11-1 決算整理とは
この節の目標
決算整理では、仕訳を暗記するだけでなく、何を先に直し、どの金額を使い、最終的にP/LとB/Sへどうつなげるかを判断する必要があります。
この節では、次のことができる状態を目指します。
- 決算整理が必要な理由を説明できる
- 未処理事項と期末調整を正しい順序で処理できる
- 各整理仕訳が損益計算書と貸借対照表に与える影響を判断できる
- 複数の整理事項を漏れなく処理し、自分で検算できる
対応範囲:日商簿記3級・2026年度出題区分表 最終確認日:2026年7月17日
決算整理とは
日々の取引を正しく記帳していても、決算日には次のようなズレが残ることがあります。
- 実際には入出金や取引が完了しているのに、まだ記帳されていない
- 帳簿上の資産残高と実際有高が一致しない
- 当期に支払った金額の中に翌期分が含まれている
- 当期に発生した費用がまだ支払われていない
- 商品や消耗品のうち、決算日に残っている部分がある
- 売掛金等の一部が将来回収できない可能性がある
- 固定資産の価値が使用によって減少している
これらを修正し、決算日現在の正しい財政状態と当期の正しい経営成績を求める手続が決算整理です。
決算整理の二つの目的
| 目的 | 確認すること | 最終的な書類 |
|---|---|---|
| 期末の財政状態を正しくする | 資産・負債・純資産の残高 | 貸借対照表(B/S) |
| 当期の経営成績を正しくする | 当期に対応する収益・費用 | 損益計算書(P/L) |
決算整理仕訳は、通常、一方がB/S科目、もう一方がP/L科目になることが多くあります。たとえば翌期分の保険料を前払保険料へ振り替えると、費用が減少し、資産が増加します。
決算整理の基本順序
複数の整理事項がある問題では、次の順序で処理すると、誤った残高を使う事故を防げます。
ステップ1:誤記・漏記・未処理事項を先に修正する
- 誤った勘定科目や金額の訂正
- 売掛金の回収未記帳
- 仕入や売上の未記帳
- 仮払金・仮受金の内容確定
- 現金過不足の原因判明分
これらは、売掛金、仕入、現金などの基礎となる残高そのものを変えるため、先に処理します。
ステップ2:期末時点の資産・費用を調整する
- 商品棚卸と売上原価
- 貸倒引当金
- 減価償却
- 未使用の消耗品を貯蔵品へ振替
ステップ3:収益・費用の期間配分を行う
- 前払費用・前受収益
- 未払費用・未収収益
第10章「見越し・繰延べ」で判断方法を復習できます。
ステップ4:税金等を整理する
- 仮払消費税と仮受消費税の精算
- 法人税、住民税及び事業税の計上
ステップ5:整理後残高と純利益を確認する
すべての整理仕訳を反映し、第12章「試算表と精算表」でP/L・B/Sと当期純利益へつなげます。
判断の共通フォーマット
決算整理事項は、毎回次の5点を確認します。
- 題意:何が未処理・未調整なのか
- 基準残高:整理前のどの科目を使うのか
- 整理仕訳:借方・貸方は何か
- 整理後残高:加算・減算後はいくらか
- 行き先:P/LかB/Sか
| 整理事項 | 整理前の問題 | 主な整理後科目 | P/Lへの影響 | B/Sへの影響 |
|---|---|---|---|---|
| 期末商品棚卸 | 仕入に未販売分が含まれる | 売上原価・繰越商品 | 売上原価を修正 | 商品を資産計上 |
| 貸倒引当金 | 債権が全額回収可能に見える | 貸倒引当金繰入・貸倒引当金 | 費用を計上 | 債権の控除額を計上 |
| 減価償却 | 固定資産の価値減少が未反映 | 減価償却費・減価償却累計額 | 費用を計上 | 資産の控除額を計上 |
| 貯蔵品棚卸 | 未使用分まで費用になっている | 消耗品費・貯蔵品 | 費用を修正 | 未使用分を資産計上 |
| 費用の繰延べ | 翌期分まで当期費用になっている | 前払費用 | 費用を減額 | 資産を計上 |
| 費用の見越し | 当期分がまだ費用になっていない | 未払費用 | 費用を追加 | 負債を計上 |
中型総合例:処理順序を確認する
青葉商事株式会社の決算整理事項は次のとおりです。
- 売掛金1,240,000円のうち40,000円は普通預金へ入金済みだが未記帳である
- 修正後売掛金に2%の貸倒引当金を設定する。既存残高は9,000円
- 期首商品180,000円、仕入2,760,000円、期末商品215,000円である
- 備品の減価償却費は240,000円である
- 消耗品費80,000円のうち未使用額20,000円がある
- 保険料120,000円のうち翌期分40,000円が含まれる
- 当期分給料30,000円が未払いである
正しい処理順序
① 未記帳の売掛金回収を修正
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 40,000 | 売掛金 | 40,000 |
売掛金は1,240,000-40,000=1,200,000円になります。
② 修正後売掛金で貸倒引当金を計算
- 必要額:1,200,000×2%=24,000
- 繰入額:24,000-9,000=15,000
③ 商品、減価償却、貯蔵品、繰延べ、見越しを処理
| 項目 | 整理後の主な金額 |
|---|---|
| 売上原価 | 180,000+2,760,000-215,000=2,725,000 |
| 貸倒引当金繰入 | 15,000 |
| 減価償却費 | 240,000 |
| 消耗品費 | 80,000-20,000=60,000 |
| 貯蔵品 | 20,000 |
| 保険料 | 120,000-40,000=80,000 |
| 前払保険料 | 40,000 |
| 給料追加額 | 30,000 |
| 未払給料 | 30,000 |
この例で重要なのは、貸倒引当金を最初の1,240,000円で計算しないことです。未処理事項を修正した後の1,200,000円を使います。
よくある誤り
| 誤り | 原因 | 修正方法 |
|---|---|---|
| 整理事項を上から無条件に処理する | 前後関係を見ていない | 残高を変える未処理事項を先に処理 |
| 仕訳を書かずに金額だけ計算する | 借貸の片側を落とす | すべての事項を先に仕訳化 |
| 費用だけを修正し、資産・負債を記入しない | P/Lだけを見ている | 相手科目のB/S影響も確認 |
| 同じ金額を複数回調整する | 整理済み・未整理の区別がない | 各事項にチェック印を付ける |
| 最後の純利益だけ合わせる | 科目分類の誤りを見逃す | 整理欄、P/L、B/Sを別々に検算 |
決算整理チェックリスト
- 誤記・漏記・未処理事項を先に直した
- 貸倒引当金は修正後の債権残高で計算した
- 期首商品・当期仕入・期末商品を区別した
- 未使用消耗品は「貯蔵品」とした
- 前払・前受・未払・未収の期間を確認した
- すべての整理仕訳が借貸同額になっている
- 整理後残高をP/LとB/Sへ正しく分類した
- 純利益への増減方向を確認した
参考資料
※公式資料は出題範囲と必要能力の確認に使用し、本ページの会社名、金額、表および説明は独自に作成しています。
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