1-1 基礎理論

最終更新 2026-07-22内容の作り方 →

基礎理論

基礎理論では、コンピュータが情報をどのように表現し、条件をどのように判定し、データをどのように読み取るかを学びます。ITパスポートでは高度な数学よりも、単位、二進数、論理演算、確率・統計、グラフの意味を業務場面へ適用する力が問われます。

この節の目標は、ビットとバイトを換算し、論理条件を整理し、平均・中央値・標準偏差・相関を使い分け、数値やグラフから妥当な結論を導けるようになることです。

1. 情報量と単位をそろえる

コンピュータは0と1の二つの状態を組み合わせて情報を表します。

用語 意味 判断のポイント
ビット 0または1を表す最小単位 nビットでは2のn乗通りを表せる
バイト 通常8ビットをまとめた単位 1B=8bit
KB・MB・GB データ容量の単位 問題文が1000倍か1024倍かを確認する
bps 1秒間に送れるビット数 ファイル容量のBと混同しない

8ビットで表せる種類数は、2の8乗=256通りです。必要な種類数からビット数を求める場合は、2の何乗で収まるかを確認します。100種類なら、2の6乗=64では不足し、2の7乗=128で収まるため7ビット必要です。

完全ケース:画像転送時間を求める

20MBの画像を40Mbpsの回線で送る理論上の最短時間を求めます。

  1. 容量をビットへ直す:20MB×8=160Mbit
  2. 通信速度で割る:160Mbit÷40Mbps=4秒

実際には通信制御用のデータや混雑があるため、通常は4秒より長くなります。最初にbitとbyteの単位をそろえることが重要です。

2. 二進数と十六進数を理解する

十進数の各桁が10の累乗を表すのに対し、二進数の各桁は2の累乗を表します。

二進数1011は、次のように十進数へ直します。

  • 1×2の3乗=8
  • 0×2の2乗=0
  • 1×2の1乗=2
  • 1×2の0乗=1

合計は11です。

十六進数は0〜9とA〜Fを使い、1桁で0〜15を表します。二進数4桁を十六進数1桁へまとめられるため、長いビット列を短く表現できます。

十進数 二進数 十六進数
10 1010 A
15 1111 F
16 10000 10

3. 論理演算を条件文へ置き換える

演算 真になる条件 業務例
AND 両方が真 会員であり、かつ購入済み
OR 少なくとも一方が真 学生または65歳以上
NOT 条件が真でない 未回答者、未承認データ
XOR どちらか一方だけが真 二つの選択肢のうち一方だけ選ぶ

ケース:キャンペーン対象者を抽出する

条件Aを「会員」、条件Bを「購入金額1万円以上」とします。

  • A AND B:会員で、かつ1万円以上購入した人
  • A OR B:会員、または1万円以上購入した人。両方該当も含む
  • A XOR B:会員だけ、または1万円以上購入だけの人。両方該当は含まない
  • NOT A:会員ではない人

日本語の「または」は通常ORとして両方該当を含みます。「いずれか一方だけ」と書かれている場合はXORを検討します。

4. 集合と条件を図で確認する

集合問題では、全体集合、共通部分、和集合、補集合を区別します。

100人のうち、商品A購入者が60人、商品B購入者が50人、両方購入した人が20人なら、AまたはBを購入した人数は次のとおりです。

60+50-20=90人

両方購入者を二回数えているため、一度引きます。どちらも購入していない人は、100-90=10人です。

5. 代表値をデータの特徴で選ぶ

指標 意味 向いている場面
平均値 合計を件数で割った値 極端な値が少なく、全体水準を見たい
中央値 並べたとき中央にある値 外れ値や偏りが大きい
最頻値 最も多く現れる値 人気サイズ、最も多い回答など
分散・標準偏差 平均からのばらつき 品質や成績の安定性を比較する
範囲 最大値と最小値の差 簡単に散らばりを確認する

完全ケース:平均給与を読み違えない

5人の月給が25万円、26万円、27万円、28万円、200万円の場合、平均は61.2万円ですが、中央値は27万円です。平均だけを見ると、多くの社員の実感より高く見えます。極端な値がある場合は中央値や分布も確認します。

6. 標準偏差と相関を正しく読む

標準偏差が小さいほど、データは平均付近へ集まりやすく、値が安定しています。二つの工場の平均不良率が同じでも、標準偏差が大きい工場は日ごとの変動が大きいと判断できます。

相関係数は、二つのデータが一緒に増減する関係の強さを示します。

  • 1に近い:強い正の相関
  • 0に近い:線形な関係が弱い
  • -1に近い:強い負の相関

ただし、相関があっても因果関係とは限りません。アイスクリーム売上と熱中症件数が同時に増えても、片方がもう片方を直接引き起こすのではなく、気温という第三の要因が影響している可能性があります。

7. 確率・比率・増減率を計算する

確率

全ての結果が同じ起こりやすさなら、確率は次の式で求めます。

確率=条件に合う場合の数÷全ての場合の数

赤玉3個、青玉2個から1個選ぶとき、赤玉を引く確率は3÷5=0.6、つまり60%です。

構成比

売上1000万円のうち商品Aが250万円なら、構成比は250÷1000×100=25%です。

増減率

売上が800万円から920万円へ増えた場合、増加額は120万円です。

増加率=120÷800×100=15%

増加後の920万円で割らないようにします。基準となる元の値を確認します。

8. グラフを目的で選ぶ

図表 主な用途 注意点
棒グラフ 項目間の数量比較 縦軸の始点や目盛りを確認する
折れ線グラフ 時系列変化 時間間隔が同じか確認する
円グラフ 全体に対する構成比 項目が多いと比較しにくい
散布図 二つの量の関係 相関と因果を混同しない
ヒストグラム 連続データの分布 階級幅で印象が変わる
箱ひげ図 中央値、四分位、外れ値 複数集団の分布比較に向く

グラフは見た目だけで判断せず、母数、期間、単位、軸、集計方法を確認します。

9. よくある誤りと理由

  • 8ビットなら8通りと考える:各ビットが2状態なので2の8乗通りです。
  • MBとMbpsをそのまま割る:byteとbitをそろえる必要があります。
  • ORは一方だけと考える:通常は両方該当も含みます。
  • 集合の合計で共通部分を二重計上する:和集合では共通部分を一度引きます。
  • 平均値だけで代表させる:外れ値や分布を確認します。
  • 相関が強ければ原因と断定する:第三の要因や偶然を検討します。
  • 増加率を増加後の値で割る:元の値を基準にします。

10. セルフチェック

  • bit、byte、bpsの単位をそろえたか。
  • 二進数の各桁を2の累乗として計算したか。
  • AND、OR、XOR、NOTを日本語条件へ置き換えたか。
  • 平均値、中央値、標準偏差のどれが適切か。
  • 相関と因果関係を区別したか。
  • 比率や増減率の分母が正しいか。

理解を確認したら、第1章の練習問題第1章の知識カードで計算と条件判断を確認してください。処理手順の読み取りは、アルゴリズムとプログラミングへ進みます。

公式範囲との対応

本節は、IPA「ITパスポート試験シラバス Ver.6.5」の基礎理論、応用数学、情報に関する理論に対応し、数値表現、集合、論理演算、確率・統計、グラフ、情報量などを扱います。

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