1-1 FPの基礎と関連法規
この節でできるようになること
- FPが相談業務で行えることと、資格がなければ行えないことを区別できる
- 顧客情報を集め、目標を整理し、提案後に見直すまでの流れを説明できる
- 税理士法・弁護士法・金融商品取引法・保険業法に関する典型問題を、行為の内容から判断できる
法令基準日:この節は2026年4月1日現在の制度を基準に整理しています。FP試験では、受検時に日本FP協会または金融財政事情研究会が示す法令基準日を必ず確認してください。
1. FPの役割は「人生の希望を数字に置き換えること」
FP(ファイナンシャル・プランナー)は、顧客の家族構成、収入、支出、資産、負債、希望する生活を整理し、将来のお金の不足や偏りを見つけます。
たとえば「子どもを大学へ進学させたい」という希望だけでは、資金計画は作れません。次のように具体化します。
- 進学時期は何年後か
- 自宅通学か、一人暮らしか
- 必要額はいくらか
- 現在の貯蓄はいくらか
- 毎年いくら積み立てられるか
- 住宅購入や退職など、同じ時期に重なる支出はないか
FPの仕事は、商品を売ることから始まるのではありません。まず顧客の目的と現状を確認し、必要な対策を比較することから始まります。
2. FP相談の6つのステップ
| 段階 | 内容 | 試験での着眼点 |
|---|---|---|
| 1. 関係の確立 | 業務範囲、報酬、個人情報の取扱いを説明する | 説明責任、守秘義務 |
| 2. 情報収集と目標設定 | 家族、収支、資産・負債、希望を確認する | 顧客の同意を得て正確に収集する |
| 3. 現状分析 | キャッシュフローや保障不足を数値化する | 希望と現在の差を発見する |
| 4. プラン作成・提示 | 複数案を比較し、理由とリスクを説明する | 断定せず、前提を明示する |
| 5. 実行支援 | 必要に応じて専門家や金融機関につなぐ | FP自身の資格範囲を超えない |
| 6. 定期的な見直し | 結婚、転職、法改正などに応じて修正する | 一度作れば終わりではない |
ケース:住宅購入を希望するAさん
Aさんは「4,000万円の住宅を今すぐ買いたい」と相談しました。FPが最初に行うべきことは、特定の住宅ローンを勧めることではありません。
- 手取り収入と毎月の支出
- 頭金として使える資金
- 緊急予備資金
- 子どもの教育予定
- 退職時期
- 金利上昇時にも返済できるか
を確認します。そのうえで、購入時期を遅らせる案、物件価格を下げる案、頭金を増やす案などを比較します。
判断の順番は「商品 → 顧客」ではなく、「顧客 → 課題 → 対策 → 商品」です。
3. 職業倫理と守秘義務
FPは、顧客の収入、借金、病歴、家族関係など重要な情報を扱います。そのため、次の原則が必要です。
- 顧客の利益を優先する
- 自分の利益相反を説明する
- 十分な根拠がない利益を断定しない
- 顧客の同意なく情報を第三者へ漏らさない
- 知識が不足する分野は専門家へつなぐ
- 法令や制度が変わったら、古い提案を見直す
よくある誤り
誤り:無料相談なら、資格がなくても個別の申告書を作成できる。
有償か無償かではなく、行為の内容が問題です。資格者だけに認められた独占業務は、無料でも行えません。
4. 関連法規は「何をしたか」で判断する
4-1. 税理士法
FPが一般的な税制を説明することはできます。
- 「医療費控除には一定の要件があります」
- 「贈与税には暦年課税と相続時精算課税があります」
一方、税理士資格がないFPが、顧客の個別事情に基づいて税額を確定し、申告書を作成したり、税務代理を行ったりすることはできません。
| 行為 | FPのみで可能か |
|---|---|
| 一般的な制度や計算構造を説明する | 可能 |
| 公開資料を使って学習用の例を示す | 可能 |
| 顧客の確定申告書を作成する | 不可 |
| 顧客を代理して税務署と交渉する | 不可 |
4-2. 弁護士法
一般的な相続制度や遺言方式を説明することはできます。しかし、争いがある事件について、相手方との交渉を代理したり、具体的な法律判断を行ったりすることは弁護士の業務領域です。
試験での識別語:紛争、代理交渉、和解、相手方への請求、具体的法律判断。
4-3. 金融商品取引法
金融商品の一般的な特徴、リスク、分散投資の考え方を説明することはできます。しかし、必要な登録をせずに個別銘柄の売買を代理したり、投資助言を業として行ったりすることはできません。
「必ず値上がりする」「元本割れは絶対にない」と断定する説明も不適切です。
4-4. 保険業法
生命保険や損害保険の仕組みを一般的に説明することはできます。保険募集を行うには、所定の登録や所属が必要です。
5. 行為判定の3ステップ
問題文を読んだら、次の順で判断します。
- 一般説明か、個別具体的な判断か
- 書類作成・代理・交渉・売買推奨まで行っているか
- その行為を独占業務とする資格が必要か
総合ケース
無資格のFPであるBさんが、顧客から次の依頼を受けました。
- 所得控除の一般的な種類を説明する
- 顧客の確定申告書を完成させる
- 相続人同士の争いで一方を代理して交渉する
- 投資信託の価格変動リスクを説明する
- 登録なしで特定株式の売買を継続的に助言する
判断は次のとおりです。
- 1と4:一般説明の範囲
- 2:税理士業務に抵触する可能性
- 3:弁護士業務に抵触する可能性
- 5:金融商品取引法上の登録が問題となる
6. 試験で狙われる誤答パターン
- 「無料ならよい」と報酬の有無だけで判断する
- 「FP資格があれば何でもできる」と考える
- 一般説明と個別書類作成を混同する
- 商品の特徴説明と個別銘柄の売買助言を混同する
- 専門家へ紹介することと、自分が代理することを混同する
7. 学習のつながり
FPの基本姿勢を理解したら、次は顧客情報を数字に変える方法を学びます。
- 次の教材:ライフプランニングの手法
- 対応問題:第1章の練習問題
- 復習カード:第1章の知識カード
8. 公式確認先
- 日本FP協会「試験要綱・試験範囲」
- 金融財政事情研究会「FP技能検定 試験範囲」
- 各関連法令を所管する官公庁の最新情報
制度や法令は改正されるため、試験年度の法令基準日を優先してください。