6-1 売掛金・買掛金の発生・返品・決済・元帳

売掛金・買掛金は商品の掛取引に使う

商品を販売し、代金を後日受け取る権利は売掛金という資産です。商品を仕入れ、代金を後日支払う義務は買掛金という負債です。

このページでは、単純な「掛けで売った・仕入れた」だけでなく、次の一連の流れを扱います。

  1. 商品の掛販売・掛仕入
  2. 売上返品・仕入返品
  3. 一部回収・一部支払
  4. 振込手数料の負担
  5. 売掛金元帳・買掛金元帳への記入
  6. 得意先別・仕入先別残高の集計
  7. 未収入金・未払金、手形、電子記録との区別

科目選択では、まず販売目的の商品取引かを確認します。商品取引なら売掛金・買掛金、商品以外なら未収入金・未払金です。

取引原因ごとの比較

取引原因・決済方法 後日受け取る側 後日支払う側
商品の掛取引 売掛金 買掛金
商品以外の売買 未収入金 未払金
約束手形 受取手形 支払手形
電子記録 電子記録債権 電子記録債務
クレジットカード販売 クレジット売掛金

売掛金・買掛金は第5章「商品売買」の売上・仕入から発生し、第7章「手形・電子記録」第8章「その他の債権・債務」へつながります。

連続ケース:青葉商事株式会社

青葉商事株式会社の4月中の掛取引を、発生から決済まで追います。三分法で記帳します。

売掛金の流れ

4月3日:商品を掛けで販売した

取引:得意先A商店へ商品300,000円を掛けで販売した。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
売掛金 300,000 売上 300,000
  • 売掛金:後日回収する権利が増えるため借方
  • 売上:商品の販売による収益が増えるため貸方

4月8日:一部の商品が返品された

A商店から、販売価額20,000円の商品が返品されました。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
売上 20,000 売掛金 20,000

返品によって売上を取り消し、得意先から回収する金額も20,000円減少します。

返品後の売掛金残高は次のとおりです。

300,000円−20,000円=280,000円

4月18日:一部を普通預金で回収した

A商店から180,000円が普通預金へ振り込まれました。振込手数料はA商店が負担したため、当社口座には180,000円全額が入金されました。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
普通預金 180,000 売掛金 180,000

回収後の売掛金残高は次のとおりです。

280,000円−180,000円=100,000円

4月25日:当社負担の振込手数料が差し引かれた

残りの売掛金100,000円について、振込手数料440円を当社負担として差し引き、99,560円が普通預金へ入金されました。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
普通預金 99,560 売掛金 100,000
支払手数料 440

売掛金は100,000円全額を消します。普通預金への実際入金額99,560円との差額440円が当社負担の支払手数料です。

普通預金99,560円+支払手数料440円=売掛金100,000円

買掛金の流れ

4月5日:商品を掛けで仕入れた

取引:仕入先B商店から商品260,000円を掛けで仕入れた。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
仕入 260,000 買掛金 260,000
  • 仕入:商品の購入額を借方
  • 買掛金:後日支払う義務が増えるため貸方

4月10日:一部の商品を返品した

仕入価額30,000円の商品をB商店へ返品しました。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
買掛金 30,000 仕入 30,000

返品によって仕入を取り消し、支払義務も30,000円減少します。

返品後の買掛金残高は次のとおりです。

260,000円−30,000円=230,000円

4月20日:一部を普通預金から支払った

B商店へ150,000円を普通預金から振り込みました。振込手数料550円は当社負担で、同じ普通預金口座から引き落とされました。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
買掛金 150,000 普通預金 150,550
支払手数料 550

支払後の買掛金残高は次のとおりです。

230,000円−150,000円=80,000円

普通預金の減少額は、仕入先へ支払った150,000円と銀行へ支払った手数料550円の合計です。

4月30日:残額を支払った

買掛金80,000円を普通預金から支払いました。今回は振込手数料をB商店が負担する契約で、当社口座からは80,000円だけ引き落とされました。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
買掛金 80,000 普通預金 80,000

支払後の買掛金残高はゼロです。

売掛金元帳(得意先元帳)

