1-6 資金計画(住宅ローン)
この節でできるようになること
- 住宅取得に必要な総資金を、物件価格だけでなく諸費用・予備資金まで含めて考えられる
- 元利均等返済と元金均等返済を、返済額・総利息・初期負担で比較できる
- 固定金利・変動金利を、金利上昇リスクと家計余力から判断できる
- 繰上返済の期間短縮型と返済額軽減型を使い分けられる
- 住宅資金と教育資金が重なる家庭の資金不足を発見できる
制度基準日:2026年4月1日現在。住宅ローン控除、フラット35、教育ローン等の金利・限度額・適用条件は変更されます。試験では法令基準日と問題文の条件を優先してください。
1. 住宅購入では物件価格以外の資金も必要
住宅取得資金は、次のように分けて考えます。
- 土地・建物の購入代金
- 仲介手数料
- 登記費用
- 住宅ローン事務手数料・保証料
- 火災保険・地震保険
- 不動産取得税など
- 引越し・家具・修繕費
- 購入後も残す生活予備資金
ケース
Aさんは預金600万円をすべて頭金へ使い、3,500万円の住宅を購入しようとしています。しかし、諸費用250万円、引越し費用50万円、生活予備資金180万円が必要です。
頭金に使える上限は、
600万円 - 250万円 - 50万円 - 180万円 = 120万円
です。
預金600万円を全額頭金にすると、購入直後の病気・失業・修繕に対応できません。頭金を増やすことだけが正解ではなく、購入後の流動性を残す必要があります。
2. 返済負担率だけでなく将来の支出を見る
金融機関が融資可能と判断する金額と、家計が安全に返せる金額は同じではありません。
返済負担率は一般に、
年間返済額 ÷ 年収 × 100
で確認します。
計算例
年収600万円、年間住宅ローン返済額120万円なら、
120万円 ÷ 600万円 × 100 = 20%
です。
ただし、同じ20%でも、子ども2人の大学進学が近い家庭と、教育費負担がない家庭では余裕が異なります。キャッシュフロー表で将来の資産残高まで確認します。
3. 元利均等返済と元金均等返済
| 項目 | 元利均等返済 | 元金均等返済 |
|---|---|---|
| 毎回返済額 | 原則一定 | 当初が多く、徐々に減る |
| 元金返済額 | 当初少なく、徐々に増える | 毎回一定 |
| 総利息 | 同条件なら多くなりやすい | 同条件なら少なくなりやすい |
| 当初負担 | 比較的小さい | 比較的大きい |
| 家計管理 | しやすい | 初期返済に余力が必要 |
4. 元金均等返済の計算
借入額2,000万円、返済期間20年、毎月返済とします。利息を除く毎月の元金返済額は、
20,000,000円 ÷(20年 × 12か月)
= 20,000,000円 ÷ 240回
= 約83,333円/月
初年度に返済する元金部分は、
20,000,000円 ÷ 240回 × 12回 = 1,000,000円
です。
実際の毎月返済額には、残高に応じた利息が加わります。残高が減るにつれて利息も減るため、元金均等返済の毎月返済額は徐々に少なくなります。
よくある誤り
- 「元金均等」を「元金と利息の合計が一定」と読む
- 初年度返済額を元金部分だけで答える
- 元利均等と元金均等で、同条件なら総利息が同じと考える
5. 元利均等返済の考え方
元利均等返済では、元金と利息を合わせた毎回返済額が原則一定です。
返済初期は残高が大きいため、返済額に占める利息の割合が大きく、元金の減り方は遅くなります。後半は残高が減るため、利息部分が小さくなり、元金部分が増えます。
試験で見るポイント
- 毎回返済額:元利均等が一定、元金均等は減少
- 総利息:同じ借入額・金利・期間なら元金均等が少なくなりやすい
- 初回返済額:元金均等の方が大きくなりやすい
6. 固定金利と変動金利
| 金利タイプ | メリット | リスク |
|---|---|---|
| 全期間固定 | 完済まで返済計画を立てやすい | 変動金利より当初金利が高い場合がある |
| 固定金利期間選択型 | 一定期間は返済額を固定できる | 固定期間終了後の金利・返済額が変わる |
| 変動金利 | 当初金利が低い場合がある | 金利上昇で利息・返済負担が増える |
ケース:変動金利を選べる家計か
Bさんの返済額は現在月10万円ですが、毎月の家計余力は1万円しかありません。金利上昇により返済負担が増えると、すぐ赤字になります。
変動金利を選ぶ場合は、
- 金利上昇時の返済額
- 教育費など将来支出
- いつでも繰上返済できる余裕資金
- 収入減少時の耐久力
