7-2 電子記録債権・電子記録債務

電子記録債権・債務は電子記録によって発生する権利と義務

電子記録債権は、電子債権記録機関の記録原簿へ発生記録を行うことで生じる金銭債権です。支払う側には、同額の電子記録債務が生じます。

  • 電子記録債権:将来代金を受け取る権利・資産
  • 電子記録債務:将来代金を支払う義務・負債

日商簿記3級では、売掛金・買掛金を電子記録債権・電子記録債務へ振り替える処理と、支払期日の決済を中心に学びます。

このページの目標は、次の流れを一つの取引として理解することです。

  1. 商品売買で売掛金・買掛金が生じる
  2. 発生記録によって電子記録債権・債務へ振り替える
  3. 支払期日まで残高を管理する
  4. 支払期日に銀行口座間で決済する
  5. 紙の約束手形との共通点と違いを説明する
  6. 売掛金・受取手形・電子記録債権を正しく選ぶ

電子記録債権・債務の問題では、発生記録が行われたのか、支払期日が到来したのか、元の売掛金・買掛金を消したかを確認します。

連続ケース:青葉商事株式会社

電子記録債権の発生

8月1日:商品を掛けで販売した

取引:得意先へ商品180,000円を掛けで販売した。三分法で記帳している。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
売掛金 180,000 売上 180,000

8月10日:売掛金について電子記録債権の発生記録が行われた

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
電子記録債権 180,000 売掛金 180,000

売掛金という債権が、電子記録債権へ変わりました。

  • 電子記録債権:資産の増加なので借方
  • 売掛金:資産の減少なので貸方

売上を再計上しません。

10月31日:支払期日に決済された

電子記録債権180,000円が支払期日となり、普通預金へ入金されました。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
普通預金 180,000 電子記録債権 180,000

電子記録債権という権利が消え、普通預金へ変わります。

電子記録債務の発生

9月1日:商品を掛けで仕入れた

取引:仕入先から商品150,000円を掛けで仕入れた。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
仕入 150,000 買掛金 150,000

9月12日:買掛金について電子記録債務の発生記録が行われた

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
買掛金 150,000 電子記録債務 150,000

買掛金という債務が、電子記録債務へ変わりました。

  • 買掛金:負債の減少なので借方
  • 電子記録債務:負債の増加なので貸方

仕入を再計上しません。

11月30日:支払期日に決済された

電子記録債務150,000円が支払期日となり、普通預金から引き落とされました。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
電子記録債務 150,000 普通預金 150,000

電子記録債務という負債を借方で取り崩し、普通預金を貸方で減らします。

4段階の仕訳を並べて確認する

段階 受け取る側 支払う側
商品売買 売掛金/売上 仕入/買掛金
発生記録 電子記録債権/売掛金 買掛金/電子記録債務
支払期日前 電子記録債権が残る 電子記録債務が残る
支払期日 預金/電子記録債権 電子記録債務/預金

「販売・仕入」「発生記録」「決済」は別々の取引です。同じ売上や仕入を繰り返し記録しません。

紙の約束手形との比較

比較 約束手形 電子記録債権・債務
権利・義務の発生 紙の手形を振出・受入 記録原簿へ発生記録
受け取る側 受取手形 電子記録債権
支払う側 支払手形 電子記録債務
商品掛取引からの振替 受取手形/売掛金、買掛金/支払手形 電子記録債権/売掛金、買掛金/電子記録債務
支払期日 預金/受取手形、支払手形/預金 預金/電子記録債権、電子記録債務/預金
管理 手形番号・期日・支払場所など 電子記録の内容・期日・金額など

