1-2 ライフプランニングの手法
この節でできるようになること
- ライフイベント表、キャッシュフロー表、個人バランスシートの役割を区別できる
- 可処分所得、将来の収入・支出、金融資産残高を計算できる
- 6つの係数から、問題の目的に合う係数を選べる
- 数字が合っていても前提が不適切な計画を見抜ける
1. 3つの表は「時間」と「財産」を別々に見る
| ツール | 何を見るか | 基本的な問い |
|---|---|---|
| ライフイベント表 | 将来の出来事と必要資金 | 何年後に、何があり、いくら必要か |
| キャッシュフロー表 | 年ごとの収入・支出・貯蓄残高 | その年の家計は黒字か、資金は尽きないか |
| 個人バランスシート | ある時点の資産・負債・純資産 | 今の財産状態は健全か |
3つの表は似ていますが、目的が違います。試験では「時系列の予定」を聞かれたらライフイベント表、「毎年の収支」を聞かれたらキャッシュフロー表、「ある時点の資産と負債」を聞かれたら個人バランスシートを選びます。
2. ライフイベント表
例として、夫35歳、妻33歳、子5歳の家庭を考えます。
| 経過年 | 家族の年齢 | 主なイベント | 現在価値での概算額 |
|---|---|---|---|
| 0年 | 夫35・妻33・子5 | 現在 | - |
| 3年 | 夫38・妻36・子8 | 自動車購入 | 250万円 |
| 7年 | 夫42・妻40・子12 | 中学校進学 | 100万円 |
| 13年 | 夫48・妻46・子18 | 大学進学 | 500万円 |
| 25年 | 夫60・妻58 | 住宅ローン完済 | - |
| 30年 | 夫65・妻63 | 夫退職 | 老後資金が必要 |
重要なのは、金額を書くだけではなく、イベントが重なる年を見つけることです。大学進学と住宅修繕が同じ年に重なるなら、早い段階から資金を分けて準備します。
3. 可処分所得
可処分所得は、家計が実際に消費や貯蓄へ使える金額です。
可処分所得 = 年収 - 所得税 - 住民税 - 社会保険料
計算例
年収300万円で、所得税・住民税・社会保険料の合計が年収の14.01%とします。
- 控除される金額
3,000,000円 × 14.01% = 420,300円
- 可処分所得
3,000,000円 - 420,300円 = 2,579,700円
よくある誤り:420,300円を可処分所得と答える。これは差し引かれる金額であり、手元に残る金額ではありません。
4. キャッシュフロー表の作り方
4-1. 将来価値への調整
現在の支出が毎年一定割合で増えると仮定すると、将来額は次のように計算します。
将来額 = 現在額 ×(1+変動率)^ 経過年数
現在100万円の教育費が、年2%ずつ上昇すると仮定した5年後の金額は、
1,000,000円 × 1.02^5 = 約1,104,081円
です。
4-2. 年間収支と金融資産残高
年間収支 = 可処分所得 - 年間支出
年末金融資産残高 = 前年末残高 ×(1+運用利率)+ 年間収支
3年間の例
前提:
- 初年度の可処分所得:420万円
- 初年度の支出:360万円
- 収入上昇率:1%
- 支出上昇率:2%
- 初期金融資産:300万円
- 運用利率:0%として単純化
| 年 | 可処分所得 | 支出 | 年間収支 | 年末金融資産残高 |
|---|---|---|---|---|
| 1年目 | 420.0万円 | 360.0万円 | 60.0万円 | 360.0万円 |
| 2年目 | 424.2万円 | 367.2万円 | 57.0万円 | 417.0万円 |
| 3年目 | 428.4万円 | 374.5万円 | 53.9万円 | 470.9万円 |
支出の伸びが収入の伸びを上回るため、黒字額は少しずつ減っています。単年度で黒字でも、長期では悪化する可能性があります。
5. 個人バランスシート
ある時点の資産と負債を、原則として時価で整理します。
| 資産 | 金額 | 負債 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 200万円 | 住宅ローン | 2,500万円 |
| 定期預金 | 300万円 | 自動車ローン | 100万円 |
| 投資信託 | 150万円 | ||
| 自宅 | 3,000万円 | ||
| 資産合計 | 3,650万円 | 負債合計 | 2,600万円 |
純資産 = 資産合計 - 負債合計
3,650万円 - 2,600万円 = 1,050万円
自宅の購入価格が4,000万円でも、現在の時価が3,000万円なら、バランスシートには原則として3,000万円を使います。
6. 6つの係数
係数問題は、公式を暗記する前に「何が分かっていて、何を求めるか」を確認します。
| 係数 | 分かっているもの | 求めるもの | 典型表現 |
|---|---|---|---|
| 終価係数 | 現在の一括資金 | 将来の一括資金 | 今の100万円は5年後いくらか |
| 現価係数 | 将来の一括目標 | 現在必要な一括資金 | 5年後100万円にするには今いくらか |
| 年金終価係数 | 毎年の積立額 | 将来の積立総額 | 毎年20万円積み立てるといくらか |
| 減債基金係数 | 将来の一括目標 | 毎年の積立額 | 5年後500万円のため毎年いくらか |
| 年金現価係数 | 毎年の受取額 | 現在必要な元本 | 毎年50万円を受け取るには今いくらか |
| 資本回収係数 | 現在の元本 | 毎年の受取・返済額 | 1,000万円を取り崩すと毎年いくらか |
判断のコツ
- 一括 → 一括:終価係数または現価係数
- 毎年 → 一括:年金終価係数
- 一括目標 → 毎年:減債基金係数
- 毎年受取 → 現在元本:年金現価係数
- 現在元本 → 毎年受取:資本回収係数
7. 係数を使う完全例
5年後に500万円を準備したいとします。利率に対応する減債基金係数が0.1846なら、毎年の積立額は、
5,000,000円 × 0.1846 = 923,000円
です。
なぜ年金終価係数ではないのか
問題で分かっているのは「将来必要な500万円」で、求めるのは「毎年の積立額」です。そのため、将来の目標額から毎年額を逆算する減債基金係数を使います。
逆方向の確認
毎年100万円を5年間積み立てたときの将来額を求めるなら、年金終価係数です。同じ「積立」でも、分かっている数字と求める数字が逆です。
8. 前提条件のリスク
キャッシュフロー表は予言ではありません。次の前提が変わると結果も変わります。
- 収入上昇率
- 物価上昇率
- 運用利率
- 住宅ローン金利
- 退職時期
- 教育費や介護費
そのため、基本ケースだけでなく、収入減少や支出増加を想定した厳しいケースも確認します。
9. 試験で狙われる誤答パターン
- 可処分所得と税・社会保険料の合計を取り違える
- 資産を取得価格のまま記載する
- 年間収支を資産残高と混同する
- 終価係数と現価係数を逆にする
- 年金終価係数と減債基金係数を逆にする
- 変動率を毎年の金額に足すだけで、複利計算をしない
10. 学習のつながり
- 前の教材:FPの基礎と関連法規
- 次の教材:社会保険の基礎
- 対応問題:第1章の練習問題
- 復習カード:第1章の知識カード