1-5 ソフトウェア
ソフトウェア
ソフトウェアは、コンピュータへ処理を指示するプログラムと関連データの総称です。ITパスポートでは、OS、ミドルウェア、アプリケーションの役割、ファイル管理、更新、バックアップ、OSSとライセンスを、利用目的や運用上のリスクから判断する問題が出題されます。
この節の目標は、ソフトウェアの階層を区別し、OSが資源を管理する仕組みを説明し、業務に合うソフトウェアを機能、互換性、費用、保守、セキュリティ、ライセンスから選べるようになることです。
1. ソフトウェアの階層
| 分類 | 主な役割 | 例 |
|---|---|---|
| 基本ソフトウェア | ハードウェア資源を管理し、アプリの実行環境を提供する | Windows、macOS、Linux、iOS、Android |
| ミドルウェア | OSとアプリの間で共通機能を提供する | DBMS、Webサーバ、アプリケーションサーバ |
| 応用ソフトウェア | 利用者の業務・目的を実現する | 表計算、会計、ブラウザ、画像編集、業務システム |
| デバイスドライバ | OSと周辺機器を仲介する | プリンタ、GPU、スキャナ用ドライバ |
| ファームウェア | 機器へ組み込まれ、基本制御を行う | ルーター、SSD、家電の制御プログラム |
DBMSはデータベースを管理する共通基盤であり、顧客管理アプリそのものとは役割が異なります。
2. OSが管理する資源
| 管理対象 | OSの役割 | 問題が起きた場合の例 |
|---|---|---|
| プロセッサ | 複数処理へCPU時間を割り当てる | 一つの処理がCPUを占有する |
| 主記憶 | プログラムごとにメモリを割り当てる | メモリ不足で動作が遅くなる |
| ファイル | 名前、場所、アクセス権、容量を管理する | 誤削除、権限不足、容量不足 |
| 入出力装置 | ドライバを通じて機器を制御する | プリンタやカメラを認識しない |
| 利用者 | アカウント、認証、権限を管理する | 権限過大、退職者IDの残存 |
| ネットワーク | 通信設定や接続機能を提供する | 設定不良、名前解決失敗 |
マルチタスクでは、OSが複数プログラムの実行を切り替えます。仮想記憶は、主記憶だけでは不足する場合に補助記憶の一部を利用しますが、補助記憶は主記憶より遅いため、頻繁に利用すると性能が低下します。
3. ファイルとフォルダを安全に管理する
| 用語 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| ファイル | データを保存する単位 | 形式、所有者、更新日、権限を確認する |
| フォルダ・ディレクトリ | ファイルを階層的に整理する | 業務や権限に合う構成にする |
| 拡張子 | ファイル形式を示す文字列 | 表示名だけで安全性を判断しない |
| 圧縮 | 容量を小さくしたり複数ファイルをまとめたりする | パスワード付きZIPだけに依存しない |
| 暗号化 | 鍵なしでは内容を読みにくくする | 鍵の保管と復旧方法が必要 |
| バックアップ | 障害や誤操作に備えて別に複製する | 世代管理、分離保管、復元試験が必要 |
完全ケース:共有フォルダの権限設計
人事部の給与ファイルを全社員が閲覧できる共有フォルダへ保存しているとします。フォルダ名を「人事限定」に変えるだけでは、機密性は守れません。
適切な対応は次のとおりです。
- 人事担当者だけを権限グループへ登録する。
- 閲覧、更新、削除の権限を業務上必要な範囲に分ける。
- 個人アカウントで操作し、共有IDを避ける。
- 操作ログと権限変更履歴を残す。
- 異動・退職時に権限を見直す。
- バックアップにも同等のアクセス制御を適用する。
4. ソフトウェア導入の形態
| 形態 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| パッケージソフトウェア | 多くの利用者向けに標準機能を提供する | 業務を標準機能へ合わせる検討が必要 |
| オーダメイドソフトウェア | 個別要件に合わせて開発する | 費用、期間、保守、属人化を管理する |
| SaaS | ネットワーク経由で完成したソフトを利用する | 契約、データ、可用性、終了時の移行を確認する |
| フリーウェア | 無償で利用できるソフトウェア | 利用条件、広告、保守、再配布を確認する |
| シェアウェア | 試用後などに料金を支払う形態 | 試用条件や機能制限を確認する |