を確認します。現在の金利が低いことだけで選びません。
7. フラット35
フラット35は、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携する、全期間固定金利型の住宅ローンです。
代表的な特徴は次のとおりです。
- 借入時に返済終了までの金利が確定する
- 一定の住宅技術基準等がある
- 保証人や保証料が不要とされる仕組み
- 融資率、住宅性能、子育て世帯等に応じた金利引下げ制度が設けられる場合がある
金利、融資率、年齢、床面積、技術基準などは改定されるため、具体的数字は年度の公式条件を確認します。
8. 繰上返済
繰上返済は、毎月返済とは別に元金の一部を早く返す方法です。元金が早く減るため、将来の利息負担を軽減できます。
| 方法 | 返済期間 | 毎月返済額 | 利息軽減効果 |
|---|---|---|---|
| 期間短縮型 | 短くなる | 原則変わらない | 同額なら大きくなりやすい |
| 返済額軽減型 | 原則変わらない | 少なくなる | 期間短縮型より小さくなりやすい |
使い分け
- 総利息をできるだけ減らしたい:期間短縮型
- 毎月の家計負担を下げたい:返済額軽減型
注意
繰上返済後に預金がほとんど残らない場合、病気や失業時に高金利の借入れが必要になることがあります。利息軽減額と生活予備資金を比較します。
9. 借換え
現在の住宅ローンを、新しい住宅ローンで返済し直すことを借換えといいます。
借換えの効果は、金利差だけでなく、次の費用を含めて判断します。
- 融資手数料
- 保証料
- 抵当権抹消・設定の登記費用
- 司法書士報酬
- 印紙税等
判断式
借換えによる将来返済額の減少 - 借換え諸費用
が十分にプラスかを確認します。
10. 団体信用生命保険
団体信用生命保険(団信)は、住宅ローンの債務者が死亡・高度障害等の所定状態になった場合、保険金でローン残高を返済する仕組みです。
保障範囲は契約により異なります。がん、三大疾病、就業不能等の特約は、対象状態、待期期間、免責条件を約款で確認します。
「病気になればすべての住宅ローンが必ずゼロになる」という説明は誤りです。
11. 住宅ローン控除との関係
住宅ローン控除は所得税の税額控除であり、借入方法だけでなく、入居年、住宅性能、床面積、所得、借入期間などの条件があります。
制度は年度改正の影響を強く受けるため、この節では固定数字を永久ルールとして扱いません。税制の詳細は次の教材で確認します。
繰上返済で返済期間が要件を下回ると、住宅ローン控除へ影響する場合があります。利息だけでなく税制も確認します。
12. 教育資金との重なり
住宅ローン返済中に教育費のピークが来る家庭は多くあります。
総合ケース
- 住宅ローン年間返済:120万円
- 現在の年間貯蓄:80万円
- 5年後から大学費用:年間150万円
- 5年後に見込む年間貯蓄:90万円
大学費用が始まると、単純計算で、
90万円 - 150万円 = 60万円の年間不足
が生じます。住宅購入時に返済可能でも、教育期に資金不足になるため、購入額、返済期間、教育積立、奨学金・教育ローンの利用時期を事前に設計します。
教育ローンや奨学金の限度額、金利、所得要件は変更されるため、日本政策金融公庫や日本学生支援機構の最新情報を確認します。
13. 住宅ローン問題の判断手順
- 物件価格と諸費用を分ける
- 頭金を出した後の予備資金を確認する
- 借入額、金利、期間、返済方法を確認する
- 毎月返済額だけでなく総利息を比較する
- 金利上昇時の負担を確認する
- 教育・退職まで含むキャッシュフローを確認する
- 繰上返済・借換えの諸費用と税制を確認する
14. 試験で狙われる誤答パターン
- 元利均等と元金均等の特徴を逆にする
- 変動金利なら返済額が絶対に変わらないとする
- 期間短縮型と返済額軽減型の効果を逆にする
- 借換え費用を無視する
- 預金全額を頭金に使うことを常に有利とする
- 団信の保障を契約条件なしに断定する
- 住宅ローン控除を恒久・無条件の制度とする
15. 学習のつながり
- 前の教材:企業年金と個人年金
- 章の最初へ:FPの基礎と関連法規
- 関連教材:ライフプランニングの手法
- 対応問題:第1章の練習問題
- 復習カード:第1章の知識カード
16. 公式確認先
- 住宅金融支援機構「フラット35」
- 国税庁「住宅借入金等特別控除」
- 日本政策金融公庫「国の教育ローン」
- 日本学生支援機構
金利・限度額・税制期限は年度敏感情報です。試験年度の公式資料を確認してください。