3-1 金融・経済の基本
この節でできるようになること
- GDP、物価、景気動向指数、日銀短観など主要経済指標の意味を区別できる。
- 金利、債券価格、株価、為替の基本的な関係を方向で判断できる。
- 名目金利と実質金利、金融緩和と金融引締めの違いを説明できる。
- 経済ニュースを見たときに、単一指標だけで投資判断を断定しない。
1. 経済指標は「何を測るか」で分ける
| 指標 | 主な意味 | 問題での着眼点 |
|---|---|---|
| GDP | 国内で一定期間に生み出された付加価値 | 名目と実質、成長率 |
| 消費者物価指数 | 家計が購入する財・サービスの価格変動 | インフレ・デフレ |
| 景気動向指数 | 景気の方向や転換点 | 先行・一致・遅行 |
| 日銀短観 | 企業の景況感や設備投資計画 | 業況判断DI |
| マネーストック | 民間部門が保有する通貨量 | 金融環境の把握 |
名目GDPが増えていても、物価上昇の影響を除いた実質GDPが増えているとは限りません。試験では「数量の増加」と「価格の上昇」を分けます。
2. 名目金利と実質金利
実質金利の簡易的な考え方は次のとおりです。
実質金利 ≒ 名目金利-予想物価上昇率
名目金利2%、予想物価上昇率3%なら、実質金利は約マイナス1%です。預金残高が名目上増えても、購買力が低下する場合があります。
3. 金融政策
日本銀行が市場へ資金を供給し、金利低下を促す政策を金融緩和といいます。反対に資金供給を抑え、金利上昇を促す政策が金融引締めです。
一般的な方向は次のとおりですが、実際の市場は景気予想、海外金利、企業業績など複数要因で動きます。
| 変化 | 一般的な影響 |
|---|---|
| 市場金利上昇 | 既発債価格は下落しやすい |
| 市場金利低下 | 既発債価格は上昇しやすい |
| 円安 | 外貨建資産の円換算額は増えやすい |
| 円高 | 外貨建資産の円換算額は減りやすい |
| 予想外の物価上昇 | 固定利率資産の実質価値が低下しやすい |
4. 青葉ポートフォリオの市場シナリオ
青葉直人さんは円預金、国内債券、国内株式、米ドル資産を保有しています。
- 国内市場金利が上昇:保有する固定利率債券の価格は下落しやすい。
- 円安:米ドル資産の円換算額は増えやすい。
- 企業利益が増加:他条件一定ならEPSやROEが改善する可能性がある。
- 物価上昇が預金金利を上回る:預金の実質購買力は低下する可能性がある。
5. 景気と市場を読む順序
- 指標が何を測るか確認する。
- 前年比か前期比か、名目か実質かを確認する。
- 市場予想との差を確認する。
- 金利・株価・為替への影響を方向で整理する。
- 一つの指標だけで結論を出さない。
6. 複数指標を組み合わせる例
物価上昇率が高く、実質金利がマイナスでも、直ちに株式が上昇するとは限りません。企業の売上が増えても原材料費や人件費がそれ以上に増えれば、利益は減少する可能性があります。
経済問題では、次の三段階に分けます。
- 実体経済:生産、所得、雇用、物価。
- 金融環境:政策金利、市場金利、通貨量。
- 資産価格:債券、株式、為替。
同じニュースでも、どの段階を直接変化させ、どの段階へ波及するかを確認します。
6. よくある誤り
- 名目GDPの増加をそのまま実質成長とする。
- 市場金利上昇で既発債価格も上昇するとする。
- 円安で外貨資産の円換算額が必ず減るとする。
- インフレ率を考えず名目利率だけで預金の実質収益を判断する。
7. 自己点検
「指標の種類」「変化の方向」「影響を受ける資産」「他の条件」の4列で整理します。
この章の理解を確認しよう
練習問題で知識を定着させましょう