5-5 補助簿と商品有高帳
補助簿を使う目的
仕訳帳と総勘定元帳だけでも会社全体の金額は分かりますが、「どの商品が何個残っているか」「どの仕入先から買ったか」「どの得意先へ売ったか」までは十分に追えません。そこで、取引の内訳を補助簿で管理します。
| 補助簿 | 管理する内容 |
|---|---|
| 仕入帳 | 商品仕入の明細、仕入返品など |
| 売上帳 | 商品売上の明細、売上返品など |
| 商品有高帳 | 商品別の受入・払出・残高を原価で管理 |
| 売掛金元帳 | 得意先別の売掛金残高 |
| 買掛金元帳 | 仕入先別の買掛金残高 |
補助簿は仕訳の代わりではありません。掛売上なら、仕訳帳・総勘定元帳・売上帳・売掛金元帳・商品有高帳がそれぞれ異なる目的で動きます。
商品有高帳の最重要ルール
商品有高帳は、商品の種類ごとに次の3欄を記録します。
- 受入:仕入や売上返品によって商品が増えた
- 払出:売上や仕入返品によって商品が減った
- 残高:取引後に手元へ残っている数量と原価
商品有高帳は、売価ではなく原価で記入します。
販売時の売上仕訳が1個2,000円でも、商品有高帳の払出単価が1,120円なら、払出欄には1,120円を使います。
同じ資料を2つの方法で計算する
商品Aについて、4月の取引は次のとおりです。平均単価に円未満の端数は生じません。
| 日付 | 取引 | 数量 | 単価・売価 |
|---|---|---|---|
| 4/1 | 前月繰越 | 40個 | 原価1,000円 |
| 4/5 | 仕入 | 60個 | 原価1,200円 |
| 4/10 | 売上 | 50個 | 売価1,800円 |
| 4/18 | 仕入 | 50個 | 原価1,360円 |
| 4/25 | 売上 | 60個 | 売価2,000円 |
受入原価の合計は次のとおりです。
40,000円 + 72,000円 + 68,000円 = 180,000円
先入先出法
先入先出法は、先に受け入れた商品から先に払い出したと仮定する方法です。単価の異なる在庫が残る場合は、残高を単価別に分けて管理します。
先入先出法の商品有高帳
| 日付 | 摘要 | 受入数量 | 受入単価 | 受入金額 | 払出数量 | 払出単価 | 払出金額 | 残高 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 4/1 | 前月繰越 | 40 | 1,000 | 40,000 | 40個・40,000円 | |||
| 4/5 | 仕入 | 60 | 1,200 | 72,000 | 100個・112,000円(※1) | |||
| 4/10 | 売上 | 50 | 1,000・1,200(※2) | 52,000 | 50個・60,000円 | |||
| 4/18 | 仕入 | 50 | 1,360 | 68,000 | 100個・128,000円(※3) | |||
| 4/25 | 売上 | 60 | 1,200・1,360(※4) | 73,600 | 40個・54,400円 |
表中の注記と計算過程
※1 4月5日の仕入後残高
40個 × 1,000円 + 60個 × 1,200円 = 112,000円
※2 4月10日の払出
古い在庫から40個を払い出し、足りない10個を次の単価から払い出します。
40個 × 1,000円 + 10個 × 1,200円 = 52,000円
払出後は、単価1,200円の商品が50個、60,000円残ります。
※3 4月18日の仕入後残高
50個 × 1,200円 + 50個 × 1,360円 = 128,000円
※4 4月25日の払出
古い1,200円の商品50個をすべて払い出し、1,360円の商品を10個払い出します。
50個 × 1,200円 + 10個 × 1,360円 = 73,600円
払出後は、単価1,360円の商品が40個、54,400円残ります。
売上原価は払出金額の合計です。
52,000円 + 73,600円 = 125,600円
移動平均法
移動平均法は、商品を仕入れるたびに、在庫全体の平均単価を計算し直す方法です。
新平均単価 =(仕入直前の残高金額+今回の仕入金額)÷(仕入直前の残高数量+今回の仕入数量)
4月5日の新平均単価
(40,000円 + 72,000円)÷(40個 + 60個)= 1,120円
4月10日の払出額:
50個 × 1,120円 = 56,000円
払出後の残高は50個、56,000円です。
4月18日の新平均単価
(56,000円 + 68,000円)÷(50個 + 50個)= 1,240円
4月25日の払出額:
60個 × 1,240円 = 74,400円
期末残高は40個、49,600円です。
移動平均法の商品有高帳
| 日付 | 摘要 | 受入数量 | 受入単価 | 受入金額 | 払出数量 | 払出単価 | 払出金額 | 残高数量 | 残高単価 | 残高金額 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 4/1 | 前月繰越 | 40 | 1,000 | 40,000 | 40 | 1,000 | 40,000 | |||
| 4/5 | 仕入 | 60 | 1,200 | 72,000 | 100 | 1,120 | 112,000 | |||
| 4/10 | 売上 | 50 | 1,120 | 56,000 | 50 | 1,120 | 56,000 | |||
| 4/18 | 仕入 | 50 | 1,360 | 68,000 | 100 | 1,240 | 124,000 | |||
| 4/25 | 売上 | 60 | 1,240 | 74,400 | 40 | 1,240 | 49,600 |
売上原価:
56,000円 + 74,400円 = 130,400円
売上総利益までつなげる
売上高は両方の方法で同じです。
- 4月10日:50個 × 1,800円 = 90,000円
- 4月25日:60個 × 2,000円 = 120,000円
- 売上高合計:210,000円
| 方法 | 売上高 | 売上原価 | 売上総利益 | 期末商品 |
|---|---|---|---|---|
| 先入先出法 | 210,000 | 125,600 | 84,400 | 54,400 |
| 移動平均法 | 210,000 | 130,400 | 79,600 | 49,600 |
どちらも次の関係が成立します。
受入原価180,000円 = 売上原価 + 期末商品
先入先出法:125,600円+54,400円=180,000円
移動平均法:130,400円+49,600円=180,000円
返品と繰越の記入
- 仕入返品:商品が外へ出るため払出欄へ原価で記入
- 売上返品:商品が戻るため受入欄へ原価で記入
- 月末:残高を
次月繰越として締め、翌月の受入欄へ前月繰越として移す
返品の単価は、問題文の指示と元の入出庫資料を確認します。売価を使用しないことが重要です。
よくある誤り
| 誤り | 修正方法 |
|---|---|
| 売価を払出単価に使う | 商品有高帳は原価で記入する |
| 先入先出法で50個すべてを1,000円にする | 古い在庫を使い切ったら次の単価へ移る |
| 移動平均法で仕入後も古い平均単価を使う | 仕入のたびに平均を再計算する |
| 平均単価を単純平均する | 金額合計÷数量合計で加重平均する |
| 仕入諸掛りを受入原価から外す | 当店負担分を商品原価へ含める |
| 期末数量だけ確認して金額を検算しない | 受入原価=払出原価+期末原価を確認する |
3つの検算
- 数量:前月繰越+受入−払出=期末数量
- 金額:前月繰越原価+仕入原価=売上原価+期末商品
- 利益:売上高−売上原価=売上総利益
この計算は第11章の売上原価と第12章の精算表へつながります。第5章の練習問題で、方法を変えた問題にも挑戦してください。
適用年度: 2026年度
最終確認日: 2026年7月18日
主な確認資料: 日本商工会議所「簿記検定試験出題区分表」「商業簿記標準・許容勘定科目表」「簿記3級サンプル問題」