9-2 減価償却と固定資産台帳

減価償却は取得原価を使用期間へ配分する手続き

建物や備品などは、購入した年度だけでなく、複数の会計期間にわたって会社の営業活動に使用されます。そこで、取得原価の全額を購入年度の費用にせず、使用する期間へ配分します。この手続きが減価償却です。

減価償却は、毎期の市場価格を推定して固定資産を評価し直す手続きではありません。

このページの目標は、次の作業を一連の流れでできることです。

  1. 減価償却の対象か確認する
  2. 取得原価、残存価額、耐用年数を確認する
  3. 年間の減価償却費を計算する
  4. 取得日と決算日から当期使用月数を数える
  5. 月割計算を行う
  6. 間接法の決算整理仕訳を作る
  7. 固定資産台帳へ累計額と帳簿価額を記入する

簿記3級で使う方法

日商簿記3級では、固定資産の減価償却を主に次の方法で処理します。

  • 計算方法:定額法
  • 記帳方法:間接法

定額法

固定資産の取得原価から残存価額を差し引き、耐用年数にわたって均等に費用配分します。

1年分の減価償却費 =(取得原価 − 残存価額)÷ 耐用年数

問題文で残存価額ゼロと指定されている場合は、取得原価を耐用年数で割ります。

間接法

固定資産そのものの取得原価は帳簿に残し、これまで計上した減価償却額を減価償却累計額へ積み上げます。

科目 意味 記入側
減価償却費 当期に配分する費用 借方
建物減価償却累計額など 取得時からの減価償却合計 貸方

固定資産の種類に対応した累計額科目を使用します。

  • 建物 → 建物減価償却累計額
  • 備品 → 備品減価償却累計額
  • 車両運搬具 → 車両運搬具減価償却累計額

年間減価償却費の基本例

条件:

  • 決算日:3月31日
  • X7年4月1日に備品600,000円を取得して使用開始
  • 耐用年数:5年
  • 残存価額:ゼロ
  • 定額法、間接法

X7年4月1日からX8年3月31日まで12か月使用しているため、1年分を計上します。

600,000円 ÷ 5年 = 120,000円

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
減価償却費 120,000 備品減価償却累計額 120,000

月割計算の4ステップ

当期の途中で取得した固定資産は、問題文の条件に従って当期の使用月数分を計算します。

  1. 会計期間と決算日を確認する
  2. 取得日または使用開始日を確認する
  3. 当期使用月数を数える
  4. 年間減価償却費に月数÷12を掛ける

当期減価償却費 = 1年分の減価償却費 × 当期使用月数 ÷ 12

日付と月数が曖昧なまま計算してはいけません。問題文に当期使用月数が直接示されている場合は、その指示を使用します。

連続ケース:青葉オフィスサービス株式会社

決算日はX8年3月31日、残存価額はすべてゼロ、定額法、間接法で処理します。

建物

  • 取得日:X7年4月1日
  • 取得原価:3,780,000円
  • 耐用年数:21年
  • 当期使用月数:12か月

年間減価償却費は次のとおりです。

3,780,000円 ÷ 21年 = 180,000円

当期は12か月使用しているため、当期減価償却費も180,000円です。

土地

  • 取得日:X7年4月1日
  • 取得原価:2,520,000円

土地は減価償却の対象外なので、当期減価償却費はゼロです。

備品

  • 取得日、使用開始日:X7年7月1日
  • 取得原価:660,000円
  • 耐用年数:5年
  • 当期使用月数:X7年7月からX8年3月まで9か月

1年分の減価償却費は次のとおりです。

660,000円 ÷ 5年 = 132,000円

当期9か月分は次のとおりです。

132,000円 × 9÷12 = 99,000円

当期の決算整理仕訳

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
減価償却費 180,000 建物減価償却累計額 180,000
減価償却費 99,000 備品減価償却累計額 99,000

