2-2 情報メディア
情報メディア
情報メディアでは、文字、画像、音声、動画をデジタルデータとして表現・保存・配信する仕組みを学びます。ITパスポートでは、ファイル形式の名称だけでなく、画質、音質、容量、拡大、透過、圧縮、配信方法などの条件から適切な形式を選ぶ問題が出題されます。
この節の目標は、画像・音声・動画のデータ量を概算し、可逆・非可逆圧縮、ラスタ・ベクタ、コーデック・コンテナを区別し、用途に合う媒体形式を選べるようになることです。
1. アナログ情報をデジタル化する
現実の音や画像は連続的に変化します。コンピュータで扱うため、一定の単位へ区切り、数値で表します。
| 処理 | 内容 | 音声での例 |
|---|---|---|
| 標本化 | 一定間隔で値を測る | 1秒間に何回測定するか |
| 量子化 | 測定値を段階的な数値へ置き換える | 何ビットで音の大きさを表すか |
| 符号化 | 数値をビット列として表す | 保存・通信できる形式へ変える |
サンプリング周波数が高いほど時間方向を細かく測れ、量子化ビット数が大きいほど振幅を細かく表せます。ただしデータ量も増えます。
2. 画像のデータ量を求める
圧縮前の画像データ量は、概ね次の式で求めます。
横画素数×縦画素数×1画素当たりのビット数
横1000画素、縦800画素、24ビットカラーの画像なら、
1000×800×24=19,200,000ビットです。
8で割ると2,400,000バイト、約2.4MBです。実際のファイルはヘッダや圧縮方式によって変わります。
色数とビット数の関係も確認します。8ビットなら2の8乗=256色、24ビットなら赤・緑・青を各8ビットで表し、約1677万色を表現できます。
3. ラスタ画像とベクタ画像
| 形式 | 表現方法 | 向いている用途 |
|---|---|---|
| ラスタ画像 | 画素の集合で表す | 写真、複雑な陰影、スキャン画像 |
| ベクタ画像 | 線、曲線、図形を数式で表す | ロゴ、アイコン、図面、拡大表示 |
ラスタ画像を大きく拡大すると画素が目立ちます。ベクタ画像は再計算して描画するため、一般に拡大しても輪郭が劣化しにくい特徴があります。
4. 画像形式を目的で選ぶ
| 形式 | 特徴 | 適した用途 |
|---|---|---|
| JPEG | 写真向けの非可逆圧縮。透過には通常対応しない | 写真、Web掲載画像 |
| PNG | 可逆圧縮。透過に対応する | 画面キャプチャ、図、透過画像 |
| GIF | 色数が少なく、簡単なアニメーションに対応 | 小さなアニメーション、単純な図 |
| SVG | XMLベースのベクタ形式 | ロゴ、アイコン、拡大する図形 |
| WebPなど | 画像を効率よく圧縮する形式 | 対応環境を確認したWeb配信 |
完全ケース:商品サイトの画像を選ぶ
ECサイトで次の素材を用意します。
- 商品写真:色や陰影が多いためJPEGなどの写真向け形式
- 透明背景のブランドロゴ:PNGまたはSVG
- サイズを変えて使う単純なアイコン:SVG
- 文字を鮮明に残した画面キャプチャ:PNG
すべてJPEGにすると、ロゴの透過が使えず、文字周辺に圧縮ノイズが出る場合があります。目的ごとに形式を分けます。
5. 音声のデータ量を計算する
圧縮前の音声データ量は、概ね次の式で求めます。
サンプリング周波数×量子化ビット数×チャンネル数×時間
44.1kHz、16ビット、ステレオ、10秒なら、
44,100×16×2×10=14,112,000ビットです。
8で割ると1,764,000バイト、約1.76MBです。MP3などで圧縮すると容量は小さくなりますが、方式とビットレートによって音質が変わります。
6. 動画の要素を理解する
| 要素 | 内容 | 影響 |
|---|---|---|
| 解像度 | 1画面の画素数 | 高いほど精細だが容量・処理量が増える |
| フレームレート | 1秒間の画像枚数 | 高いほど動きが滑らかだがデータ量が増える |
| ビットレート | 1秒当たりのデータ量 | 高いほど画質・音質を保ちやすいが通信量が増える |
| コーデック | 映像・音声を符号化・復号する方式 | 圧縮率、品質、対応機器に影響する |
