2-4 ネットワーク
ネットワーク
ネットワークは、複数の機器が共通のルールに従ってデータをやり取りする仕組みです。ITパスポートでは、用語を暗記するだけでなく、「どの装置がどこへ転送するか」「名前から接続先をどう特定するか」「用途に合う通信方式はどれか」を判断する力が求められます。
この節の目標は、社内端末がWebサービスへ接続するまでの流れを説明し、LAN・WAN、ルーター・スイッチ、DNS・DHCP・NAT、代表的なプロトコルを使い分けられるようになることです。
1. ネットワークの範囲と構成要素
| 用語 | 主な役割 | 判断のポイント |
|---|---|---|
| LAN | 建物や拠点内の機器を接続する | 家庭、学校、会社のフロアなど限られた範囲 |
| WAN | 離れた拠点のLAN同士を接続する | 通信事業者の回線などを利用する |
| スイッチ | 同じLAN内で、宛先に応じてフレームを転送する | MACアドレスを基に転送先を選ぶ |
| ルーター | 異なるネットワーク間でパケットを転送する | IPアドレスを基に次の経路を選ぶ |
| アクセスポイント | 無線端末をLANへ接続する | Wi-Fiの電波と有線LANを中継する |
| NIC | 端末をネットワークへ接続するインタフェース | 有線・無線の通信機能を持つ |
スイッチとルーターは役割が異なります。同じ社内LANの端末同士を接続する中心はスイッチ、社内LANからインターネットなど別のネットワークへ出る境界はルーターです。
2. IPアドレスから通信先を決める
| 用語 | 内容 | 典型的な利用場面 |
|---|---|---|
| IPアドレス | ネットワーク上の機器や接続先を識別する番号 | パケットの送信元・宛先を示す |
| サブネットマスク | IPアドレスのネットワーク部分と端末部分を区別する | 宛先が同一ネットワーク内かを判断する |
| デフォルトゲートウェイ | 別ネットワークへ送る際の出口 | 通常はルーターのアドレスを設定する |
| DHCP | IPアドレスなどの設定を端末へ自動配布する | 多数の端末を手作業なしで設定する |
| DNS | ドメイン名とIPアドレスを対応付ける | example.com の接続先を調べる |
| NAT | プライベートIPアドレスとグローバルIPアドレスを変換する | 複数の社内端末がインターネットへ接続する |
完全ケース:社内PCからWebサイトを開く
新しいPCを社内LANへ接続し、ブラウザでWebサイトを開く場面を考えます。
- PCはDHCPサーバからIPアドレス、サブネットマスク、デフォルトゲートウェイ、DNSサーバの情報を受け取ります。
- 利用者がドメイン名を入力すると、PCはDNSサーバへ問い合わせてWebサーバのIPアドレスを取得します。
- 接続先が社外ネットワークにあるため、PCはデータをデフォルトゲートウェイへ送ります。
- ルーターはNATで社内のプライベートIPアドレスをグローバルIPアドレスへ変換し、インターネット側へ転送します。
- HTTPSを利用する場合、通信内容を暗号化してWebサーバとやり取りします。
この流れでは、DNSがIPアドレスを「配布」するわけではありません。名前解決はDNS、端末設定の自動配布はDHCPです。
3. 通信プロトコルの役割
プロトコルは、通信する双方が守る共通の手順や形式です。
| プロトコル | 主な用途 | 覚え方 |
|---|---|---|
| HTTP / HTTPS | WebページやWeb APIの通信 | HTTPSはTLSによって暗号化する |
| SMTP | 電子メールを送信・中継する | 送信側 |
| POP | メールを端末へ取得する | 端末へダウンロードして読む用途 |
| IMAP | サーバ上のメールを管理する | 複数端末で状態を共有しやすい |
| FTP | ファイルを転送する | 認証情報やデータの保護に注意する |
| NTP | 機器の時刻を合わせる | ログ時刻の整合にも重要 |
| TCP | 到達確認や再送を行い、信頼性を重視する | Webやメールなど正確性を重視する通信 |
| UDP | 到達確認を簡略化し、速度やリアルタイム性を重視する | 音声・映像配信などで利用される |
OSI基本参照モデルは7層、TCP/IP階層モデルは4層で通信機能を整理します。試験では全ての詳細を暗記するより、IPが経路選択、TCP・UDPが端末間通信、HTTPなどがアプリケーションの規則という関係を押さえます。
4. 通信速度を計算する
通信速度は通常 bps(bit per second)、ファイル容量はB(byte)で表されます。1バイトは8ビットです。
100MBのファイルを100Mbpsの回線で送る理論上の最短時間は、次のように求めます。
- 100MBをビットへ直す:100×8=800Mbit
- 速度で割る:800Mbit÷100Mbps=8秒
実際には通信制御用のデータ、回線混雑、機器性能などがあるため、8秒より長くなるのが普通です。計算問題では、まずbitとbyteの単位をそろえます。
5. 無線・IoT通信を選ぶ
| 通信方式 | 特徴 | 向いている用途 |
|---|---|---|
| Wi-Fi | 比較的高速でLAN接続に使う | PC、スマートフォン、社内端末 |
| Bluetooth / BLE | 近距離で低消費電力 | イヤホン、ウェアラブル、センサ |
| NFC | 数cm程度の近距離通信 | ICカード、決済、機器の認証 |
| LTE / 5G | 移動体通信網を利用する | 屋外や移動中の広域通信 |
| LPWA | 低速だが長距離・低消費電力 | 少量データを送る遠隔センサ |
| メッシュWi-Fi | 複数の中継点で範囲を広げる | 広い建物や電波の届きにくい場所 |
IoTでは「最も速い方式」を選べばよいとは限りません。送信データ量、距離、電源、設置場所、通信頻度を比較します。山間部の水位センサが少量のデータを電池で長期間送るなら、低消費電力で広範囲をカバーするLPWAが候補になります。
6. よくある誤りと理由
- DNSとDHCPを混同する:DNSは名前解決、DHCPはIPアドレスなどの自動設定です。
- スイッチとルーターを同じ装置と考える:スイッチは主に同一LAN内、ルーターは異なるネットワーク間を接続します。
- HTTPSなら接続先も必ず安全だと考える:HTTPSは通信経路を暗号化しますが、サイト自体の信頼性を保証するものではありません。
- 100MBを100Mbpsで1秒とする:byteとbitの換算が必要です。
- IoT通信は速度だけで選ぶ:距離、消費電力、データ量、費用も判断条件です。
7. セルフチェック
- 宛先は同じLAN内か、ルーターを越える別ネットワークか。
- 問われているのは名前解決、設定配布、アドレス変換、経路選択のどれか。
- 通信速度のbitとデータ容量のbyteをそろえたか。
- 無線方式を距離、速度、消費電力、データ量で比較したか。
理解を確認したら、第2章の練習問題と第2章の知識カードで役割を判定してください。端末側の通信インタフェースは、コンピュータ構成要素で確認できます。
公式範囲との対応
本節は、IPA「ITパスポート試験シラバス Ver.6.5」のネットワーク方式、通信プロトコル、ネットワーク応用に対応し、LAN・WAN、接続装置、IPアドレス、DNS、DHCP、NAT、TCP/IP、無線LAN、IoT通信などを扱います。