1-4 公的年金
この節でできるようになること
- 国民年金の第1号・第2号・第3号被保険者を区別できる
- 老齢基礎年金の受給資格期間と年金額の基本計算ができる
- 繰上げ・繰下げ、加給年金・振替加算、在職老齢年金の関係を説明できる
- 老齢・障害・遺族年金の課税関係を区別できる
年度データ:この節の保険料・年金額・在職老齢年金の基準額は、2026年4月1日現在(令和8年度)です。金額は毎年度改定されるため、受検時の法令基準日を必ず確認してください。
1. 日本の公的年金は2階建て
日本の公的年金は、原則として全国民共通の国民年金を1階、会社員・公務員等が加入する厚生年金を2階とする構造です。
| 階層 | 制度 | 主な加入者 |
|---|---|---|
| 2階 | 厚生年金 | 会社員、公務員等 |
| 1階 | 国民年金(基礎年金) | 20歳以上60歳未満の国内居住者が基本 |
会社員は厚生年金だけに加入しているのではありません。厚生年金の被保険者であると同時に、国民年金の第2号被保険者です。
2. 国民年金の被保険者区分
| 区分 | 主な対象 | 保険料の納付方法 |
|---|---|---|
| 第1号被保険者 | 20歳以上60歳未満の自営業者、学生、無職者等 | 本人が定額保険料を納付 |
| 第2号被保険者 | 厚生年金の被保険者 | 厚生年金保険料として給与・賞与から負担 |
| 第3号被保険者 | 第2号被保険者に扶養される20歳以上60歳未満の配偶者 | 本人が個別に納付しない |
判断例
- 30歳の個人事業主:第1号
- 45歳の会社員:第2号
- 40歳で会社員の配偶者に扶養される配偶者:第3号
- 65歳の自営業者:原則として強制加入の第1号期間ではない
よくある誤り
- 第3号被保険者を「会社員の子」まで含むと考える
- 第3号被保険者が保険料を毎月直接納付すると考える
- 会社員は国民年金に加入していないと考える
3. 令和8年度の国民年金保険料
令和8年度(2026年4月から2027年3月)の国民年金保険料は、月額 17,920円 です。
前年度の金額をそのまま使わないよう注意します。年金問題で年度が指定されている場合は、必ずその年度の数字を使います。
4. 老齢基礎年金
4-1. 受給資格期間
老齢基礎年金を受けるには、原則として受給資格期間が 10年以上 必要です。
受給資格期間には、保険料納付済期間だけでなく、保険料免除期間や合算対象期間なども含まれます。ただし、受給資格に数える期間と、年金額に満額反映される期間は同じではありません。
4-2. 原則の受給開始
老齢基礎年金は原則として65歳から受給します。
4-3. 令和8年度の満額
昭和31年(1956年)4月2日以後生まれの人の令和8年度の老齢基礎年金満額は、月額 70,608円、年額 847,296円 です。
70,608円 × 12か月 = 847,296円
昭和31年4月1日以前生まれの人は月額70,408円で、年齢区分により金額が異なります。
4-4. 満額の基本計算
20歳から60歳までの40年間、つまり480月すべて保険料を納付すると満額です。
単純な未納期間だけがある場合の基本形は、
満額 × 保険料納付済月数 ÷ 480月
です。
計算例
令和8年度満額847,296円、納付済月数456月、残り24月が単純な未納だったとします。
847,296円 × 456月 ÷ 480月 = 804,931.2円
1円未満の端数処理は問題文の指示に従います。
実際には免除期間には一定割合が年金額へ反映されます。未納と免除を同じ扱いにしないことが重要です。
5. 保険料免除と納付猶予
保険料を納めることが難しい場合、申請免除、法定免除、学生納付特例、納付猶予などがあります。
| 制度 | 受給資格期間に算入 | 年金額への反映 | 追納 |
|---|---|---|---|
| 保険料免除 | 算入される | 一定割合が反映 | 一定期間内に可能 |
| 学生納付特例 | 算入される | 追納しなければ原則反映されない | 一定期間内に可能 |
| 納付猶予 | 算入される | 追納しなければ原則反映されない | 一定期間内に可能 |
| 単純な未納 | 原則として算入されない | 反映されない | 通常の納付期限等に注意 |
なぜ免除申請が重要か
同じ「今は払っていない」状態でも、正式な免除・猶予と単純未納では、受給資格や障害年金・遺族年金の要件に与える影響が異なります。
