5-1 三分法
三分法を「仕入から利益まで」の流れで理解する
簿記3級の商品売買では、商品に関する取引を主に仕入・売上・繰越商品の3つに分けて記録します。これを三分法(さんぶんぽう)といいます。
このページの目標は、3つの科目名を暗記することではありません。学習後に、次の流れを自分で説明できることが目標です。
商品を買う → 商品を売る → 売れ残りを数える → 売れた商品の原価を求める → 売上総利益を求める
三分法で使う3つの勘定科目
| 勘定科目 | 分類 | いつ使うか | 増加する側 |
|---|---|---|---|
| 仕入 | 費用 | 販売する目的の商品を購入したとき | 借方 |
| 売上 | 収益 | 商品を販売したとき | 貸方 |
| 繰越商品 | 資産 | 決算時に、翌期へ残す商品を表すとき | 借方 |
大切なのは、期中と決算で役割が違うことです。
- 期中:商品の購入は
仕入、販売は売上で記録する - 決算:売れ残った商品の原価を
繰越商品へ振り替える - 決算後:
仕入勘定には、当期に売れた商品の原価が残る
なぜ販売時に売上原価を記録しないのか
三分法では、商品を売るたびに「この商品はいくらで仕入れたか」を仕訳帳で記録しません。販売時に記録するのは、原則として販売価格である売上です。
例:原価1,200円の商品を1,800円で掛け販売した。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 1,800 | 売上 | 1,800 |
この時点では、原価1,200円についての仕訳は行いません。期末に商品を実際に数え、次の関係から売上原価を求めます。
売上原価 = 期首商品棚卸高 + 当期純仕入高 − 期末商品棚卸高
- 期首商品棚卸高:期首に持っていた商品の原価
- 当期純仕入高:当期の仕入から仕入返品などを差し引いた金額
- 期末商品棚卸高:期末に売れ残っている商品の原価
商品の流れと金額の流れ
商品売買では、次の2つを分けて考えます。
| 見るもの | 使う金額 | 主な記録先 |
|---|---|---|
| 得意先へいくらで売ったか | 売価 | 売上勘定・売上帳 |
| 売れた商品をいくらで仕入れたか | 原価 | 商品有高帳・売上原価計算 |
売価と原価を混ぜると、商品有高帳と売上総利益の計算が崩れます。
一連の取引で確認する
ひかり商店は、商品Aを販売しています。期首には商品Aが20個あり、原価は1個900円でした。当期に商品Aを100個仕入れ、商品代金100,000円は掛け、当店負担の引取運賃20,000円は現金で支払いました。商品Aを80個、1個1,800円で掛け販売しました。払出単価は先入先出法で計算します。
1. 当期の仕入
当店負担の仕入諸掛りは商品原価に含めます。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入 | 120,000 | 買掛金 | 100,000 |
| 現金 | 20,000 |
当期に受け入れた商品100個の取得原価は120,000円なので、1個当たり1,200円です。
2. 当期の売上
80個を1個1,800円で販売したため、売上高は144,000円です。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 144,000 | 売上 | 144,000 |
ここで記録する144,000円は売価です。商品有高帳で記録する払出額は原価です。
3. 期末商品棚卸高
販売可能だった商品は120個です。
- 期首:20個 × 900円 = 18,000円
- 当期仕入:100個 × 1,200円 = 120,000円
- 合計:120個、138,000円
80個を先入先出法で払い出すと、期末に残るのは新しく仕入れた商品40個です。
期末商品棚卸高 = 40個 × 1,200円 = 48,000円
4. 売上原価
18,000円 + 120,000円 − 48,000円 = 90,000円
したがって、当期の売上原価は90,000円です。
5. 売上総利益
売上総利益 = 売上高144,000円 − 売上原価90,000円 = 54,000円
この54,000円が、商品の販売によって得た粗利益です。給料や家賃などは、ここからさらに差し引きます。
決算整理仕訳とのつながり
三分法では、決算時に期首商品と期末商品を振り替えます。期首商品が18,000円、期末商品が48,000円の場合は次のとおりです。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入 | 18,000 | 繰越商品 | 18,000 |
| 繰越商品 | 48,000 | 仕入 | 48,000 |
仕入勘定の残高は次のように変わります。
当期仕入120,000円 + 期首商品18,000円 − 期末商品48,000円 = 売上原価90,000円
この決算整理は第11章「決算整理」、精算表への反映は第12章「試算表と精算表」で詳しく扱います。
解き方の4ステップ
- 販売目的の商品か確認する:販売目的なら
仕入・売上を使う - 売価と原価を分ける:仕訳の売上は売価、商品有高帳は原価
- 期末数量を確認する:期首数量+受入数量−払出数量
- 金額をつなぐ:期首商品+純仕入−期末商品=売上原価
よくある誤り
誤り1:商品を買ったときに繰越商品を使う
三分法では、期中の通常の仕入は仕入を使います。繰越商品は主に決算整理で使います。
誤り2:販売時に原価で売上を記録する
売上勘定は販売価格で記録します。原価は商品有高帳と期末の売上原価計算で扱います。
誤り3:期末商品を売上原価に加える
期末商品はまだ売れていないため資産です。売上原価から差し引きます。
誤り4:仕入諸掛りを商品原価から外す
当店負担の引取運賃などは取得原価に含まれます。商品有高帳の受入単価にも反映します。
自分でできる検算
- 数量:期首数量+仕入数量−売上数量=期末数量
- 原価:期首商品+当期純仕入=売上原価+期末商品
- 利益:売上高−売上原価=売上総利益
- 仕訳:1取引ごとに借方合計=貸方合計
次は5-2「売上・仕入の処理」で、現金・掛け・前払金・クレジットなどの決済条件から勘定科目を選ぶ方法を確認します。
適用年度: 2026年度
最終確認日: 2026年7月18日
主な確認資料: 日本商工会議所「簿記検定試験出題区分表(2022年度適用、2026年度も適用)」「商業簿記標準・許容勘定科目表」「簿記3級サンプル問題」