| コンテナ | 映像、音声、字幕などをまとめるファイル形式 | MP4など。中で使うコーデックとは別概念 |
「MP4だから必ず同じ映像方式」とは限りません。コンテナとコーデックを区別します。
7. 圧縮方式を使い分ける
| 圧縮 | 特徴 | 例 |
|---|---|---|
| 可逆圧縮 | 元データへ完全に戻せる | ZIP、PNGなど |
| 非可逆圧縮 | 人が気付きにくい情報などを削り、容量を大きく減らす | JPEG、MP3など |
契約書、プログラム、数値データのように一部の欠落も許されないデータには可逆圧縮が必要です。写真・音楽・動画は、用途に応じて非可逆圧縮を利用できます。
一度強く非可逆圧縮したデータを再保存しても、失われた情報は戻りません。編集用の元データを別に保管します。
8. ストリーミングとダウンロード
| 方式 | 内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| ダウンロード | ファイルを端末へ保存してから利用する | オフライン利用しやすいが保存容量が必要 |
| プログレッシブダウンロード | 受信済み部分から再生する | 見かけはストリーミングに近い場合がある |
| ストリーミング | 受信しながら連続的に再生する | 長い動画を待たずに再生しやすい |
| ライブ配信 | 撮影・生成とほぼ同時に配信する | 遅延、回線、障害への対応が重要 |
通信速度がビットレートを下回ると、再生が途中で止まりやすくなります。アダプティブビットレート配信では、回線状態に応じて画質を切り替えます。
9. 完全ケース:社内研修動画を配信する
全国の社員へ30分の研修動画を配信します。社員はPCとスマートフォンを使い、通信環境も異なります。
確認すべき事項は次のとおりです。
- 画面上の小さな文字が読める解像度を確保する。
- 回線が遅い利用者向けに複数のビットレートを用意する。
- 音声だけに依存せず字幕を付ける。
- 動画内の重要図表には説明を加える。
- 対応ブラウザ・端末で再生テストを行う。
- 機密情報がある場合は認証、権限、保存・共有制限を設定する。
- 元動画と配信用圧縮ファイルを分けて保管する。
高画質を優先しすぎると通信負荷が増え、利用できない社員が出る可能性があります。目的と利用環境を基に品質を決めます。
10. 形式を選ぶ判断手順
- 内容は文字、写真、図形、音声、動画のどれか。
- 編集用か、配布用か、長期保存用か。
- 拡大、透過、完全復元が必要か。
- 許容できる画質・音質と容量を決める。
- 利用端末、ソフト、ブラウザの対応状況を確認する。
- ネットワーク速度と配信方法を確認する。
- アクセシビリティ、権利、個人情報を確認する。
11. よくある誤りと理由
- 解像度が高ければ常に最適と考える:容量、表示サイズ、通信、処理性能も考えます。
- JPEGは可逆圧縮と考える:一般に非可逆圧縮です。
- PNGは写真に常に最適と考える:可逆で容量が大きくなる場合があります。
- SVGは画素の集合と考える:図形をベクタで表します。
- MP4とコーデックを同じと考える:MP4はコンテナで、中の符号化方式とは別です。
- 非可逆圧縮後に元画質へ戻せると考える:削除された情報は戻りません。
- ストリーミングは端末へ一切データを受信しないと考える:再生には順次データを受信します。
12. セルフチェック
- ラスタとベクタを用途で区別したか。
- 画像・音声のデータ量でbitとbyteを換算したか。
- 可逆と非可逆のどちらが必要か。
- コーデックとコンテナを区別したか。
- 回線速度、ビットレート、端末対応を確認したか。
- 字幕、代替情報、権利・個人情報を確認したか。
理解を確認したら、第2章の練習問題と第2章の知識カードで形式と容量を判断してください。伝え方とアクセシビリティは情報デザイン、通信速度はネットワークで確認できます。
公式範囲との対応
本節は、IPA「ITパスポート試験シラバス Ver.6.5」のマルチメディア技術、マルチメディア応用に対応し、画像・音声・動画、デジタル化、ファイル形式、圧縮、コーデック、ストリーミングを扱います。