5-2 売上・仕入の処理(掛取引)
商品の種類と決済条件を分けて読む
商品売買の仕訳は、次の2段階で考えると安定します。
- 何を買った・売ったかを判断する
- 代金をどのように決済したかを判断する
販売目的の商品を買ったなら借方は仕入、商品を販売したなら貸方は売上です。そのうえで、現金・預金・掛け・前払金・クレジットなどから相手科目を決めます。
商品部分の科目と、決済部分の科目を別々に決めるのがコツです。
基本の判断表
| 取引 | 商品側 | 決済側 |
|---|---|---|
| 商品を現金で仕入れた | 借方:仕入 | 貸方:現金 |
| 商品を掛けで仕入れた | 借方:仕入 | 貸方:買掛金 |
| 商品を現金で売った | 貸方:売上 | 借方:現金 |
| 商品を掛けで売った | 貸方:売上 | 借方:売掛金 |
| クレジットカードで販売した | 貸方:売上 | 借方:クレジット売掛金など |
売掛金は商品販売によって生じた代金の回収権、買掛金は商品仕入によって生じた代金の支払義務です。備品など商品以外のものを後払いで買った場合は、通常未払金を使います。
掛仕入から支払まで
商品を掛けで仕入れた
商品120,000円を仕入れ、代金は翌月末払いとしました。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入 | 120,000 | 買掛金 | 120,000 |
- 商品を取得した:仕入という費用が増える
- 後で支払う:買掛金という負債が増える
買掛金を普通預金から支払った
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 買掛金 | 120,000 | 普通預金 | 120,000 |
商品をもう一度仕入れたわけではありません。既に計上した支払義務を消す取引なので、借方は買掛金です。
掛売上から回収まで
商品を掛けで販売した
商品180,000円を販売し、代金は翌月末に受け取ることとしました。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 180,000 | 売上 | 180,000 |
- 後で受け取る権利が生じた:売掛金という資産が増える
- 商品を販売した:売上という収益が増える
売掛金が普通預金へ振り込まれた
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 180,000 | 売掛金 | 180,000 |
回収時に売上をもう一度記録すると二重計上になります。
複数の決済条件がある場合
商品150,000円を仕入れました。注文時に支払っていた前払金30,000円を充当し、現金20,000円を支払い、残額は掛けとしました。
まず残額を求めます。
150,000円 − 30,000円 − 20,000円 = 100,000円
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入 | 150,000 | 前払金 | 30,000 |
| 現金 | 20,000 | ||
| 買掛金 | 100,000 |
前払金は、商品を受け取る前に生じていた資産です。商品を受け取った時点でその権利を使うため、貸方で減らします。
クレジット売上
商品100,000円をクレジットカードで販売し、クレジット会社への手数料3%を販売時に差し引いて処理する場合を考えます。
- 手数料:100,000円 × 3% = 3,000円
- クレジット売掛金:100,000円 − 3,000円 = 97,000円
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| クレジット売掛金 | 97,000 | 売上 | 100,000 |
| 支払手数料 | 3,000 |
売上は顧客への販売価格100,000円です。手数料を売上から直接差し引かず、費用として分けて記録します。問題文に手数料を処理する時点や使用科目の指定がある場合は、その指示を優先します。
仕訳を作る5ステップ
- 販売目的の商品か確認する
- 仕入か売上かを決める
- 現金・預金・掛け・前払金など決済条件を拾う
- 複数の決済手段があれば残額を計算する
- 借方合計と貸方合計を一致させる
よくある誤りと原因
| 誤り | 原因 | 修正方法 |
|---|---|---|
| 掛仕入の貸方を売掛金にする | 債権と債務の混同 | 支払う側は買掛金 |
| 売掛金回収時に売上を計上する | 販売時と回収時の混同 | 回収時は売掛金を減らす |
| 前払金を借方に残す | 商品受取時の消滅を見落とす | 商品受取時は前払金を貸方へ |
| クレジット手数料を売上から消す | 総額の売上と費用を混同 | 売上と支払手数料を分ける |
| 備品の後払いを買掛金にする | 商品取引と商品以外の取引を混同 | 商品以外は未払金を検討する |
自検方法
- 仕入・売上の金額は商品代金と一致しているか
- 決済手段の合計は商品代金と一致しているか
- 回収・支払時に売上や仕入を二重計上していないか
- 借方合計と貸方合計は一致しているか
掛金の管理やクレジット売掛金の回収は第6章「売掛金・買掛金」へつながります。返品が発生した場合は5-3「返品の処理」で元の取引を取り消す方法を確認します。
適用年度: 2026年度
最終確認日: 2026年7月18日
主な確認資料: 日本商工会議所「簿記検定試験出題区分表」「商業簿記標準・許容勘定科目表」「簿記3級サンプル問題」