11-3 貸倒引当金

この節の目標

  • 貸倒引当金を設定する理由を説明できる
  • 修正後の対象債権残高から必要額を計算できる
  • 既存残高と比較して繰入・戻入を判断できる
  • P/LとB/Sへの影響を確認できる

対応範囲:日商簿記3級・2026年度出題区分表 最終確認日:2026年7月17日

貸倒れと貸倒引当金

得意先の倒産などにより、売掛金や受取手形などの債権を回収できなくなることを貸倒れといいます。

決算日時点でまだ貸倒れが確定していなくても、期末債権のうち将来回収できないと見込まれる金額を見積もり、当期の費用として計上します。この見積額が貸倒引当金です。

貸倒引当金は負債ではありません。売掛金等の帳簿価額から控除する資産の評価勘定です。

差額補充法の四ステップ

ステップ1:対象債権の期末残高を修正する

未記帳の回収、売上返品、誤記などがある場合は先に修正します。

ステップ2:必要額を計算する

修正後対象債権残高×設定率=貸倒引当金必要額

ステップ3:既存の貸方残高と比較する

  • 必要額>既存残高:不足額を貸倒引当金繰入
  • 必要額<既存残高:超過額を貸倒引当金戻入

ステップ4:整理後残高を確認する

整理後の貸倒引当金残高が必要額と一致しているか確認します。

基本例:繰入になる場合

売掛金の期末残高1,000,000円に対して2%を設定します。貸倒引当金の既存貸方残高は5,000円です。

  1. 必要額:1,000,000×2%=20,000
  2. 不足額:20,000-5,000=15,000
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
貸倒引当金繰入 15,000 貸倒引当金 15,000

整理後の貸倒引当金残高は5,000+15,000=20,000円です。

変形例:未記帳の回収がある場合

決算整理前の売掛金は1,240,000円ですが、このうち40,000円は普通預金へ入金済みで未記帳でした。修正後残高に2%を設定し、既存の貸倒引当金は9,000円です。

1. 未記帳回収を修正

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
普通預金 40,000 売掛金 40,000

修正後売掛金:1,240,000-40,000=1,200,000円

2. 必要額と繰入額

  • 必要額:1,200,000×2%=24,000
  • 繰入額:24,000-9,000=15,000
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
貸倒引当金繰入 15,000 貸倒引当金 15,000

修正前の1,240,000円で計算すると必要額を800円過大にするため、必ず未処理事項を先に直します。

戻入になる場合

対象債権1,000,000円、設定率2%、既存貸方残高25,000円の場合、必要額は20,000円です。5,000円多いため、超過額を減らします。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
貸倒引当金 5,000 貸倒引当金戻入 5,000

整理後残高は25,000-5,000=20,000円です。

P/LとB/Sへの影響

科目 性質 記載先
貸倒引当金繰入 費用 P/L借方
貸倒引当金戻入 収益 P/L貸方
貸倒引当金 資産の評価勘定 B/Sで売掛金等から控除

例として売掛金1,200,000円、貸倒引当金24,000円なら、回収可能額の目安は1,176,000円です。

1,200,000-24,000=1,176,000円

よくある誤り

誤り 原因 正しい確認
既存残高を引かず必要額全額を繰り入れる 差額補充法を無視 必要額-既存貸方残高
修正前売掛金で計算する 未処理事項を後回し 債権残高を先に確定
貸倒引当金を負債と考える 名称だけで判断 資産の控除科目と理解
設定率を繰入額に直接掛ける 必要額と追加額を混同 必要額を求めてから差額計算
既存残高が多いのに繰入する 大小比較をしていない 必要額と残高を並べる

自己チェック

  • 対象となる債権残高は修正済みか
  • 設定率を正しい残高に掛けたか
  • 既存残高は貸方残高か
  • 繰入または戻入後の残高が必要額と一致するか
  • P/L費用・収益とB/S控除額を区別したか

次の学習

貸倒引当金は、第12章の精算表ではB/S貸方側の控除科目として扱います。

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