3-3 仕訳帳から元帳・試算表へ

仕訳は記録の入口であり、ゴールではない

日々の取引は、次の順序で整理されます。

取引 → 仕訳帳 → 総勘定元帳 → 試算表 → 決算整理 → 財務諸表

  • 仕訳帳:すべての取引を日付順に記録する主要簿
  • 総勘定元帳:勘定科目ごとに増減と残高を集計する主要簿
  • 試算表:元帳の合計や残高を集め、借方と貸方の一致を確認する表

このページでは、青葉文具株式会社の4月の仕訳を、仕訳帳から総勘定元帳、残高試算表までつなげます。

仕訳帳へ日付順に記録する

前ページで完成させた仕訳を、日付順に並べます。

金額単位:円

日付 借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
4/1 普通預金 500,000 資本金 500,000
4/3 備品 120,000 普通預金 20,000
未払金 100,000
4/5 前払金 30,000 普通預金 30,000
4/8 仕入 180,000 前払金 30,000
普通預金 50,000
買掛金 100,000
4/12 普通預金 40,000 売上 240,000
売掛金 200,000
4/20 普通預金 120,000 売掛金 120,000
4/25 支払家賃 60,000 普通預金 60,000

仕訳帳を見ると「いつ、どのような取引が起きたか」が分かります。しかし、普通預金や売掛金の現在残高を確認するには、同じ科目を集め直す必要があります。そのために総勘定元帳へ転記します。

転記の基本ルール

転記とは、仕訳帳の各科目と金額を、総勘定元帳の該当する勘定へ移す作業です。

1つの仕訳に出てくる科目は、すべてそれぞれの元帳へ転記します。

例:4月20日の売掛金回収

仕訳は次のとおりです。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
普通預金 120,000 売掛金 120,000

転記先は2か所です。

  • 普通預金勘定の借方へ120,000円
  • 売掛金勘定の貸方へ120,000円

相手勘定欄には、反対側にある科目を記入します。

普通預金勘定・日付 相手勘定 借方 貸方
4/20 売掛金 120,000
売掛金勘定・日付 相手勘定 借方 貸方
4/20 普通預金 120,000

複合仕訳の転記

例:4月8日の商品仕入

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
仕入 180,000 前払金 30,000
普通預金 50,000
買掛金 100,000

この仕訳は4つの元帳へ転記します。

  • 仕入勘定の借方へ180,000円
  • 前払金勘定の貸方へ30,000円
  • 普通預金勘定の貸方へ50,000円
  • 買掛金勘定の貸方へ100,000円

仕入勘定から見ると相手側に3科目あるため、相手勘定欄はまとめて諸口と表示できます。

仕入勘定・日付 相手勘定 借方 貸方
4/8 諸口 180,000

一方、前払金、普通預金、買掛金から見た借方側は仕入だけなので、各元帳の相手勘定は仕入です。

複合仕訳では、科目数が多くても転記を省略しません。仕訳に現れたすべての科目へ記録します。

普通預金勘定を作る

普通預金に関係する仕訳だけを日付順に集めます。

金額単位:円

日付 相手勘定 借方 貸方 借方残高
4/1 資本金 500,000 500,000
4/3 備品 20,000 480,000
4/5 前払金 30,000 450,000
4/8 仕入 50,000 400,000
4/12 売上 40,000 440,000
4/20 売掛金 120,000 560,000
4/25 支払家賃 60,000 500,000

普通預金は資産なので、借方記入は増加、貸方記入は減少です。

500,000円 − 20,000円 − 30,000円 − 50,000円 + 40,000円 + 120,000円 − 60,000円 = 500,000円

4月末の普通預金残高は借方500,000円です。

売掛金勘定を作る

日付 相手勘定 借方 貸方 借方残高
4/12 売上 200,000 200,000
4/20 普通預金 120,000 80,000
  • 4月12日:掛売上により売掛金が200,000円増加
  • 4月20日:120,000円を回収して売掛金が減少

200,000円 − 120,000円 = 80,000円

4月末にまだ回収していない金額は80,000円です。

前払金勘定は残高ゼロになる

日付 相手勘定 借方 貸方 残高
4/5 普通預金 30,000 借方30,000
4/8 仕入 30,000 0

4月5日に商品を受け取る権利が生じ、4月8日に商品を受け取って前払金を全額使用しました。そのため、4月末残高はありません。

残高がゼロでも、取引履歴は元帳に残ります。

その他の勘定残高

勘定科目 借方記入合計 貸方記入合計 4月末残高
備品 120,000 0 借方120,000
未払金 0 100,000 貸方100,000
仕入 180,000 0 借方180,000
買掛金 0 100,000 貸方100,000
売上 0 240,000 貸方240,000
支払家賃 60,000 0 借方60,000
資本金 0 500,000 貸方500,000

