6-5 贈与税の仕組み
この節でできるようになること
- 暦年課税と相続時精算課税の基礎控除を区別できる。
- 一般贈与財産と特例贈与財産の速算表を使える。
- 相続時精算課税の年間110万円と累計2,500万円を順に控除できる。
- 選択後に暦年課税へ戻れないことを判断できる。
1. 暦年課税
1月1日から12月31日までに受贈者が受けた贈与財産を合計し、年間110万円の基礎控除を差し引きます。贈与者ごとに110万円ではなく、受贈者一人の年間合計で110万円です。
青葉家の由美が父から300万円、母から100万円を受けた場合、課税価格は400-110=290万円です。一般贈与財産の速算表で290万円は税率15%、控除額10万円です。
290万円×15%-10万円=33万5,000円
2. 特例贈与財産
18歳以上の人が直系尊属から贈与を受けるなどの要件を満たす特例贈与財産には、一般贈与財産より負担が軽い特例税率を使う場合があります。問題文で年齢、続柄、贈与者を確認します。
3. 相続時精算課税
原則として60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫等への贈与で選択できます。
- 年間基礎控除:110万円。
- 特別控除:贈与者ごとに累計2,500万円。
- 超過部分:一律20%。
- 一度選択すると、その贈与者からの贈与は暦年課税へ戻れません。
父から初年度に3,000万円の贈与を受ける場合:
- 年間基礎控除後:3,000-110=2,890万円
- 特別控除後:2,890-2,500=390万円
- 贈与税:390万円×20%=78万円
年間110万円控除後の2,890万円が、将来父の相続税課税価格へ加算されます。
4. 相続税への加算
相続時精算課税適用財産は、各年の贈与価額から年間110万円を控除した残額を相続税課税価格へ加算します。すでに支払った贈与税は相続税から控除します。
暦年課税の生前贈与加算は経過措置で期間が延長されています。2026年12月31日以前に開始する相続は原則3年以内が対象です。試験では相続開始日と法令基準日を確認します。
5. 贈与税の配偶者控除
婚姻期間20年以上の配偶者から居住用不動産または取得資金の贈与を受け、一定要件を満たす場合、最高2,000万円を控除できます。基礎控除110万円と併用できますが、適用には申告が必要です。
6. 申告単位と制度選択
贈与税は受贈者が申告します。複数の人から贈与を受けても、暦年課税の基礎控除110万円は受贈者ごとの年間合計に一度だけ適用します。
贈与税の申告・納付は原則として贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までです。配偶者控除や住宅取得等資金の非課税など、税額が0円でも特例適用のため申告が必要な制度があります。
相続時精算課税を選ぶ前の確認
- 贈与者ごとに選択する制度である。
- 選択した贈与者について暦年課税へ戻れない。
- 年間110万円以下の部分は贈与税申告不要となる場合がある。
- 年間控除後の贈与価額は将来の相続税計算へ加算される。
- 値下がりした財産でも原則として贈与時価額を基に精算するため、対象財産の選択が重要である。
6. よくある誤り
- 父と母からの贈与ごとに110万円ずつ暦年控除する。
- 相続時精算課税で110万円と2,500万円の控除順を逆にする。
- 一度選択しても翌年は暦年課税へ戻れるとする。
- 配偶者控除で贈与税0なら申告不要とする。
7. 自己点検
課税方式→贈与者→受贈者年齢→年間110万円→特別控除残額→税率→相続時加算の順に確認します。