5-1 不動産の見方(登記と価格)
この節でできるようになること
- 登記事項証明書の表題部・甲区・乙区から必要な情報を取り出せる。
- 登記の対抗力と、公信力がないことの意味を区別できる。
- 地価公示、基準地標準価格、路線価、固定資産税評価額の基準日と用途を判断できる。
- 価格資料を見たときに、取引価格と税務評価額を混同しない。
1. 登記記録の三つの区分
不動産登記記録は、土地一筆または建物一個ごとに作成され、表題部と権利部に分かれます。権利部はさらに甲区と乙区に分かれます。
| 区分 | 主な記録 | 資料問題で探すもの |
|---|---|---|
| 表題部 | 土地の所在・地番・地目・地積、建物の種類・構造・床面積 | 面積、用途、物理的状況 |
| 権利部甲区 | 所有権の保存・移転、差押え等 | 現在の所有者、所有権の変動 |
| 権利部乙区 | 抵当権、地上権、賃借権等 | 担保や利用を制限する権利 |
抵当権を探すのに甲区を見る、所有者を確認するのに乙区を見る、という逆転が典型的な誤りです。
2. 登記の対抗力と公信力
不動産の売買契約により所有権は当事者間で移転しますが、第三者に自分の所有権を主張するには原則として登記が必要です。これが対抗要件です。
一方、登記には公信力がありません。登記名義人が真の権利者でなかった場合、登記だけを信じた買主が必ず権利を取得できるとは限りません。「登記があるから所有権が発生する」という意味ではありません。
3. 一物四価を資料の目的から読む
| 価格 | 基準日 | 公表・決定主体 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 地価公示価格 | 1月1日 | 国土交通省土地鑑定委員会 | 一般土地取引の指標、鑑定評価の規準 |
| 基準地標準価格 | 7月1日 | 都道府県 | 地価公示を時期・地点面で補完 |
| 相続税路線価 | 1月1日 | 国税庁 | 相続税・贈与税の宅地評価 |
| 固定資産税評価額 | 1月1日 | 市町村等 | 固定資産税、不動産取得税、登録免許税等の基礎 |
路線価は地価公示価格等を基にした価格の80%程度を目途に定められます。ただし、個別土地の形状や接道状況により補正するため、単純に公示価格の80%と断定して評価してはいけません。
4. 路線価方式と倍率方式
- 路線価方式:路線価×地積×奥行価格補正率等。
- 倍率方式:固定資産税評価額×評価倍率。
路線価図に数字がない土地だから評価できないのではなく、倍率地域として評価する場合があります。
5. 鑑定評価の三方式
- 取引事例比較法:近隣の取引事例と比較する。
- 原価法:再調達原価から減価修正する。
- 収益還元法:将来の純収益を還元して価格を求める。
賃貸ビルや投資用マンションでは収益還元法が重要ですが、居住用土地の一般的な価格判断では取引事例も重視されます。
6. 連続ケース:青葉土地
青葉直人さんが検討する土地は登記地積240㎡、固定資産税評価額3,600万円です。乙区には銀行の抵当権が記録されています。後続節では、道路後退、建築可能面積、取得・保有税、売却税と投資利回りを順に計算します。
7. よくある誤り
- 登記地積と実測面積が常に一致すると考える。
- 甲区の抵当権を探す。
- 路線価を実際の売買価格と同一視する。
- 登記名義人なら必ず真の所有者だと考える。
8. 自己点検
- 求められているのは物理情報、所有権、担保権のどれか。
- 価格資料の基準日と課税目的を確認したか。
- 税務評価と市場価格を同じ欄に入れていないか。
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