6-1 相続の基礎知識
この節でできるようになること
- 家族関係図から法定相続人と相続順位を特定できる。
- 代襲相続を含む法定相続分を計算できる。
- 相続放棄と代襲相続、税法上の法定相続人数の違いを説明できる。
- 単純承認、限定承認、放棄の手続を選べる。
1. 相続人の順位
配偶者は常に相続人です。配偶者以外は次の順位で、上位順位がいる場合は下位順位は相続人になりません。
- 子。子が相続開始前に死亡していれば、その子である孫等が代襲。
- 直系尊属。子やその代襲者がいない場合。
- 兄弟姉妹。子・直系尊属がいない場合。代襲は甥・姪まで。
内縁の配偶者は法定相続人ではありません。
2. 青葉家の親族関係図
被相続人は青葉太郎です。配偶者は花子、子は長男一郎と長女由美です。一郎は太郎より前に死亡しており、一郎には美紀と蓮の2人の子がいます。
法定相続人は次の4人です。
- 配偶者花子
- 長女由美
- 亡長男一郎を代襲する孫美紀
- 同じく孫蓮
3. 法定相続分
配偶者と子が相続人なら、配偶者全体1/2、子の系統全体1/2です。
子の系統は一郎の枝と由美の枝の二つに分かれます。
- 花子:1/2
- 由美:1/4
- 一郎の枝:1/4
- 美紀:1/8
- 蓮:1/8
代襲相続人は、被代襲者が受けるはずだった割合を同一枝内で分けます。
4. 放棄と代襲
相続放棄をした人は民法上、初めから相続人でなかったものとされます。しかし、放棄を理由にその子が代襲相続することはありません。
一方、相続税の基礎控除等で使う「法定相続人の数」は、放棄がなかったものとして数えます。民法上の取得者と税法上の人数を混同しないことが重要です。
5. 承認と放棄
- 単純承認:プラス財産も債務も無限に承継。
- 限定承認:相続財産の範囲内で債務を弁済。共同相続人全員で申述。
- 相続放棄:財産も債務も承継しない。各相続人が単独で申述。
限定承認と放棄は、自己のために相続開始があったことを知った時から原則3か月以内に家庭裁判所へ申述します。
6. 遺産分割
遺言による指定分割、相続人全員の協議分割、家庭裁判所による調停・審判があります。協議分割は相続人全員の参加が必要です。
7. 親族関係図を答案へ変換する方法
青葉家の関係を枝で表すと次のようになります。
- 太郎 ─ 花子(配偶者)
- 子の第1枝:一郎(先に死亡)→ 美紀・蓮
- 子の第2枝:由美
法定相続分は「人数」で最初から均等に割るのではなく、まず配偶者と血族全体の割合を決め、次に子の枝へ分け、最後に代襲者同士で分けます。
状況が変わった場合
- 一郎が生存していれば、美紀と蓮は相続人にならず、花子1/2、一郎1/4、由美1/4です。
- 一郎が相続放棄をしても、美紀と蓮は放棄を理由に代襲しません。
- 一郎が相続欠格または廃除に該当する場合は、その子が代襲することがあります。
- 子の系統が全くいなければ、直系尊属、さらにその次に兄弟姉妹の順位を検討します。
民法上の相続人を確定した後、相続税の基礎控除で数える養子・放棄者の税法上の扱いを別に確認します。
7. よくある誤り
- 孫がいるだけで子を飛ばして孫を相続人にする。
- 亡くなった子の枝の割合を孫一人一人にそのまま与える。
- 相続放棄者の子を代襲相続人にする。
- 限定承認を一人だけで行う。
8. 自己点検
配偶者を先に置き、順位を一つだけ選び、死亡者の枝を代襲者へ分けます。割合の合計が必ず1になるか確認します。
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