8-3 前払金・前受金・差入保証金

取引が完了する前に先に支払う・受け取る

商品や資産の引渡し前に手付金・内金を支払った場合は前払金、受け取った場合は前受金を使います。

  • 前払金:後で商品などを受け取る権利・資産
  • 前受金:後で商品などを引き渡す義務・負債

現金が先に動いていても、まだ仕入や売上は成立していません。商品が引き渡された時点で、仕入・売上を総額で計上し、前払金・前受金を取り崩します。

前払金・前受金と前払費用・前受収益の違い

比較 前払金・前受金 前払費用・前受収益
主な場面 商品や資産の引渡し前の手付金 家賃・保険料など継続サービスの期間配分
取引完了 商品などの引渡し時 時間の経過により当期分が確定
商品注文時の内金 翌期分保険料、翌期分家賃

前払金を支払ったからといって、すぐに仕入を計上しません。前払費用は、すでに契約期間が始まっている費用のうち次期分を決算で振り替える科目です。

詳しくは第10章「見越し・繰延べ」で比較します。

前払金:買い手側

連続ケース:商品注文時に内金を支払う

取引:6月1日、商品330,000円(税込)を注文し、内金50,000円を普通預金から支払った。消費税率10%、税抜方式で処理する。

注文時点では、まだ商品を受け取っていません。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
前払金 50,000 普通預金 50,000

この時点で仕入仮払消費税を計上しません。商品引渡し前なので、支払額全体を前払金とします。

商品を受け取り、残額を掛けとした

6月12日、商品が引き渡されました。

税込330,000円の内訳は次のとおりです。

  • 本体価格:300,000円
  • 消費税:30,000円
  • 前払金充当:50,000円
  • 残額:330,000円−50,000円=280,000円
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
仕入 300,000 前払金 50,000
仮払消費税 30,000 買掛金 280,000

仕入は本体価格の総額300,000円、仮払消費税は30,000円です。前払金を取り崩し、残額を買掛金とします。

検算

借方330,000円 = 前払金50,000円+買掛金280,000円

前受金:売り手側

連続ケース:商品注文時に内金を受け取る

取引:6月5日、商品220,000円(税込)の注文を受け、内金40,000円が普通預金へ入金された。消費税率10%、税抜方式で処理する。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
普通預金 40,000 前受金 40,000

商品をまだ引き渡していないため、売上仮受消費税を計上しません。

商品を引き渡し、残額を掛けとした

税込220,000円の内訳は次のとおりです。

  • 本体価格:200,000円
  • 消費税:20,000円
  • 前受金充当:40,000円
  • 残額:220,000円−40,000円=180,000円
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
前受金 40,000 売上 200,000
売掛金 180,000 仮受消費税 20,000

前受金は商品引渡し義務がなくなったため借方で取り崩します。残額180,000円は売掛金です。

検算

前受金40,000円+売掛金180,000円 = 売上200,000円+仮受消費税20,000円

前払金・前受金の残高管理

科目 発生時 取引完了時 完了後残高
前払金 支払額を借方 商品引渡し時に貸方 0
前受金 受取額を貸方 商品引渡し時に借方 0

商品引渡し後も前払金・前受金が残っている場合は、充当漏れや金額の誤りを疑います。

差入保証金

事務所や店舗を借りる際に支払う敷金・保証金のうち、契約終了時に返還される予定の金額は差入保証金という資産です。

家賃の前払いとは異なり、通常の賃借期間中に毎月費用化するものではありません。返還を受ける権利として保有します。

保証金を支払った

取引:11月1日、事務所の賃貸借契約を結び、差入保証金360,000円を普通預金から支払った。全額返還予定である。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
差入保証金 360,000 普通預金 360,000

支払時に支払家賃修繕費を計上しません。

契約終了時に一部を差し引かれて返還された

後日、契約を解約し、原状回復費95,000円を差し引いた残額が普通預金へ入金されました。

返還額は次のとおりです。

360,000円−95,000円=265,000円

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
普通預金 265,000 差入保証金 360,000
修繕費 95,000

差入保証金全額360,000円を貸方で取り崩し、実際の返還額を普通預金、差し引かれた原状回復費を修繕費とします。

差入保証金と前払金・前払費用の違い

科目 何を表すか いつ取り崩すか
前払金 商品などを受け取る権利 商品引渡し時
前払費用 次期にサービスを受ける権利 時間の経過・再振替など
差入保証金 契約終了時に返還を受ける権利 返還・控除時

よくある誤り

誤り1:注文時に仕入・売上を計上する

商品引渡し前は前払金・前受金です。仕入・売上は引渡し時に計上します。

誤り2:商品引渡し時に前払金・前受金を取り崩さない

総額の仕入・売上を計上し、先に支払った・受け取った金額を充当します。

誤り3:前払金と前払費用を混同する

商品引渡し前の内金か、期間サービスの次期分かを確認します。

誤り4:前受金を収益と考える

商品引渡し前は、将来商品を渡す義務である負債です。

誤り5:差入保証金を支払家賃にする

返還予定の敷金・保証金は資産です。

誤り6:保証金返還時に返還額だけ差入保証金を減らす

差入保証金全額を取り崩し、差し引かれた費用も同時に処理します。

検算チェック

  • 商品・資産の引渡し前か確認したか
  • 注文時に仕入・売上を計上していないか
  • 引渡し時に前払金・前受金を取り崩したか
  • 税抜方式なら本体価格と消費税を分けたか
  • 残額を売掛金・買掛金へ正しく計上したか
  • 差入保証金全額を返還・控除時に取り崩したか
  • 借方合計と貸方合計が一致しているか

次の8-4「仮払金・仮受金・立替金・預り金」では、内容未確定の取引と他人分の受け払いを区別します。


適用年度: 2026年度

最終確認日: 2026年7月18日

主な確認資料: 日本商工会議所「簿記検定試験出題区分表(2022年度適用、2026年度も適用)」「商業簿記標準・許容勘定科目表」

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