会計上の流れは似ていますが、使用する科目が異なります。

売掛金・受取手形・電子記録債権の選択

問題文 使用科目
商品を掛けで販売した 売掛金
約束手形を受け取った 受取手形
電子記録債権の発生記録が行われた 電子記録債権

例:同じ300,000円でも科目が異なる

掛けで販売

売掛金300,000/売上300,000

販売代金として約束手形を受け取る

受取手形300,000/売上300,000

売掛金について電子記録債権の発生記録

電子記録債権300,000/売掛金300,000

取引手段とタイミングを確認します。

買掛金・支払手形・電子記録債務の選択

問題文 使用科目
商品を掛けで仕入れた 買掛金
約束手形を振り出した 支払手形
電子記録債務の発生記録が行われた 電子記録債務

例:同じ240,000円でも科目が異なる

掛けで仕入れ

仕入240,000/買掛金240,000

仕入代金として約束手形を振り出す

仕入240,000/支払手形240,000

買掛金について電子記録債務の発生記録

買掛金240,000/電子記録債務240,000

残高管理

青葉商事株式会社の電子記録債権・債務の取引は次のとおりです。

電子記録債権

内容 増加 減少
期首残高 90,000
当期発生記録 180,000
支払期日決済 120,000

期末残高は次のとおりです。

90,000円+180,000円−120,000円=150,000円

電子記録債務

内容 増加 減少
期首残高 70,000
当期発生記録 150,000
支払期日決済 100,000

期末残高は次のとおりです。

70,000円+150,000円−100,000円=120,000円

  • 電子記録債権:資産なので通常は借方残高
  • 電子記録債務:負債なので通常は貸方残高

複合ケース:紙の手形と電子記録を同時に管理する

決算直前の未決済残高が次のとおりであるとします。

科目 残高
受取手形 300,000
電子記録債権 150,000
支払手形 250,000
電子記録債務 120,000

債権合計と債務合計は次のとおりです。

手形・電子記録債権合計=300,000円+150,000円=450,000円

手形・電子記録債務合計=250,000円+120,000円=370,000円

科目別残高を勝手に相殺しません。受取手形、電子記録債権、支払手形、電子記録債務をそれぞれ管理します。

3級の範囲を守る

2026年度の3級では、電子記録債権・債務の発生と決済を中心に扱います。

手形・電子記録債権の裏書譲渡や割引などは、3級の本章では扱いません。問題文にない処理を追加せず、発生記録と支払期日の仕訳へ集中します。

よくある誤り

誤り1:電子記録債権の発生時に売上を計上する

売上は販売時に計上済みです。発生記録時は電子記録債権/売掛金です。

誤り2:電子記録債務の発生時に仕入を計上する

仕入は購入時に計上済みです。発生記録時は買掛金/電子記録債務です。

誤り3:電子記録債権と電子記録債務を逆にする

受け取る権利は債権・資産、支払う義務は債務・負債です。

誤り4:支払期日の仕訳方向を逆にする

債権の決済は預金/電子記録債権、債務の決済は電子記録債務/預金です。

誤り5:約束手形と同じ科目を使う

紙の約束手形は受取手形・支払手形、電子記録は電子記録債権・電子記録債務です。

誤り6:売掛金や買掛金を残したままにする

発生記録時に元の売掛金・買掛金を同額取り崩します。

誤り7:債権と債務を差額だけ表示する

異なる科目を相殺せず、それぞれの残高を管理します。

最終チェックリスト

  1. 商品販売・仕入と発生記録を分けたか
  2. 電子記録債権は資産、電子記録債務は負債か
  3. 発生記録時に売掛金・買掛金を取り崩したか
  4. 売上・仕入を二重計上していないか
  5. 支払期日の預金増減方向は正しいか
  6. 紙の手形と電子記録の科目を区別したか
  7. 期首残高+発生−決済で期末残高を計算したか
  8. 債権と債務を相殺していないか
  9. 3級範囲外の裏書譲渡・割引を追加していないか
  10. 借方合計と貸方合計が一致しているか

第7章の練習問題では、約束手形の振出・受入・取立・支払、記入帳、手形貸借、電子記録の発生・決済をまとめて確認してください。


適用年度: 2026年度

最終確認日: 2026年7月18日

主な確認資料: 日本商工会議所「簿記検定試験出題区分表(2022年度適用、2026年度も適用)」「商業簿記標準・許容勘定科目表」

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