9-1 固定資産の判断と取得原価

固定資産の取得は「何を買ったか」から判断する

固定資産とは、販売するためではなく、会社が営業活動に長期間使用するために保有する資産です。

このページの目標は、固定資産の名称を覚えることだけではありません。取引文を読んだときに、次の判断を自分でできることです。

  1. 販売目的の商品か、会社で使用する固定資産か
  2. 建物・備品・車両運搬具・土地のどれか
  3. 取得原価へ含める付随費用はいくらか
  4. 現金・預金・未払金など、どの決済科目を使うか
  5. 複数の固定資産へ共通費用をどう配分するか

固定資産の仕訳は、使用目的 → 資産の種類 → 取得原価 → 決済条件の順で考えます。

商品・固定資産・費用を区別する

同じ物でも、会社が何のために取得したかによって勘定科目が変わります。

取得したもの 使用目的 基本的な処理
販売するための商品 得意先へ販売する 仕入
会社で長期間使うパソコン 業務に使用する 備品
店舗や倉庫として使う建物 業務に使用する 建物
営業用の自動車 業務に使用する 車両運搬具
店舗や工場の敷地 業務に使用する 土地
少額で当期中に消費する事務用品 短期間で使用する 消耗品費など

同じパソコンでも処理が変わる

  • パソコン販売店が販売目的で仕入れた:仕入
  • 一般企業が社内業務用として長期間使用する:備品

物の名称だけで判断せず、販売目的か使用目的かを確認します。

簿記3級で扱う主な固定資産

勘定科目 主な例 減価償却
建物 店舗、事務所、倉庫 行う
備品 パソコン、机、コピー機 行う
車両運搬具 営業車、配送用トラック 行う
土地 店舗や工場の敷地 行わない

土地は、建物や備品のように使用期間へ取得原価を配分する対象ではないため、減価償却を行いません。土地の価格が将来下落しないという意味ではありません。

取得原価とは

固定資産の取得原価は、購入代金だけではありません。固定資産を取得し、予定した用途に使用できる状態にするために直接必要となった支出を含めます。

取得原価 = 購入対価 + 取得に伴う付随費用

取得原価へ含める代表例

  • 購入手数料
  • 引取運賃
  • 据付費
  • 登録料
  • 試運転や設置のために必要な支出

取得後の費用と混同しない

固定資産を使用できる状態にした後の通常の維持費や営業費用まで、すべて取得原価に含めるわけではありません。

支出 基本判断 理由
購入時の据付費 取得原価 使用可能な状態にするため必要
購入時の登録手数料 取得原価 取得に直接伴う
使用開始後の通常修理 修繕費などを検討 取得そのものとは別の支出
毎月の駐車料金 当期の費用 車両取得後の使用に伴う

問題文で使用する勘定科目や処理方法が指定されている場合は、その指示を優先します。

基本例:備品の取得原価

取引:業務用パソコン200,000円を購入し、据付費10,000円とともに普通預金から支払った。

取得原価は次のとおりです。

200,000円 + 10,000円 = 210,000円

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
備品 210,000 普通預金 210,000

据付費を支払手数料などへ分けず、備品の取得原価へ含めます。

固定資産の後払いは未払金

販売目的の商品を後払いで仕入れた場合は買掛金ですが、備品や車両など商品以外を後払いで取得した場合は未払金を使います。

取引 借方 貸方
商品を掛けで仕入れた 仕入 買掛金
備品を後払いで購入した 備品 未払金

この区別は第3章「仕訳の基礎」第8章「その他の債権・債務」につながります。

連続ケース:青葉オフィスサービス株式会社

青葉オフィスサービス株式会社の決算日は3月31日です。この章では、固定資産の取得、減価償却、売却までを同じ会社の取引で追います。

X7年4月1日:建物と土地を同時に取得

次の条件で事務所建物と土地を購入しました。

  • 建物の購入価額:3,600,000円
  • 土地の購入価額:2,400,000円
  • 共通の取引手数料:300,000円
  • 手数料は購入価額の比率で配分する
  • 全額を普通預金から支払う

1. 配分比率を求める

建物と土地の購入価額の比率は次のとおりです。

3,600,000円:2,400,000円 = 3:2

合計比率は5です。

2. 共通手数料を配分する

  • 建物分:300,000円 × 3÷5 = 180,000円
  • 土地分:300,000円 × 2÷5 = 120,000円

3. 取得原価を求める

固定資産 購入価額 配分した手数料 取得原価
建物 3,600,000 180,000 3,780,000
土地 2,400,000 120,000 2,520,000
合計 6,000,000 300,000 6,300,000

4. 仕訳する

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
建物 3,780,000 普通預金 6,300,000
土地 2,520,000

借方合計3,780,000円+2,520,000円=6,300,000円で、貸方と一致します。

連続ケース:備品を複数の方法で決済する

X7年7月1日

業務用設備を次の条件で取得しました。

  • 購入価額:600,000円
  • 据付費:60,000円
  • 普通預金から支払った金額:160,000円
  • 残額は後日支払う
  • 耐用年数:5年
  • 残存価額:ゼロ

1. 取得原価

600,000円 + 60,000円 = 660,000円

2. 未払額

660,000円 − 160,000円 = 500,000円

3. 仕訳

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
備品 660,000 普通預金 160,000
未払金 500,000

備品は商品ではないため、残額には買掛金ではなく未払金を使います。

固定資産台帳へつなげる

固定資産を取得した後は、資産ごとに取得日、取得原価、耐用年数、減価償却累計額、帳簿価額などを固定資産台帳で管理します。

資産 取得日 取得原価 耐用年数 減価償却
建物 X7年4月1日 3,780,000 21年 対象
土地 X7年4月1日 2,520,000 対象外
備品 X7年7月1日 660,000 5年 対象

次の9-2「減価償却と固定資産台帳」で、この台帳を使って当期の減価償却費と帳簿価額を計算します。

よくある誤り

誤り1:購入代金だけを固定資産にする

据付費や取得手数料など、使用可能な状態にするための付随費用を落としています。

誤り2:付随費用をすべて当期費用にする

取得に直接必要な付随費用は、固定資産の取得原価へ含めます。

誤り3:固定資産の後払いを買掛金にする

買掛金は商品仕入による債務です。備品など商品以外の後払いは未払金です。

誤り4:共通手数料を片方の資産だけへ含める

問題文の指示に従い、購入価額など合理的な基準で配分します。

誤り5:土地にも減価償却を行う

土地は減価償却の対象外です。ただし、建物と土地の取得原価はそれぞれ正しく計算します。

取得仕訳の検算

  • 購入価額と付随費用をすべて拾ったか
  • 固定資産ごとの取得原価合計は支払総額と一致するか
  • 共通費用の配分合計は元の共通費用と一致するか
  • 商品と固定資産を区別したか
  • 買掛金と未払金を区別したか
  • 借方合計と貸方合計は一致するか
  • 固定資産台帳の取得原価は仕訳と一致するか

適用年度: 2026年度

最終確認日: 2026年7月18日

主な確認資料: 日本商工会議所「簿記検定試験出題区分表(2022年度適用、2026年度も適用)」「商業簿記標準・許容勘定科目表」「簿記3級サンプル問題」

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