2-2 五要素の増減と借方・貸方
借方・貸方は左と右の名称
借方は帳簿の左側、貸方は右側です。「借金」「貸付」という日常語の意味で判断しません。
勘定科目が五要素のどれに属するかを確認し、その要素が増えたか減ったかによって借方・貸方を決めます。
五要素の増減ルール
| 五要素 | 増加 | 減少 | 通常残高 |
|---|---|---|---|
| 資産 | 借方 | 貸方 | 借方 |
| 負債 | 貸方 | 借方 | 貸方 |
| 純資産 | 貸方 | 借方 | 貸方 |
| 収益 | 貸方 | 借方 | 貸方 |
| 費用 | 借方 | 貸方 | 借方 |
覚えるだけでなく、貸借対照表と損益計算書の配置へ結び付けます。
- B/S左側の資産と、P/L左側の費用は増加が借方
- B/S右側の負債・純資産と、P/L右側の収益は増加が貸方
仕訳を作る4ステップ
- 取引事実から増減したものを挙げる
- 勘定科目を選ぶ
- 五要素へ分類し、増加・減少を判断する
- 借方・貸方へ同額で配置する
連続ケースで借貸を決める
出資500,000円を普通預金へ受け入れた
| 科目 | 五要素 | 増減 | 借貸 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 資産 | 増加 | 借方 |
| 資本金 | 純資産 | 増加 | 貸方 |
普通預金500,000/資本金500,000
銀行から300,000円を借り入れた
| 科目 | 五要素 | 増減 | 借貸 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 資産 | 増加 | 借方 |
| 借入金 | 負債 | 増加 | 貸方 |
普通預金300,000/借入金300,000
備品200,000円を普通預金で購入した
| 科目 | 五要素 | 増減 | 借貸 |
|---|---|---|---|
| 備品 | 資産 | 増加 | 借方 |
| 普通預金 | 資産 | 減少 | 貸方 |
備品200,000/普通預金200,000
資産同士の交換でも、借方・貸方は同額です。
商品240,000円を掛けで仕入れた
| 科目 | 五要素 | 増減 | 借貸 |
|---|---|---|---|
| 仕入 | 費用 | 増加 | 借方 |
| 買掛金 | 負債 | 増加 | 貸方 |
仕入240,000/買掛金240,000
商品360,000円を販売し、半額は現金、半額は掛けとした
| 科目 | 五要素 | 増減 | 借貸 |
|---|---|---|---|
| 現金 | 資産 | 増加 | 借方 |
| 売掛金 | 資産 | 増加 | 借方 |
| 売上 | 収益 | 増加 | 貸方 |
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 現金 | 180,000 | 売上 | 360,000 |
| 売掛金 | 180,000 |
給料100,000円を普通預金から支払った
| 科目 | 五要素 | 増減 | 借貸 |
|---|---|---|---|
| 給料 | 費用 | 増加 | 借方 |
| 普通預金 | 資産 | 減少 | 貸方 |
給料100,000/普通預金100,000
売掛金60,000円を普通預金で回収した
| 科目 | 五要素 | 増減 | 借貸 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 資産 | 増加 | 借方 |
| 売掛金 | 資産 | 減少 | 貸方 |
普通預金60,000/売掛金60,000
回収時に売上を計上しません。売掛金という資産が普通預金という資産へ変わります。
増加科目と減少科目を混同しない
負債の発生と返済
借入時
普通預金/借入金
借入金という負債が増えるため貸方です。
元本返済時
借入金/普通預金
借入金という負債が減るため借方です。
収益の発生と取消し
売上時
現金・売掛金/売上
収益増加は貸方です。
売上返品時
売上/現金・売掛金
収益を取り消すため売上を借方へ記入します。
費用の発生と取消し
仕入時
仕入/現金・買掛金
費用増加は借方です。
仕入返品時
現金・買掛金/仕入
費用を取り消すため仕入を貸方へ記入します。
複合仕訳の検算
取引:給料300,000円から所得税20,000円と社会保険料30,000円を差し引き、残額を普通預金から支払った。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 給料 | 300,000 | 所得税預り金 | 20,000 |
| 社会保険料預り金 | 30,000 | ||
| 普通預金 | 250,000 |
検算
借方300,000円=貸方20,000円+30,000円+250,000円
給料は手取額250,000円ではなく控除前総額300,000円です。
通常残高を使った異常発見
| 科目 | 通常残高 | 反対残高なら確認すること |
|---|---|---|
| 現金・売掛金 | 借方 | 入金・回収の二重記帳、期首残高、過払いなど |
| 買掛金・借入金 | 貸方 | 支払の二重記帳、相殺漏れなど |
| 売上 | 貸方 | 返品・訂正が売上額を超えていないか |
| 給料・支払家賃 | 借方 | 取消し・振替の方向が正しいか |
反対残高が必ず誤りとは限りませんが、問題演習では重要な確認材料です。
B/S・P/Lと借貸方向
| 財務諸表 | 左側 | 右側 |
|---|---|---|
| 貸借対照表 | 資産 | 負債・純資産 |
| 損益計算書 | 費用・当期純利益 | 収益 |
当期純利益は、P/L左右を一致させるため費用側へ表示されますが、費用そのものではありません。収益が費用を上回った差額です。
仕訳から次の工程へ
正しい仕訳を作った後は、各科目の元帳へ転記し、試算表へ集計します。
取引分析 → 勘定科目 → 五要素 → 増減 → 借方・貸方 → 仕訳 → 元帳 → 試算表
詳しい転記と検算は第3章「仕訳の基礎」で扱います。
よくある誤り
誤り1:資産は常に借方へ記入する
資産の増加は借方、減少は貸方です。
誤り2:負債は常に貸方へ記入する
負債の増加は貸方、減少は借方です。
誤り3:現金が増えた理由を確認せず売上にする
借入、出資、債権回収などがあります。
誤り4:返品を新しい費用・収益として記録する
元の売上・仕入を反対側へ記入して取り消します。
誤り5:複合仕訳で一部の科目を落とす
借方合計と貸方合計を計算し、問題文の全金額が反映されたか確認します。
誤り6:当期純利益を費用だと考える
P/L借方へ表示されますが、収益と費用の差額です。
最終チェックリスト
- 勘定科目を五要素へ分類したか
- 増加・減少を判断したか
- 五要素の増減ルールで借貸を決めたか
- 返品・返済・回収で反対方向を使ったか
- 複合仕訳の全科目を記入したか
- 借方合計と貸方合計が一致したか
- 通常残高と大きく異ならないか確認したか
- 仕訳後の元帳・試算表への流れを説明できるか
第2章の練習問題で科目選択と借貸判断を確認し、第3章「仕訳の基礎」へ進んでください。
適用年度: 2026年度
最終確認日: 2026年7月19日
主な確認資料: 日本商工会議所「簿記検定試験出題区分表(2022年度適用、2026年度も適用)」「商業簿記標準・許容勘定科目表」