6-2 遺言と遺留分
この節でできるようになること
- 自筆証書、公正証書、秘密証書遺言の方式と検認を比較できる。
- 財産目録をパソコン作成できる条件を説明できる。
- 遺留分権利者と個別的遺留分を計算できる。
- 遺留分侵害額請求が金銭請求であることを判断できる。
1. 遺言の優先と限界
遺言による財産処分は法定相続分より優先します。ただし、兄弟姉妹以外の一定の法定相続人には遺留分が保障されます。遺言があるから法定相続人の権利が全て消えるわけではありません。
2. 普通方式遺言の比較
| 種類 | 本文作成 | 証人 | 検認 |
|---|---|---|---|
| 自筆証書 | 本人が全文・日付・氏名を自書し押印 | 不要 | 原則必要 |
| 公正証書 | 公証人が作成 | 2人以上 | 不要 |
| 秘密証書 | 内容を秘密にして存在を証明 | 2人以上 | 必要 |
自筆証書遺言の財産目録はパソコン作成や通帳コピー等を添付できますが、各ページに署名押印が必要です。法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用した遺言書は家庭裁判所の検認が不要です。
3. 遺留分権利者
配偶者、子、直系尊属に遺留分があります。兄弟姉妹と甥・姪にはありません。
- 直系尊属だけが相続人:遺留分全体は相続財産の1/3。
- それ以外:遺留分全体は1/2。
個別的遺留分は「遺留分全体×その人の法定相続分」です。
青葉家で配偶者花子と子の系統が相続人なら、花子の個別的遺留分は1/2×1/2=1/4、由美は1/2×1/4=1/8、美紀と蓮はそれぞれ1/2×1/8=1/16です。
4. 遺留分侵害額請求
遺留分を侵害された権利者は、受遺者や受贈者に金銭の支払を請求します。特定財産の共有持分が当然に戻る制度ではありません。
請求権には、相続開始と侵害贈与・遺贈を知った時から1年、相続開始から10年という期間制限があります。
5. 遺言執行と遺産分割
遺言で遺言執行者を指定できます。遺言と異なる分割を相続人全員と受遺者等の合意で行える場合がありますが、税務・登記への影響も確認が必要です。
6. 青葉家の個別的遺留分
| 相続人 | 法定相続分 | 個別的遺留分 |
|---|---|---|
| 花子 | 1/2 | 1/2×1/2=1/4 |
| 由美 | 1/4 | 1/2×1/4=1/8 |
| 美紀 | 1/8 | 1/2×1/8=1/16 |
| 蓮 | 1/8 | 1/2×1/8=1/16 |
遺留分全体1/2を相続人の人数4人で均等に分けるのではなく、各人の法定相続分を掛けます。代襲相続人も、自分の法定相続分に対応する遺留分を持ちます。
期限を二段階で確認する
遺留分侵害額請求は、相続開始と侵害を知った時から1年以内に行使しなければ時効により消滅します。また、知らなくても相続開始から10年で消滅します。遺言書の検認期限と遺留分請求期限を混同しないようにします。
証人になれない人
未成年者、推定相続人・受遺者とその配偶者・直系血族、公証人の配偶者や一定の親族等は、公正証書遺言や秘密証書遺言の証人・立会人になれません。証人2人という人数だけでなく、利害関係者でないかも確認します。
6. よくある誤り
- 自筆証書遺言は全て検認不要とする。
- 財産目録も必ず全文自書とする。
- 兄弟姉妹に遺留分があるとする。
- 遺留分侵害により不動産持分が当然返還されるとする。
7. 自己点検
遺言問題は「作成者・証人・保管・検認」の4列、遺留分問題は「権利者・全体割合・法定相続分・個別割合」の順で確認します。