11-2 売上原価の計算
この節の目標
- 売上原価の公式がなぜ成り立つか説明できる
- 未処理仕入を修正してから売上原価を計算できる
- 2本の決算整理仕訳を仕入勘定へ反映できる
- 売上原価と期末商品のP/L・B/S上の位置を判断できる
対応範囲:日商簿記3級・2026年度出題区分表 最終確認日:2026年7月17日
売上原価とは
売上原価は、当期に販売した商品の取得原価です。当期に仕入れた商品がすべて売れたとは限らないため、仕入勘定の残高をそのまま費用にすることはできません。
商品全体の流れは次のとおりです。
期首商品+当期仕入=当期に販売可能だった商品
このうち、決算日に残っている期末商品を除いた部分が、当期に売れた商品の原価です。
売上原価=期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高
| 項目 | 意味 | 決算後の扱い |
|---|---|---|
| 期首商品 | 前期から持ち越した商品 | 当期の売上原価に含める |
| 当期仕入 | 当期に購入した商品 | 売れた分と残った分に分ける |
| 期末商品 | 決算日に残っている商品 | 翌期へ繰り越す資産 |
仕入勘定で売上原価を計算する理由
三分法では、期中の商品購入を「仕入」で処理します。決算時に次の2本の仕訳を行うことで、仕入勘定の残高を売上原価に変えます。
1. 期首商品を当期の原価へ加える
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入 | 期首商品 | 繰越商品 | 期首商品 |
前期から持ち越した商品が当期に販売可能だったため、当期の原価へ加えます。
2. 期末商品を当期の原価から除く
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 繰越商品 | 期末商品 | 仕入 | 期末商品 |
決算日に残っている商品はまだ売れていないため、当期の費用から除き、資産として翌期へ繰り越します。
完全例
決算整理前の残高と棚卸結果は次のとおりです。
- 繰越商品:180,000円
- 仕入:2,760,000円
- 期末商品棚卸高:215,000円
整理仕訳
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入 | 180,000 | 繰越商品 | 180,000 |
| 繰越商品 | 215,000 | 仕入 | 215,000 |
仕入勘定の残高計算
| 計算要素 | 増減 | 金額 |
|---|---|---|
| 決算整理前の仕入残高 | + | 2,760,000 |
| 期首商品の振替 | + | 180,000 |
| 期末商品の振替 | - | 215,000 |
| 整理後の仕入残高(売上原価) | 2,725,000 |
仕入勘定では、借方の2,760,000円と180,000円から、貸方の215,000円を差し引いた2,725,000円が借方残高として残ります。
売上原価は次のとおりです。
2,760,000+180,000-215,000=2,725,000円
決算後は、次の二つが同時に成立します。
- P/L:仕入勘定2,725,000円が売上原価
- B/S:繰越商品215,000円が商品資産
未処理仕入がある変形例
決算日に、商品40,000円を掛けで仕入れていたが未記帳であることが判明しました。期首商品180,000円、仕入残高2,760,000円、期末商品215,000円です。
ステップ1:未処理仕入を先に修正
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入 | 40,000 | 買掛金 | 40,000 |
修正後の当期仕入は2,800,000円です。
ステップ2:売上原価を計算
180,000+2,800,000-215,000=2,765,000円
未処理仕入を直さず2,760,000円を使うと、売上原価と買掛金がともに40,000円過少になります。
純利益への影響
他の条件が同じなら、期末商品が増えるほど売上原価は減少し、当期純利益は増加します。
| 変化 | 売上原価 | 当期純利益 | 商品資産 |
|---|---|---|---|
| 期末商品が増える | 減少 | 増加 | 増加 |
| 期末商品が減る | 増加 | 減少 | 減少 |
例えば期末商品が215,000円から235,000円へ20,000円増えれば、売上原価は20,000円減少し、税金等を考慮しない場合の当期純利益は20,000円増加します。
よくある誤り
| 誤り | なぜ誤るか | 検算方法 |
|---|---|---|
| 当期仕入-期末商品だけで計算する | 期首商品を忘れている | 「前期からの商品も販売可能だった」と確認 |
| 期末商品を加算する | 売れ残りを費用に含めている | 期末商品はB/S資産と確認 |
| 「しーくり」を逆にする | 口诀だけで方向を判断 | 期首商品を資産から費用へ移すと考える |
| 未処理仕入を後回しにする | 修正前仕入で計算してしまう | 未処理事項を先に処理 |
| 売上高から期末商品を引く | 売価と原価を混同 | 売上原価は原価情報だけで計算 |
自己チェック
- 期首商品を加えたか
- 未処理仕入・返品を先に修正したか
- 期末商品を差し引いたか
- 整理後の仕入残高と公式の結果が一致するか
- 期末商品がB/S借方に残っているか
次の学習
売上原価の金額は、第12章の精算表で損益計算書欄へ記入します。