1-1 基礎理論
基礎理論
基礎理論では、コンピュータが情報をどのように表現し、条件をどのように判定し、データをどのように読み取るかを学びます。ITパスポートでは高度な数学よりも、単位、二進数、論理演算、確率・統計、グラフの意味を業務場面へ適用する力が問われます。
この節の目標は、ビットとバイトを換算し、論理条件を整理し、平均・中央値・標準偏差・相関を使い分け、数値やグラフから妥当な結論を導けるようになることです。
1. 情報量と単位をそろえる
コンピュータは0と1の二つの状態を組み合わせて情報を表します。
| 用語 | 意味 | 判断のポイント |
|---|---|---|
| ビット | 0または1を表す最小単位 | nビットでは2のn乗通りを表せる |
| バイト | 通常8ビットをまとめた単位 | 1B=8bit |
| KB・MB・GB | データ容量の単位 | 問題文が1000倍か1024倍かを確認する |
| bps | 1秒間に送れるビット数 | ファイル容量のBと混同しない |
8ビットで表せる種類数は、2の8乗=256通りです。必要な種類数からビット数を求める場合は、2の何乗で収まるかを確認します。100種類なら、2の6乗=64では不足し、2の7乗=128で収まるため7ビット必要です。
完全ケース:画像転送時間を求める
20MBの画像を40Mbpsの回線で送る理論上の最短時間を求めます。
- 容量をビットへ直す:20MB×8=160Mbit
- 通信速度で割る:160Mbit÷40Mbps=4秒
実際には通信制御用のデータや混雑があるため、通常は4秒より長くなります。最初にbitとbyteの単位をそろえることが重要です。
2. 二進数と十六進数を理解する
十進数の各桁が10の累乗を表すのに対し、二進数の各桁は2の累乗を表します。
二進数1011は、次のように十進数へ直します。
- 1×2の3乗=8
- 0×2の2乗=0
- 1×2の1乗=2
- 1×2の0乗=1
合計は11です。
十六進数は0〜9とA〜Fを使い、1桁で0〜15を表します。二進数4桁を十六進数1桁へまとめられるため、長いビット列を短く表現できます。
| 十進数 | 二進数 | 十六進数 |
|---|---|---|
| 10 | 1010 | A |
| 15 | 1111 | F |
| 16 | 10000 | 10 |
3. 論理演算を条件文へ置き換える
| 演算 | 真になる条件 | 業務例 |
|---|---|---|
| AND | 両方が真 | 会員であり、かつ購入済み |
| OR | 少なくとも一方が真 | 学生または65歳以上 |
| NOT | 条件が真でない | 未回答者、未承認データ |
| XOR | どちらか一方だけが真 | 二つの選択肢のうち一方だけ選ぶ |
ケース:キャンペーン対象者を抽出する
条件Aを「会員」、条件Bを「購入金額1万円以上」とします。
- A AND B:会員で、かつ1万円以上購入した人
- A OR B:会員、または1万円以上購入した人。両方該当も含む
- A XOR B:会員だけ、または1万円以上購入だけの人。両方該当は含まない
- NOT A:会員ではない人
日本語の「または」は通常ORとして両方該当を含みます。「いずれか一方だけ」と書かれている場合はXORを検討します。
4. 集合と条件を図で確認する
集合問題では、全体集合、共通部分、和集合、補集合を区別します。
100人のうち、商品A購入者が60人、商品B購入者が50人、両方購入した人が20人なら、AまたはBを購入した人数は次のとおりです。
60+50-20=90人
両方購入者を二回数えているため、一度引きます。どちらも購入していない人は、100-90=10人です。
5. 代表値をデータの特徴で選ぶ
| 指標 | 意味 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 平均値 | 合計を件数で割った値 | 極端な値が少なく、全体水準を見たい |
| 中央値 | 並べたとき中央にある値 | 外れ値や偏りが大きい |
| 最頻値 | 最も多く現れる値 | 人気サイズ、最も多い回答など |
| 分散・標準偏差 | 平均からのばらつき | 品質や成績の安定性を比較する |
| 範囲 | 最大値と最小値の差 | 簡単に散らばりを確認する |
完全ケース:平均給与を読み違えない
5人の月給が25万円、26万円、27万円、28万円、200万円の場合、平均は61.2万円ですが、中央値は27万円です。平均だけを見ると、多くの社員の実感より高く見えます。極端な値がある場合は中央値や分布も確認します。
6. 標準偏差と相関を正しく読む
標準偏差が小さいほど、データは平均付近へ集まりやすく、値が安定しています。二つの工場の平均不良率が同じでも、標準偏差が大きい工場は日ごとの変動が大きいと判断できます。
相関係数は、二つのデータが一緒に増減する関係の強さを示します。
- 1に近い:強い正の相関
- 0に近い:線形な関係が弱い
- -1に近い:強い負の相関
ただし、相関があっても因果関係とは限りません。アイスクリーム売上と熱中症件数が同時に増えても、片方がもう片方を直接引き起こすのではなく、気温という第三の要因が影響している可能性があります。
7. 確率・比率・増減率を計算する
確率
全ての結果が同じ起こりやすさなら、確率は次の式で求めます。
確率=条件に合う場合の数÷全ての場合の数
赤玉3個、青玉2個から1個選ぶとき、赤玉を引く確率は3÷5=0.6、つまり60%です。
構成比
売上1000万円のうち商品Aが250万円なら、構成比は250÷1000×100=25%です。
増減率
売上が800万円から920万円へ増えた場合、増加額は120万円です。
増加率=120÷800×100=15%
増加後の920万円で割らないようにします。基準となる元の値を確認します。
8. グラフを目的で選ぶ
| 図表 | 主な用途 | 注意点 |
|---|---|---|
| 棒グラフ | 項目間の数量比較 | 縦軸の始点や目盛りを確認する |
| 折れ線グラフ | 時系列変化 | 時間間隔が同じか確認する |
| 円グラフ | 全体に対する構成比 | 項目が多いと比較しにくい |
| 散布図 | 二つの量の関係 | 相関と因果を混同しない |
| ヒストグラム | 連続データの分布 | 階級幅で印象が変わる |
| 箱ひげ図 | 中央値、四分位、外れ値 | 複数集団の分布比較に向く |
グラフは見た目だけで判断せず、母数、期間、単位、軸、集計方法を確認します。
9. よくある誤りと理由
- 8ビットなら8通りと考える:各ビットが2状態なので2の8乗通りです。
- MBとMbpsをそのまま割る:byteとbitをそろえる必要があります。
- ORは一方だけと考える:通常は両方該当も含みます。
- 集合の合計で共通部分を二重計上する:和集合では共通部分を一度引きます。
- 平均値だけで代表させる:外れ値や分布を確認します。
- 相関が強ければ原因と断定する:第三の要因や偶然を検討します。
- 増加率を増加後の値で割る:元の値を基準にします。
10. セルフチェック
- bit、byte、bpsの単位をそろえたか。
- 二進数の各桁を2の累乗として計算したか。
- AND、OR、XOR、NOTを日本語条件へ置き換えたか。
- 平均値、中央値、標準偏差のどれが適切か。
- 相関と因果関係を区別したか。
- 比率や増減率の分母が正しいか。
理解を確認したら、第1章の練習問題と第1章の知識カードで計算と条件判断を確認してください。処理手順の読み取りは、アルゴリズムとプログラミングへ進みます。
公式範囲との対応
本節は、IPA「ITパスポート試験シラバス Ver.6.5」の基礎理論、応用数学、情報に関する理論に対応し、数値表現、集合、論理演算、確率・統計、グラフ、情報量などを扱います。