当期減価償却費合計は次のとおりです。

180,000円 + 99,000円 = 279,000円

土地については仕訳を行いません。

減価償却費・累計額・帳簿価額の関係

三つの金額を区別します。

金額 意味
当期減価償却費 当期のP/Lへ計上する費用
減価償却累計額 取得時から当期末までの減価償却合計
帳簿価額 取得原価から累計額を差し引いた金額

帳簿価額 = 取得原価 − 減価償却累計額

初年度末の青葉オフィスサービス株式会社では、当期減価償却費と累計額が同額です。しかし、2年目以降は当期費用と累計額は一致しません。

例:備品の2年目末

X8年度に備品を12か月使用した場合、2年目の当期減価償却費は132,000円です。

  • 前期末累計額:99,000円
  • 当期減価償却費:132,000円
  • 当期末累計額:231,000円
  • 当期末帳簿価額:660,000円−231,000円=429,000円

当期減価償却費は132,000円ですが、累計額は231,000円です。

固定資産台帳を完成させる

金額単位:円

資産 取得日 取得原価 耐用年数 当期使用月数 当期減価償却費 当期末累計額 当期末帳簿価額
建物 X7/4/1 3,780,000 21年 12 180,000 180,000 3,600,000
土地 X7/4/1 2,520,000 0 0 2,520,000
備品 X7/7/1 660,000 5年 9 99,000 99,000 561,000

台帳の検算

  • 建物:3,780,000円−180,000円=3,600,000円
  • 土地:2,520,000円−0円=2,520,000円
  • 備品:660,000円−99,000円=561,000円

固定資産台帳の取得原価は取得仕訳、当期減価償却費は決算整理仕訳、累計額と帳簿価額は貸借対照表へつながります。

複数の固定資産をまとめて計算する方法

公式へすぐ数字を入れず、資産ごとに表を作ります。

確認項目 建物 備品
取得原価 3,780,000 660,000
耐用年数 21年 5年
年間減価償却費 180,000 132,000
当期使用月数 12か月 9か月
当期減価償却費 180,000 99,000

最後に各資産の当期減価償却費を合計します。

180,000円+99,000円=279,000円

この方法なら、取得日や耐用年数が異なる資産を混ぜずに計算できます。

P/LとB/Sへの影響

損益計算書

当期の減価償却費279,000円は費用としてP/Lへ表示され、当期純利益を減少させます。

貸借対照表

固定資産の取得原価と減価償却累計額を使って、期末の帳簿価額を示します。

固定資産 取得原価 累計額 帳簿価額
建物 3,780,000 180,000 3,600,000
備品 660,000 99,000 561,000
土地 2,520,000 0 2,520,000

この処理は第11章「決算整理」第12章「試算表と精算表」へつながります。

端数処理について

問題文に円未満の処理方法が指定されている場合は、その指示に従います。指定がない教材例で無理に端数処理ルールを決めると混乱するため、この章の主要な例は端数が生じない金額で設計しています。

よくある誤り

誤り1:取得日を確認せず、すべて1年分計上する

期中取得なら、決算日までの当期使用月数を確認します。

誤り2:取得原価ではなく購入価額だけで計算する

据付費などを含む取得原価を基礎にします。

誤り3:当期減価償却費と累計額を同じ意味だと思う

当期減価償却費は1期間分、累計額は取得時からの合計です。

誤り4:間接法で固定資産科目を直接減らす

簿記3級の間接法では、貸方に対応する減価償却累計額を使います。

誤り5:土地にも耐用年数を設定する

土地は減価償却の対象外です。

誤り6:月数を日付なしで推測する

会計期間、取得日、使用開始日、決算日を先に書き出します。

自分でできる検算

  1. 取得原価は取得仕訳と一致しているか
  2. 土地を計算対象から外したか
  3. 年間減価償却費は取得原価、残存価額、耐用年数から計算したか
  4. 取得日から決算日までの月数は正しいか
  5. 当期減価償却費=年間額×月数÷12になっているか
  6. 当期末累計額=前期末累計額+当期減価償却費か
  7. 帳簿価額=取得原価−累計額か
  8. 台帳、仕訳、P/L、B/Sの金額が一致するか

次の9-3「固定資産の売却」では、累計額と帳簿価額を使って期首・期中の売却を処理します。


適用年度: 2026年度

最終確認日: 2026年7月18日

主な確認資料: 日本商工会議所「簿記検定試験出題区分表(2022年度適用、2026年度も適用)」「商業簿記標準・許容勘定科目表」「簿記3級サンプル問題」

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