元帳残高から残高試算表を作る

各勘定の4月末残高を集めます。残高がゼロの前払金は、残高試算表には金額がありません。

金額単位:円

勘定科目 借方残高 貸方残高
普通預金 500,000
売掛金 80,000
備品 120,000
未払金 100,000
買掛金 100,000
資本金 500,000
売上 240,000
仕入 180,000
支払家賃 60,000
合計 940,000 940,000

借方残高合計と貸方残高合計は940,000円で一致します。

なぜ一致するのか

すべての仕訳で借方合計と貸方合計が一致し、それを正しく各元帳へ転記して集計すれば、試算表でも借方と貸方が一致します。

ただし、一致しているからといって、すべての記録が必ず正しいとは限りません。

試算表で発見しやすい誤り

  • 仕訳の片側だけを転記した
  • 借方と貸方で異なる金額を転記した
  • 複合仕訳の一部科目を転記し忘れた
  • 元帳の合計や残高計算を誤った
  • 試算表への転記金額を誤った

試算表の一致だけでは発見できない誤り

1. 取引全体を記録していない

借方と貸方の両方が存在しないため、試算表の差額は生じません。

2. 借方と貸方を完全に逆にした

両側の金額は同じなので、合計は一致します。

3. 両側へ同じ誤った金額を記入した

本来120,000円の取引を借方・貸方とも12,000円とすれば、合計だけは一致します。

4. 金額は正しいが勘定科目を誤った

未払金を買掛金へ誤って記録しても、借貸の金額は一致します。

試算表は重要な検算手段ですが、取引内容と勘定科目の正しさまで自動的に保証するものではありません。

転記ミスの診断手順

試算表が一致しない場合は、次の順序で確認します。

  1. 試算表の借方合計と貸方合計を再計算する
  2. 各元帳の合計と残高を再計算する
  3. 元帳残高が試算表の正しい側へ移されているか確認する
  4. 仕訳帳の各科目がすべて元帳へ転記されているか確認する
  5. 複合仕訳の一部を落としていないか確認する
  6. 日付と金額を仕訳帳と元帳で照合する

差額を手掛かりにする

たとえば、借方と貸方の差額が30,000円なら、30,000円の転記漏れや、30,000円を反対側へ記入した可能性を確認します。

ただし、差額と同額の誤りが必ず1件だけあるとは限りません。複数の誤りが相殺している場合もあります。

補助簿との関係

仕訳帳と総勘定元帳は主要簿です。取引の詳細を管理するため、必要に応じて補助簿も使います。

補助簿 管理する内容 関連章
現金出納帳 現金の入出金 第4章
当座預金出納帳 当座預金の入出金 第4章
仕入帳・売上帳 商品仕入・商品売上の明細 第5章
商品有高帳 商品別の数量・原価・残高 第5章
売掛金元帳 得意先別の売掛金残高 第6章
買掛金元帳 仕入先別の買掛金残高 第6章

補助簿は主要簿の代わりではなく、総勘定元帳だけでは分からない内訳を補います。

この章の完成チェック

次の作業を、自分で順番にできるか確認してください。

  1. 取引文を会計上の変化へ分解する
  2. 勘定科目を選ぶ
  3. 5要素と増減を判断する
  4. 借方・貸方と金額を決める
  5. 借方合計と貸方合計を確認する
  6. 仕訳帳へ日付順に記録する
  7. すべての科目を総勘定元帳へ転記する
  8. 各勘定の残高を計算する
  9. 残高を試算表へ集める
  10. 不一致や科目誤りを点検する

この流れを身につけると、日商簿記3級第1問の仕訳だけでなく、補助簿、試算表、決算整理、財務諸表の問題へ進む土台ができます。

試算表の3種類と精算表の作成は、第12章「試算表と精算表」で詳しく扱います。第3章の練習問題では、科目選択、複合仕訳、転記、残高試算表まで確認してください。


適用年度: 2026年度

最終確認日: 2026年7月18日

主な確認資料: 日本商工会議所「簿記検定試験出題区分表(2022年度適用、2026年度も適用)」「商業簿記標準・許容勘定科目表」「簿記3級サンプル問題」

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