6. 繰上げ受給と繰下げ受給
6-1. 繰上げ受給
老齢基礎年金は、原則60歳から64歳までの間に繰り上げて受給できます。早く受け取る代わりに、年金額は生涯減額されます。
昭和37年(1962年)4月2日以後生まれの人は、1か月繰り上げるごとに 0.4%減額 が基本です。
65歳開始を60歳まで60か月繰り上げると、
0.4% × 60か月 = 24%減額
となり、受給率は76%です。
6-2. 繰下げ受給
66歳以後75歳までの間に繰り下げると、1か月ごとに 0.7%増額 が基本です。
70歳まで60か月繰り下げると、
0.7% × 60か月 = 42%増額
となります。
判断の注意
- 繰上げによる減額は原則として生涯続く
- 繰下げによる増額も生涯続く
- 受給開始を遅らせれば必ず全員に有利とは限らない
- 健康状態、就労収入、貯蓄、税・社会保険料なども含めて判断する
7. 厚生年金
厚生年金の老齢給付は、加入期間と報酬に応じる報酬比例部分が中心です。国民年金のように全員が同じ満額になる仕組みではありません。
保険料は、標準報酬月額や標準賞与額に保険料率を掛け、原則として事業主と被保険者が折半します。
8. 在職老齢年金
厚生年金を受けながら働く場合、賃金と老齢厚生年金の合計によっては、老齢厚生年金の一部または全部が支給停止されます。
2026年4月からの支給停止調整額は 65万円 です。
基本的な判定は、
基本月額 + 総報酬月額相当額
が65万円を超えるかどうかです。超えた場合、原則として超過額の2分の1が支給停止額になります。
計算例
- 老齢厚生年金の基本月額:12万円
- 総報酬月額相当額:60万円
合計は72万円です。
72万円 - 65万円 = 7万円
7万円 × 1/2 = 3.5万円
この例では、月額3.5万円が支給停止される基本計算になります。
老齢基礎年金は在職老齢年金による支給停止の対象ではありません。
9. 加給年金と振替加算
加給年金
厚生年金の加入期間など一定の条件を満たす人が老齢厚生年金を受け始めるとき、生計を維持している一定年齢未満の配偶者や子がいる場合に加算されることがあります。
振替加算
配偶者が65歳になって加給年金の対象でなくなった後、一定の要件を満たす配偶者自身の老齢基礎年金に振替加算が付くことがあります。
時間軸で覚える:
- 年上の配偶者の老齢厚生年金に加給年金
- 年下の配偶者が65歳になる
- 加給年金が終了
- 条件を満たせば年下配偶者の老齢基礎年金に振替加算
10. 障害年金と遺族年金
公的年金は老後だけの制度ではありません。
- 障害基礎年金・障害厚生年金:一定の障害状態になった場合
- 遺族基礎年金・遺族厚生年金:被保険者等が死亡した場合の遺族保障
初診日、保険料納付要件、障害状態、遺族の範囲など複数条件があるため、問題文の時点と家族関係を順番に確認します。
11. 年金の税金
| 年金 | 所得税の基本的取扱い |
|---|---|
| 老齢基礎年金・老齢厚生年金 | 雑所得として課税対象 |
| 障害年金 | 非課税 |
| 遺族年金 | 非課税 |
「公的年金はすべて非課税」という選択肢は誤りです。
12. 年金問題の判断手順
- 何年の制度・金額か確認する
- 被保険者区分を確認する
- 納付済・免除・猶予・未納を区別する
- 老齢・障害・遺族のどの給付か確認する
- 受給開始年齢と繰上げ・繰下げ月数を確認する
- 就労中なら在職老齢年金を確認する
- 課税・非課税を確認する
13. 試験で狙われる誤答パターン
- 令和7年度の年金額を令和8年度問題に使う
- 受給資格10年と満額加入40年を混同する
- 免除期間と未納期間を同じ扱いにする
- 繰上げ減額が65歳で元に戻ると考える
- 障害年金・遺族年金を課税対象とする
- 在職老齢年金で老齢基礎年金まで停止すると考える
- 加給年金と振替加算を同じ人・同じ時期に付く制度と考える
14. 学習のつながり
- 前の教材:社会保険の基礎
- 次の教材:企業年金と個人年金
- 関連教材:タックスプランニング・各種所得
- 対応問題:第1章の練習問題
- 復習カード:第1章の知識カード
15. 公式確認先
- 日本年金機構「国民年金保険料」
- 厚生労働省「令和8年4月からの年金制度」
- 厚生労働省「在職老齢年金制度」
年度敏感な金額は、古い教材の数字を流用せず、試験年度の公式資料で確認してください。