精算表では売掛金240,000をB/S借方、貸倒引当金4,800をB/S貸方に分ける
減価償却累計額を当期分120,000で上書きする 既存残高120,000を消してしまい、B/S貸方が120,000不足する 累計額は「旧残高+当期分」。120,000+120,000=240,000と確認する
当期純利益の方向を逆にする P/L・B/Sのどちらか、または両方が一致しない 利益ならP/L借方、B/S貸方。損失ならP/L貸方、B/S借方と判断する
合計が一致しただけで正しいと判断する 同額の科目誤りやP/L/B/S間の誤分類を見逃す 縦方向だけでなく、各行の横計算とP/L利益・B/S差額の一致を確認する

貸借が一致しても、すべて正しいとは限りません。たとえば貸倒引当金繰入4,800円を減価償却費に誤分類しても、P/L借方合計は同じになるため、縦合計だけでは見つけにくい誤りです。精算表では、合計一致と科目別の意味の両方を確認します。

練習1:整理仕訳を作る

次の決算整理事項について、整理仕訳を書きなさい。

  1. 期首商品120,000円を仕入へ振り替える。
  2. 期末商品150,000円を繰越商品へ振り替える。
  3. 売掛金240,000円に対して2%の貸倒引当金を設定する。
  4. 給料25,000円が未払いである。

解答

No. 借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
1 仕入 120,000 繰越商品 120,000
2 繰越商品 150,000 仕入 150,000
3 貸倒引当金繰入 4,800 貸倒引当金 4,800
4 給料 25,000 未払給料 25,000

貸倒引当金は240,000×2%=4,800円です。この問題では既存の貸倒引当金残高がないため、必要額4,800円をそのまま繰り入れます。

練習2:精算表の一部を埋める

次の3科目について、整理後残高と記入先を答えなさい。

勘定科目 試算表借方 試算表貸方 整理借方 整理貸方
仕入 720,000 120,000 150,000
貯蔵品 60,000 42,000
備品減価償却累計額 120,000 120,000

解答

勘定科目 整理後残高 記入先
仕入 借方690,000 P/L借方
貯蔵品 借方18,000 B/S借方
備品減価償却累計額 貸方240,000 B/S貸方

計算は、仕入が720,000+120,000-150,000=690,000、貯蔵品が60,000-42,000=18,000、備品減価償却累計額が120,000+120,000=240,000です。

練習3:当期純利益を計算する

P/L欄に、売上1,600,000円、仕入690,000円、給料325,000円、支払家賃150,000円、水道光熱費60,000円、減価償却費120,000円、貸倒引当金繰入4,800円、消耗品費42,000円が入っている。費用合計と当期純利益を求めなさい。

解答

費用合計は次のとおりです。

690,000+325,000+150,000+60,000+120,000+4,800+42,000=1,391,800

当期純利益は次のとおりです。

1,600,000-1,391,800=208,200

当期純利益は、精算表ではP/L借方208,200、B/S貸方208,200に記入します。

練習4:誤り診断と検算

ある解答者は、青空商事株式会社の精算表で次のように処理した。

  • 貸倒引当金4,800円を売掛金から直接差し引き、売掛金を235,200円としてB/S借方へ入れた。
  • 備品減価償却累計額を当期分120,000円だけでB/S貸方へ入れた。
  • 当期純利益208,200円をP/L貸方、B/S借方へ入れた。

誤りを3つ指摘し、正しい処理を答えなさい。

解答

1つ目の誤りは、貸倒引当金を売掛金から直接差し引いたことです。精算表では、売掛金240,000円をB/S借方、貸倒引当金4,800円をB/S貸方へ別行で入れます。

2つ目の誤りは、備品減価償却累計額の旧残高を消したことです。整理前貸方120,000円に当期分120,000円を加え、B/S貸方240,000円とします。

3つ目の誤りは、当期純利益の方向です。利益の場合は、P/L借方に208,200円、B/S貸方に208,200円を入れます。P/Lでは収益が費用より多いため借方に差額を置き、B/Sでは利益が純資産を増やすため貸方に置きます。

最後に、残高試算表欄2,860,000円、整理記入欄491,800円、P/L欄1,600,000円、B/S欄1,618,000円の4つがそれぞれ借貸一致しているかを確認します。

次の学習

精算表で当期純利益まで求めたら、次は12-3「決算の流れ」で収益・費用の締め切りと繰越利益剰余金への振替を確認します。復習には知識カード「精算表」知識カード「当期純利益」、演習には第12章の練習問題当期純利益の問題を使ってください。

この章の理解を確認しよう
練習問題で知識を定着させましょう