| OSS | ソースコードが公開され、ライセンス条件で利用・改変・再配布できる | 無償とは限らず、条件と保守が重要 |
5. OSSとライセンスを正しく理解する
OSSは「自由に何をしてもよいソフトウェア」ではありません。ライセンスごとに、著作権表示、ライセンス文の添付、改変物やソースコードの提供など、異なる条件があります。
業務で利用するときは次を確認します。
- 利用、改変、再配布、商用利用の条件。
- 他のソフトウェアへ組み込む場合の影響。
- 著作権表示とライセンス文の扱い。
- 更新状況、保守主体、既知の脆弱性。
- 社内利用だけか、顧客へ配布・提供するか。
- 利用している部品と版を管理できるか。
無料で入手できても、導入、設定、教育、保守、障害対応には費用がかかる場合があります。
6. 更新と脆弱性管理
ソフトウェアの更新には、新機能だけでなく、不具合修正やセキュリティ修正が含まれます。
更新の判断手順
- 対象ソフトウェアと版を把握する。
- 更新内容、脆弱性、影響範囲を確認する。
- 対応OS、他ソフト、データ形式との互換性を確認する。
- テスト環境で業務機能と性能を確認する。
- バックアップと切戻し方法を準備する。
- 影響の小さい範囲から段階的に適用する。
- 適用後のエラー、性能、ログを監視する。
更新を永久に延期すると既知の脆弱性が残ります。一方、確認せず全端末へ即時適用すると、業務ソフトとの不整合が起こる可能性があります。
7. 完全ケース:表計算による顧客管理を見直す
営業部では、各担当者が別々の表計算ファイルで顧客情報を管理しています。最新版が分からず、顧客名の表記も統一されていません。
選択肢として、共有フォルダの表計算、専用パッケージ、SaaS型CRM、個別開発を比較します。
| 評価観点 | 確認内容 |
|---|---|
| 機能 | 顧客・案件・活動履歴、検索、通知を満たすか |
| 同時利用 | 複数担当者が安全に更新できるか |
| データ | 重複、入力規則、移行、出力、契約終了時の返却 |
| セキュリティ | 認証、権限、ログ、暗号化、委託先管理 |
| 可用性 | 障害時の復旧、SLA、オフライン時の対応 |
| 費用 | 初期費用、利用料、教育、運用、移行を含むTCO |
| 保守 | 更新、問い合わせ、法令・外部連携の変化への対応 |
「最も機能が多い」「最も安い」だけで決めず、業務目的と運用能力に合うかを判断します。
8. ソフトウェアを選ぶ判断手順
- 利用者と解決したい業務課題を明確にする。
- 必須機能と希望機能を分ける。
- OS、端末、データ、外部サービスとの互換性を確認する。
- セキュリティ、バックアップ、監査、法令要件を確認する。
- ライセンス、利用者数、再配布条件を確認する。
- 初期費用と運用費を含むTCOを比較する。
- 試用・検証し、移行・教育・終了計画を作る。
9. よくある誤りと理由
- OSとアプリケーションを同じと考える:OSは資源と実行環境、アプリは利用目的を提供します。
- 拡張子を変えればファイル形式も変わる:名前だけ変更しても内部形式は変わりません。
- 圧縮と暗号化を同じと考える:圧縮は容量削減、暗号化は機密性保護が目的です。
- OSSは著作権がないと考える:著作権があり、ライセンス条件に従って利用します。
- 無料ソフトは総費用もゼロと考える:導入、教育、保守、障害対応の費用があります。
- 自動更新なら検証不要と考える:重要業務では互換性、切戻し、段階適用を検討します。
- SaaSならデータ管理も全て事業者責任と考える:権限、利用方法、契約終了時の対応は利用者側にも責任があります。
10. セルフチェック
- 基本ソフト、ミドルウェア、応用ソフトを区別できるか。
- CPU、メモリ、ファイル、利用者のどの資源をOSが管理しているか。
- 圧縮、暗号化、バックアップの目的を区別したか。
- OSSの利用・改変・再配布条件を確認したか。
- 更新前に互換性、バックアップ、切戻しを確認したか。
- 導入費だけでなくTCOと終了時のデータ移行を考えたか。
理解を確認したら、第1章の練習問題と第1章の知識カードでソフトウェアの役割を判定してください。ハードウェア資源はコンピュータ構成要素、開発と変更管理はソフトウェア開発管理技術で確認できます。
公式範囲との対応
本節は、IPA「ITパスポート試験シラバス Ver.6.5」のオペレーティングシステム、ファイルシステム、開発ツール、オープンソースソフトウェアに対応し、OSの資源管理、ファイル管理、ソフトウェア分類、OSS、ライセンス、更新を扱います。