2-1 保険の基礎と関連法規
この節でできるようになること
- 保険で備えるリスクと、貯蓄・公的保障で対応する部分を分けられる。
- 必要保障額を「将来支出-将来収入-現在資産」で計算できる。
- 告知義務、クーリング・オフ、責任準備金、契約者保護機構を区別できる。
- 保障額だけでなく、保障期間・免責・更新条件・解約返戻金を確認できる。
1. リスク管理の順序
保険商品を先に選ぶのではなく、次の順序で考えます。
- 家族、収入、資産、負債を確認する。
- 死亡、病気、事故、介護、賠償などの損失を洗い出す。
- 公的保障、勤務先保障、預貯金で補える金額を確認する。
- 不足分だけを民間保険で補う。
- 家族構成や資産状況の変化に応じて見直す。
2. 必要保障額積み上げ方式
必要保障額の基本式は次のとおりです。
必要保障額=遺族の将来支出-遺族の将来収入-現在の金融資産
青葉直人さんの死亡後に見込まれる支出が4,500万円、遺族年金・配偶者収入・死亡退職金等が2,500万円、現在金融資産が500万円なら、
4,500万円-2,500万円-500万円=1,500万円
この1,500万円が死亡保障の目安です。住宅ローンに団体信用生命保険が付いている場合、死亡後に消える住宅ローン残高を支出へ二重計上しないようにします。
3. 生命保険商品の基本
| 商品 | 保障期間 | 貯蓄性 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 定期保険 | 一定期間 | 一般に低い | 子育て期など大きな一時的保障 |
| 終身保険 | 一生涯 | あり | 葬儀・相続資金など長期保障 |
| 養老保険 | 一定期間 | あり | 死亡保障と満期保険金 |
| 収入保障保険 | 一定期間 | 一般に低い | 死亡後の生活費を年金形式で補う |
| 変額保険 | 商品による | 運用実績で変動 | 特別勘定による運用と保障 |
定期保険は満期保険金がなく、終身保険は死亡保障が一生涯続きます。養老保険は死亡保険金と満期保険金が同額となる設計が基本です。
4. 保険料と解約返戻金
同じ保障額なら、一般に保障期間が長いほど、被保険者年齢が高いほど、保険料は高くなりやすいです。解約返戻金は払込保険料総額を下回る場合があり、早期解約では特に元本割れしやすくなります。
「払込保険料360万円、解約返戻金300万円」であれば、単純な差額は60万円の元本割れです。保険は預金ではなく、保障コストが含まれています。
5. 契約時のルール
告知義務
保険会社が求める健康状態や職業等について、事実を正確に告知します。重要事項を故意または重大な過失で告知しない場合、契約解除や保険金不払いにつながることがあります。
クーリング・オフ
原則として申込日またはクーリング・オフに関する書面を受け取った日のいずれか遅い日から8日以内に、書面または電磁的記録で申し出ます。医師の診査を受けた場合など対象外があります。
契約者保護機構
生命保険会社が破綻した場合、補償対象契約は原則として破綻時点の責任準備金等の90%まで補償されます。死亡保険金額そのものの90%が保証されるわけではありません。
6. 見直しの判断
保険見直しでは、古い契約を解約してから新契約へ申し込むのではなく、新契約の成立・保障開始を確認します。年齢上昇や健康状態の変化で新契約に加入できない場合があるためです。
7. よくある誤り
- 必要保障額から遺族年金や金融資産を差し引かない。
- 団信で消える住宅ローンを必要保障額へ二重計上する。
- 定期保険に満期保険金があるとする。
- 責任準備金の90%を死亡保険金額の90%と読み替える。
- 電話だけでクーリング・オフできるとする。
8. 自己点検
家族状況、支出、収入、公的保障、資産、保障期間、免責、解約返戻金の順に確認します。