4-1 所得税の基本
この節でできるようになること
- 収入・所得・課税所得・税額の違いを順番に説明できる。
- 10種類の所得を、名称だけでなく発生原因から分類できる。
- 総合課税・分離課税・源泉分離課税の違いを見分けられる。
- FP3級の法令基準日と、後から成立した税制改正を混同しない。
1. 所得税は「収入」に直接かかる税金ではない
所得税は、個人が1月1日から12月31日までの1年間に得た所得に対する国税です。問題を解くときは、次の4段階を混同しないことが出発点です。
| 段階 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 収入金額 | 入ってきた総額 | 給与収入600万円 |
| 所得金額 | 収入から必要経費・法定控除を引いた金額 | 給与所得436万円 |
| 課税所得金額 | 所得を合計し、所得控除を引いた金額 | 266万円 |
| 所得税額 | 課税所得に税率を適用し、税額控除を引いた金額 | 6万8,500円など |
見分け方:問題文が「年収」「売上」「受取額」と書いているだけなら、まだ所得ではありません。まず所得区分ごとの計算式へ進みます。
2. 所得税計算の全体フロー
- 収入を10種類の所得へ分類する。
- 各所得の計算式で所得金額を求める。
- 損益通算できる赤字を一定の順序で差し引く。
- 一時所得などの総所得算入額を反映する。
- 所得控除を差し引き、課税所得金額を1,000円未満切捨てで求める。
- 速算表で所得税額を求める。
- 住宅ローン控除などの税額控除を差し引く。
- 復興特別所得税を計算し、源泉徴収税額等と精算する。
所得控除は「課税所得を減らす」もの、税額控除は「計算後の税額を直接減らす」ものです。順序を逆にしてはいけません。
3. 10種類の所得を発生原因で分類する
| 所得 | 代表例 | 基本的な計算・注意 |
|---|---|---|
| 利子所得 | 預貯金、公社債の利子 | 原則、収入金額が所得金額 |
| 配当所得 | 株式配当、投資信託の分配 | 元本取得の借入利子を控除できる場合あり |
| 不動産所得 | 土地・建物の貸付け | 総収入-必要経費 |
| 事業所得 | 商工業、士業等の事業 | 総収入-必要経費 |
| 給与所得 | 給与・賞与 | 給与収入-給与所得控除 |
| 退職所得 | 退職金 | 原則、他の所得と分離して計算 |
| 山林所得 | 所有期間5年超の山林の伐採・譲渡 | 原則、分離課税 |
| 譲渡所得 | 資産の譲渡益 | 資産により総合課税・申告分離課税 |
| 一時所得 | 懸賞、満期保険金等 | 特別控除後の1/2を総所得へ算入 |
| 雑所得 | 公的年金、副業、暗号資産等 | 他の9種類に該当しない所得 |
条件語から分類する手順
- 貸付けか:土地・建物の貸付けなら不動産所得。
- 雇用契約による対価か:勤務先からの給与・賞与なら給与所得。
- 独立・継続・反復した事業か:事業所得の可能性。
- 資産を売却したか:譲渡所得を検討。
- 偶発的で、労務や譲渡の対価でないか:一時所得を検討。
- どれにも該当しなければ雑所得を検討する。
4. 課税方法を区別する
- 総合課税:対象所得を合算し、5%から45%の超過累進税率を適用する。
- 申告分離課税:他の所得と分けて確定申告で税額を計算する。
- 源泉分離課税:支払時の源泉徴収で課税関係が完結し、原則として申告できない。
- 申告不要制度:一定の上場株式等の配当などで、確定申告をしない選択ができる。
預貯金の利子は原則20.315%の源泉分離課税ですが、すべての利子所得が同じ扱いとは限りません。「商品」と「課税方式」をセットで読む必要があります。
5. 非課税所得の判定
代表例は、遺族年金、障害年金、雇用保険の基本手当、宝くじ当せん金、身体の傷害に基因して受ける一定の保険金・給付金です。老齢基礎年金・老齢厚生年金は雑所得として課税対象です。
通勤手当は全額が常に非課税ではありません。電車・バス等は、最も経済的かつ合理的な経路・方法による運賃等について月15万円を上限とするなど、条件と限度額があります。
6. 法令基準日の読み方
2026年6月以降の現行FP3級CBT期間は、原則として2026年4月1日現在施行の法令に基づきます。令和8年度税制改正の基礎控除引上げ等は2026年12月1日施行のため、本教材の現行試験計算には使用しません。年度名ではなく「基準日に施行済みか」で判断します。
7. 連続ケース:青葉直人さん
青葉直人さんには次の取引があります。
- 給与収入:600万円
- 賃貸不動産の赤字:30万円(うち土地取得借入金利子10万円)
- 満期保険金:300万円、払込保険料220万円
- 副業の雑所得:20万円
この段階では答えを合計しません。まず各項目を正しい所得に分類し、4-2から4-4で所得金額を計算します。
8. よくある誤りと自己点検
- 誤り:給与収入600万円をそのまま所得600万円とする。
- 誤り:税額控除を所得から引く。
- 誤り:2026年分に適用される改正なら、2026年4月1日基準の試験にも必ず出ると考える。
- 自己点検:「収入→所得→課税所得→税額」の4語を答案の横に書き、今どの段階か確認する。
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