6-6 贈与税の特例と事業承継
この節でできるようになること
- 教育、結婚・子育て、住宅取得等資金の非課税特例を目的・年齢・期限から区別できる。
- 非上場株式の評価方式を会社規模と株主区分から選べる。
- 事業承継税制が納税の猶予制度であることを説明できる。
- 納税資金、遺留分、経営権を分けて事業承継対策を考えられる。
1. 目的別贈与の特例
教育資金、結婚・子育て資金、住宅取得等資金の非課税は、受贈者年齢、所得、資金使途、契約方法、適用期限が異なります。金額だけを暗記せず、目的と期限をセットで確認します。
- 教育資金一括贈与:直系尊属から一定年齢未満の受贈者へ、金融機関を通じて管理。
- 結婚・子育て資金一括贈与:結婚費用と子育て費用で上限内訳が異なる。
- 住宅取得等資金:住宅の性能、契約・居住期限、受贈者所得等を確認。
これらは時限措置であり、試験の法令基準日ごとに適用期限を確認します。
2. 非上場株式の評価
| 取得者・会社 | 主な評価方式 |
|---|---|
| 同族株主等が取得する大会社株式 | 類似業種比準方式を中心 |
| 同族株主等が取得する小会社株式 | 純資産価額方式を中心 |
| 中会社 | 両方式の併用 |
| 同族株主等以外の少数株主 | 配当還元方式 |
- 類似業種比準方式:類似上場会社の株価、配当、利益、純資産を参考。
- 純資産価額方式:会社資産・負債を相続税評価へ置き換え、含み益への法人税相当額等を考慮。
- 配当還元方式:配当を基に評価し、少数株主に用いる。
3. 事業承継税制
一定の中小企業の後継者が非上場株式等を相続・贈与で取得する場合、要件の下で相続税・贈与税の納税を猶予する制度です。税が自動的に免除される制度ではありません。
代表者就任、都道府県知事の認定、継続保有、事業継続、報告等の要件があり、取消事由に該当すれば猶予税額と利子税を納付する場合があります。
一般措置と特例措置では対象株式数、猶予割合、計画提出期限等が異なり、特例措置は時限制度です。数値問題では必ず基準日資料を確認します。
4. 承継対策の三つの目的
青葉家が経営する非上場会社を由美へ承継する場合も、税制だけでなく次の三つを分けて設計します。
- 経営権:議決権株式を後継者へ集中する。
- 遺産分割:他の相続人の遺留分や公平感へ対応する。
- 納税資金:現預金、生命保険、自己株式取得等を検討する。
自社株を後継者へ集中するだけでは、他の相続人の遺留分請求や相続税納付資金不足が残る可能性があります。
5. 生命保険と代償分割
死亡保険金は受取人固有の財産で、遺産分割を待たずに受け取れるため納税資金や代償金へ活用できます。代償分割では特定相続人が事業用資産を取得し、他の相続人へ金銭等を支払います。
6. 承継方法を比較する
| 方法 | 長所 | 注意点 |
|---|---|---|
| 生前贈与 | 時期と株数を計画できる | 贈与税、遺留分、持戻し・加算を確認 |
| 遺言による相続 | 経営権を後継者へ集中しやすい | 遺留分、相続税、納税資金が残る |
| 売買 | 対価を得て公平を調整できる | 後継者の購入資金、譲渡所得課税 |
| 持株会社等 | 株式・事業の整理に使える場合がある | 組織再編税制、コスト、実態が必要 |
事業承継税制を利用する場合でも、経営権の集中、他の相続人への代償財産、相続税以外の納税資金、後継者教育を別々に計画します。
評価額だけを下げる対策の危険
一時的な利益圧縮や資産移転だけを目的に行うと、会社の資金繰りや税務上の合理性を損なうことがあります。FP3級では、評価方式の名称だけでなく、会社規模と取得者の株主区分に応じて方式を選ぶことが重要です。
6. よくある誤り
- 少数株主にも純資産価額方式だけを使う。
- 納税猶予を永久免税と表現する。
- 後継者へ株式を集中すれば遺留分対策も自動的に終わるとする。
- 時限特例の期限を法令基準日で確認しない。
7. 自己点検
会社規模、同族株主区分、後継者要件、株式保有、事業継続、納税資金、遺留分の順で確認します。
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