売掛金の総勘定元帳だけでは、会社全体の売掛金残高しか分かりません。得意先ごとの明細を管理する補助簿が売掛金元帳または得意先元帳です。

A商店の売掛金元帳

金額単位:円

日付 摘要 借方 貸方 残高
4/3 売上 300,000 300,000
4/8 売上返品 20,000 280,000
4/18 普通預金 180,000 100,000
4/25 普通預金・手数料控除 100,000 0

売掛金は資産なので、通常は借方残高です。返品と回収は貸方へ記入します。

得意先別残高の集計

4月末時点で、得意先別の未回収額が次のとおりだったとします。

得意先 売掛金残高
A商店 0
C商店 120,000
D商店 75,000
合計 195,000

売掛金元帳の得意先別残高合計=総勘定元帳の売掛金残高

両者が一致しない場合は、売上・返品・回収の転記漏れや得意先の記入先を確認します。

買掛金元帳(仕入先元帳)

仕入先ごとの買掛金の増減と残高を管理する補助簿が買掛金元帳または仕入先元帳です。

B商店の買掛金元帳

金額単位:円

日付 摘要 借方 貸方 残高
4/5 仕入 260,000 260,000
4/10 仕入返品 30,000 230,000
4/20 普通預金 150,000 80,000
4/30 普通預金 80,000 0

買掛金は負債なので、通常は貸方残高です。返品と支払は借方へ記入します。

仕入先別残高の集計

仕入先 買掛金残高
B商店 0
E商店 140,000
F商店 90,000
合計 230,000

買掛金元帳の仕入先別残高合計=総勘定元帳の買掛金残高

売掛金・買掛金から別の科目へ変わる場合

売掛金を約束手形で回収した

受取手形/売掛金

売掛金という債権が受取手形へ変わります。売上を再計上しません。

買掛金を約束手形で支払った

買掛金/支払手形

買掛金という債務が支払手形へ変わります。仕入を再計上しません。

売掛金について電子記録債権の発生記録

電子記録債権/売掛金

買掛金について電子記録債務の発生記録

買掛金/電子記録債務

よくある誤り

誤り1:商品以外の後日受取・後日支払にも売掛金・買掛金を使う

売掛金・買掛金は販売目的の商品取引に使います。備品など商品以外は未収入金・未払金です。

誤り2:返品時に現金や預金を動かす

掛取引の返品では、まだ代金を決済していないため売掛金・買掛金を減らします。

誤り3:回収・支払時に売上・仕入を再計上する

売上・仕入は取引発生時に計上済みです。決済時は債権・債務を消します。

誤り4:当社負担の振込手数料を売掛金・買掛金へ含める

債権・債務の額と銀行手数料を分けます。当社負担分は支払手数料です。

誤り5:売掛金元帳と買掛金元帳の借貸方向を同じにする

売掛金は資産で通常借方残高、買掛金は負債で通常貸方残高です。

誤り6:得意先別・仕入先別残高の合計を確認しない

補助簿合計は総勘定元帳残高と一致する必要があります。

誤り7:手形・電子記録への振替で元の売掛金・買掛金を残す

同額を取り崩し、新しい債権・債務へ振り替えます。

最終チェックリスト

  1. 販売目的の商品取引か確認したか
  2. 掛販売は売掛金、掛仕入は買掛金か
  3. 返品で売上・仕入と債権・債務を同額取り消したか
  4. 一部回収・一部支払後の残高を再計算したか
  5. 振込手数料の負担者を確認したか
  6. 当社負担の手数料を支払手数料へ分けたか
  7. 決済時に売上・仕入を再計上していないか
  8. 得意先元帳・仕入先元帳へ正しく転記したか
  9. 補助簿合計と総勘定元帳残高が一致したか
  10. 手形・電子記録への振替で元の債権・債務を消したか

次の6-2「クレジット売掛金」では、顧客・加盟店・信販会社の三者関係と決済手数料を扱います。


適用年度: 2026年度

最終確認日: 2026年7月19日

主な確認資料: 日本商工会議所「簿記検定試験出題区分表(2022年度適用、2026年度も適用)」「商業簿記標準・許容勘定科目表」

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